英蘭資本の石油メジャー、Royal Dutch Shell plc は11月15日、英国とオランダの二重構造となっていた株式や本社機能を英国に一本化する計画を明らかにした。組織構造を簡素化し、社名もShell plc.に変更する。
脱炭素社会の流れからエネルギー業界は変革を迫られており、経営の効率化や競争力の向上を狙う。
英政府がこれを歓迎する一方、オランダ政府は不快感を示している。
これまで、税制上の拠点をオランダとする一方、登記上の本社は英国に置き、株式もA株をオランダ、B株を英国で発行していた。
今後は税制上の拠点を英国に移し、株式の二重構造も廃止して英国に一元化する。これに伴い、社名から「Royal Dutch」を削除する。
グループのCEO、CFOは英国に移動する。
12月10日にオランダで開く株主総会で承認を得た上で実施する。
同社を巡っては、「物言う株主」の米国の投資ファンドのThird Point が出資比率を拡大しており、石油・精製・化学事業とガス・再生可能エネルギー・マーケティング事業の2社に分割することを提案していた。
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Royal Dutch Shellは、元は、オランダの Royal Dutch Petroleum(正式名 N.V. Koninklijke Nederlandsche Petroleum Maatschappij)と英国のThe Shell Transport & Trading Company plcという別々の会社であった。
前者は1890年にオランダ王室からの特許状を得て、設立されたオランダ領東インド石油開発会社が元である。
Rockefeller 系のStandard Oil との競争が熾烈になったため、両社は1903年にAsiatic Petroleum CompanyというJV設立をきっかけに提携、1907年にRoyal Dutch Petroleumが60%、Shell が40%の比率で出資する持株会社を通じてグループ企業を統治するRoyal Dutch Shell Groupを形成した。この二元上場会社が100年近く続いた。
2005年5月、Royal Dutch Shell Groupは統合した。
新会社 Royal Dutch Shell plc を設立し、2つの親会社(Royal Dutch PetroleumとThe Shell Transport & Trading Company)を実質的に吸収する。
新会社は英国に設立され、本部はオランダのハーグに置き、税務上の本社はオランダに置く。
これまでの出資比率を守るため、Royal Dutch Petroleum株主には新会社の株式の60%、The Shell Transport & Trading Company株主には40%が支給される。
株主の受取配当金の税務上の扱い(源泉徴収の有無)を維持するため、新会社はA株とB株を発行する。
A株はRoyal Dutch Petroleum株主に支給され、B株は Shell Transport & Trading株主に支給される。配当はユーロ建てで決まるが、B株の株主は英ポンドで受け取る。ADRの保有者は米ドルで受け取る。
(会社はオランダ法人で、ポンドでの配当支払いは出来ないため、形式的に、英国法人である子会社のShell Transport and Trading / BG Group から配当を受ける形をとる。)A株はオランダ株のため、オランダの源泉徴収税 15%がとられる。B株は英国株で、源泉徴収課税はない。
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今後は税制上の拠点を英国に移し、株式の二重構造も廃止して英国に一元化する。
株主の立場はこれまでと変わりない。
新会社の株式はAmsterdamと London、ADRについてはNew York で上場される。
配当の受取方式は次のようになる。
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