三菱ケミカルホールディングスは12月1日、新経営方針「Forging the future 未来を拓く」を策定した。
経営戦略における最重要ポイントとして下記を挙げた。
1.市場の成長性、競争力、サステナビリティにフォーカスしたポートフォリオ
2.分離・再編し、独立化を進める事業
3.グループ全体におけるコスト構造改革
4.戦略遂行のためのスリムな組織
5.戦略的なキャピタル・アロケーション
3つの評価基準(市場の魅力度、グループの強み、カーボンニュートラル)に基づき注力事業を選別した。
1) 最重要戦略市場
①エレクトロニクス
EV:軽量化材料、車載電池材料、Wide Band Gap半導体
デジタル:半導体材料、高速通信関係②ライフサイエンス
ヘルスケア
食品:機能性食品材料、ニュートリション、長期保存材料
2) 強みを有する市場は下記の通り。
①強固な機能性素材事業群
ケミカル:MMA、機能性モノマーポリマー:バイオプラスチック、EVOH、機能性樹脂
フィルム:光学フィルム、バリアフィルム、工業フィルム
モールディングマテリアル:炭素繊維・複合材料、スーパーエンプラ
②産業ガス
3)残る石油化学事業及び炭素事業については、分離・再編し、独立化を進めることで、国内基礎化学産業の再編を主導する。
2024年3月期をめどに分離する。他社との事業統合などを検討する。両事業とも、採算が低く、温暖化ガスを大量に排出する。業界も伸びていない。
事業部門の組織は次のようになる。
現組織 | 新組織 | 最重要戦略市場 | 強みを有する市場 | 分離・再編 |
機能商品 | Polymers & Compounds / MMA |
エレクトロニクス EV デジタル |
ケミカル(機能性モノマー、MMA) ポリマー(バイオプラ、EVOH、機能性樹脂) フィルム (光学フィルム、バリアフィルム、工業フィルム) Molding Material (炭素繊維・複合材料、スーパーエンプラ) |
|
Film & Molding Materials / Advanced Solutions |
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ヘルスケア | Pharma | ライフサイエンス ヘルスケア 食品 |
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産業ガス | 産業ガス | 産業ガス | ||
ケミカルズ (MMA / 石化 / 炭素) |
石化/炭素 | 石化/炭素 |
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三菱ケミカルホールディングスでは4月1日付で社長が交代し、新社長にベルギー出身の Jean-Marc Gilsonが就任した。
1963年生まれで、1989年に米Dow Corning入社(日本に5年駐在)。2014年からに食品や医療関連素材を扱うフランスの RoquetteのCEO。
同氏はインタビューで次のように述べている。
「脱炭素」などの基準で事業の選別を始める。化学業界の事業環境が大きく変わる中で、収益構造の転換を進める。
化学産業は高付加価値化が課題だが、Well-being(健康、栄養など)、Connectivity(通信、デジタルなど)、Sustainabilityをキーワードに顧客に最高の価値を提供できる企業を目指したい。
基準とするのが、①強みがあるか②業界が伸びているか③カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)につながるか――の3点。「全てにチェックマークをつけられなければ、将来は投資引き揚げの対象とする」。
主力の石油化学事業も「ポートフォリオ改革のレビュー対象の一つ」。
事業構造の見直しなどで「時価総額を数年以内に世界の競合並みにする」。
短期的には電気自動車(EV)やリチウムイオン電池、半導体製造工程向けの素材などの高付加価値品で構成する機能商品と、ヘルスケアに重点を置く。
同社は9月30日、結晶質アルミナ繊維事業をApollo Global Management Inc.の関連会社が投資助言するファンドが保有する特別目的会社に譲渡すると発表した。
今回の結晶質アルミナ繊維事業の売却は、新社長の方針による第1号と思われる。
現時点では売れているが、ガソリン自動車が電気自動車に替わっていき、長期的にじり貧になるのを見越してであろう。
2021/10/4 三菱ケミカル、結晶質アルミナ繊維事業を譲渡
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