公取委、シリコンウェーハ大手の台湾 GlobalWafersによる独 Siltronic AGの買収を承認

| コメント(0)

公取委は11月26日、シリコンウェーハ大手の台湾 GlobalWafers(環球晶圓)の独子会社による独の同業のSiltronic AGの買収を承認した。

ーーー

台湾の GlobalWafers(環球晶圓)は2020年12月、業界4番手の独Siltronic AGを買収すると発表した。買収総額は37.5億ユーロで、2021年後半に取引を完了させる予定であった。
買収により、GlobalWafersは業界2位に浮上する見込み。

GlobalWafers(環球晶圓)は、1981年に台湾新竹サイエンスパークで設立されたSAS(Sino-American Silicon Products Inc)の半導体事業部であったが、独立する形で2011年に発足した。

世界各地に進出している。

中国 親会社のSASは1999年8月に中国昆山で中辰シリコンを設立した。
米国 SASは、2008年4月1日に米国 GlobiTech incorporated を買収した。
GlobalWafersは2016年には、米国のシリコンウェハ ーメーカーのSunEdison Semiconductorを買収した。
日本 SASは2012年4月に日本の大手エンジニアリング・セラミックメーカーのコバレントマテリアル(その後、世界最大のエンジニアリング・セラミックメーカーであるCoorsTek, Inc. に買収された)のシリコンウェーハ事業のコバレントシリコンを買収し、グローバルウェーハズ・ジャパンとした。
欧州 GlobalWafersは2016年7月、デンマークのTopsil Semiconductor Materials A/Sを買収した。


現在、製品ラインナップは、3インチから12インチまでのサイズ、ウェーハ種は、エピタキシャルウェーハ・アニールウェーハ・ポリッシュトウェーハ・拡散ウェーハ、最新テクノロジーを用いたSOIウェーハ、FZウェーハ等、すべてのウェーハサイズと種類を有している。

加えて、GlobalWafersは10か国(台湾・中国・アメリカ・日本・デンマーク・ポーランド・韓国・イタリア・マレーシア・シンガポール)、16拠点に工場を持つ。


Siltronic AGは1968年に独ミュンヘンに設立され、1995年からはWacker Chemie AGの子会社としてシリコンウェーハ事業を展開している。

1999年にシンガポールでの生産をスタートさせた。2015年にIPO(新規株式公開)を実施した。
生産拠点はドイツのほか、シンガポール、米オレゴン州などグローバルに広がる。

GlobalWafersはSiltronic AGの株式を1株あたり125ユーロで取得する方針で、同社株式を30.8%保有するWacker Chemie も売却に応じる。

しかし、難航した。

当初、2021年1月中にもTOBを終える予定だったが、買い付け価格に不満を持つ株主が増え、思うように株の買い付けができなかった。

このため再三にわたり、条件変更を余儀なくされた。当初、1株当たり125ユーロだった買い付け価格を、1月21日には一気に同140ユーロに引き上げた。それでも難航し、翌22日には145ユーロに引き上げた。

さらに1月25日には、最低でも65%を取得するとした当初の買い付け計画を引き下げ、同50%とした。最終的には公開買い付け期間も見直し、3月1日までTOB期間を延長した。

2021年3月4日、ようやくTOBが成立したと発表した。3月1日までにシルトロニック株の70.27%を取得した。買収金額は6千億円前後に達したもよう。

各国の独禁法当局の承認を得て、年内には買収手続きを完了する見込み。

ーーー

日本の公正取引委員会は、シンガポール競争・消費者委員会及び米国連邦取引委員会との間で情報交換を行いつつ審査を進めた。
6月15日に第二次審査を開始、10月4日に全ての報告等を受理し、11月26日に「排除措置命令を行わない」旨、通知した。

公取委は審査に当たり、対象となる市場を製品の製法・製品の口径、加工方法により区分し、重点5市場について競争上、問題がないか判断した。

製法 口径 加工方法 シェア
Global
Wafers
Siltronic 合計 他社
CZ法・MCZ法 200mm ポリッシュド 25% 5% 30% 25%、20%、--
CZ法・MCZ法 エピタキシャル 25% 15% 40% 20%、20%、--
CZ法・MCZ法 300mm ポリッシュド 15% 15% 30% 30%、20%、20%
CZ法・MCZ法 エピタキシャル 10% 15% 25% 35%、30%、--
FZ法 200mm ポリッシュド 5% 50% 55% 25%、15%、--


結論:下記により、競争を実質的に制限することとはならない。

 競争事業者からの競争圧力:有力な競争事業者の存在

 需要家からの競争圧力:需要家側に価格交渉力があり、複数購買で調達先切り替えが可能

コメントする

月別 アーカイブ