欧州中央銀行、2022年3月に緊急買い取り制度を終了 

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欧州中央銀行(ECB)は12月16日の理事会で、コロナ危機で導入した緊急買い取り制度(Pandemic Emergency Purchase Programme:PEPP)による新規資産購入を2022年3月末で打ち切ると決めた。総額1兆8500億ユーロ(約240兆円)の同制度の終了で、2022年4月以降の資産購入額は大きく減少する。

ECBのラガルド総裁は、経済と物価が改善するなか、緩やかに緩和縮小を進めていく方針を示した。ただ物価を2%程度で安定させるためには「まだ金融緩和が必要だ」とも述べ、2022年の利上げは「とてもありそうにない」とした。

ECBは毎月、緊急買い取り制度で約700億ユーロ、従来型の量的緩和制度で約200億ユーロの資産を購入しているが、2022年1~3月に緊急買い取り制度による購入量を現在より減額したうえで、3月末で新規購入を打ち切る。ただ し、新型コロナウイルスの感染状況次第で「再開することもあり得る」としている。

なお、激変緩和措置として、量的緩和制度による購入額を2022年4~6月は月400億ユーロ、7~9月は月300億ユーロ とし、10月以降は月200億ユーロに戻す。


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欧州中央銀行(ECB)は2018年6月14日、理事会を開き、量的緩和政策を年内に終了することを決めた。2018年10月以降は150億ユーロに減らし、年末で打ち切る。すでに保有している国債については満期を迎えた分を再投資に回して当面は残高を維持する。


2018/6/18 欧州中銀、量的緩和政策を年内終了
 

しかし、ECBは2019年9月12日に開いた理事会で、2018年12月に打ち切ったばかりの量的緩和政策を再開した。
さらに銀行が中央銀行に余剰資金を預ける際の金利をマイナス0.4%からマイナス0.5%に引き下げた。

量的緩和政策(Asset Purchase Programm:APP)は2019年11月から月200億ユーロのペースで国債などを買い入れる。ドラギ総裁は「必要なだけ長く」買い入れを続けるとして、粘り強く緩和を続ける姿勢を示した。

2020年3月12日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ECBは現行の月200億ユーロペースでの国債等の資産買い入れ(年2,400億ユーロ)に加え、2020 年末までに 1,200 億ユーロの社債等資産の追加購入を決定した。(2020年総額 3,600億ユーロ)

更に2020年3月18日に、資産買取プログラムの拡大を発表した。コロナ危機緊急買い取り制度(Pandemic Emergency Purchase Programme:PEPP)に基づき、7,500憶ユーロの追加購入を行う。期間は「2020年末まで」とした。

2020年6月のECBの会合でPEPPは更に6,000億ユーロ拡大され、合計で1兆3,500億ユーロという巨額なものとなるとともに、買入期間も少なくとも2021年6月まで継続することが決定され た。

ECBは2021年9月9日、 政策理事会後の記者会見で、新型コロナウイルス緊急対策として打ち出したPandemic Emergency Purchase Programme:PEPP を1兆8,500億ユーロの規模で少なくとも2022年3月末まで、あるいは政策理事会が新型コロナ危機が収束したと判断するまで継続する方針を維持すると 発表していた。

現在は、Pandemic Emergency Purchase Programme(PEPP)で約700億ユーロ、従来型のAsset Purchase Programm(APP)で約200億ユーロの資産を購入している 。

今回ECBは、経済と物価が改善するなか、「段階的な資産購入ペースの縮小が許されると判断した」。

2022年3月末でPandemic Emergency Purchase Programme(PEPP)の新規購入を打ち切る。

ただ し、激変緩和措置として、Asset Purchase Programm(APP)の購入額で調整し、10月以降はAPPを月200億ユーロとし、2019年11月の量的緩和政策再開時のレベルとする。

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一方英国では、イングランド銀行(中央銀行)が12月16日、政策金利を0.15%引き上げて同日付で年0.25%にすると発表した。
利上げは2018年8月以来3年4カ月ぶり。供給制約やエネルギー価格の高騰で物価上昇率が急拡大するなか、金融緩和からの脱却を決めた。

また、米連邦準備制度理事会(FRB)は12月15日、物価上昇が勢いを増していることから、景気過熱に歯止めをかけるため、11月から始めた「量的緩和の縮小」のペースを加速させることを決めた。

2021/12/16 FRB、量的緩和策の前倒し終了決定  

欧米では消費者物価指数が急騰している。エネルギー価格上昇が大きいが、食品とエネルギーを除いたコア部分でも上昇が大きい。

これに対し、日本はコアCPIがようやくプラスに転じた状態である。生鮮食品とエネルギーを除くコアコアは-0.7%であり、目標とする2%は視野に入らない。
黒田日銀総裁は12月17日、「(物価が)
2%に及ぶとか超えることはまずない。欧米のように金融政策の正常化に向けて動き出すことにはならない」としている。

今後、EUや米国が英国に並んで金利を引き上げると思われるが、日本は取り残されることとなる。

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