米財務省は12月3日、主要貿易相手国・地域の通貨政策を分析した半期為替報告書で、大幅な対米貿易黒字を抱える日本や中国を引き続き「監視対象」に指定した。
トランプ前政権は中国やベトナム、スイスを為替操作国に認定したが、国際協調を重視する現政権は為替操作国の基準に合致しても認定を極力避け、是正を求める方針に転換した。
今回も台湾とベトナムは為替操作国・地域の認定基準を満たすが、認定は避けた。前回報告では為替操作国の認定基準を満たしていたスイスは、今回は認定基準から外れた。
上記2国以外の中国や日本、韓国、ドイツ、スイスなど12カ国・地域を監視対象に指定した。
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米財務省は為替操作国に指定する条件として(1)対米貿易黒字の規模(2)経常黒字の規模(3)継続的な通貨売り介入――を掲げている。
従来の基準 | 2019/5より改正 | |
①重大な対米貿易黒字 | 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 | 同左 |
②実質的な経常黒字 | 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 | GDPの2.0%以上 |
③外為市場に対する介入 | GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入 (12カ月のうち、8カ月) |
同左 (12カ月のうち、6カ月) |
3基準全てに該当すれば「為替操作国」となる。次の場合、「監視リスト」に入る。
2基準に該当 & 1基準だが前年「監視リスト」の場合
なお、中国は常時、「監視リスト」
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今回、中国は①②の2基準で対象となった。前回3基準とも対象となったスイスは今回は①③の2基準。アイルランドは②のみだが、前回2基準のため、監視リストに入った。
③の外為市場介入は、スイス、インド、台湾、ベトナム、シンガポールの5カ国。
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3基準 |
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2基準 |
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1つだが前年に監視対象 |
日本 | 中国 | 韓国 | 台湾 | ドイツ | スイス | インド | アイルランド | ベトナム | イタリア | マレーシア | シンガポール | タイ | メキシコ | |
2016/4 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2016/10 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2017/4 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2017/10 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2018/4 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2018/10 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2019/5 |
〇 ①② |
〇 ① |
〇 ② |
ー | 〇 ①② |
ー |
ー |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
ー | ー |
2019/8 | 操作国 | |||||||||||||
2020/1 | 〇 ①② |
〇 ① |
〇 ①② |
ー | 〇 ①② |
〇 ①② |
ー |
〇 ① |
〇 ① |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
ー | ー |
2020/12 | 〇 ①② |
〇 ① |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ①② |
操作国 | 〇 ①③ |
ー | 操作国 | 〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
〇 ①② |
ー |
2021/4 | 〇 ①② |
〇 ① |
〇 ①② |
操作国 非認定 |
〇 ①② |
操作国非認定 | 〇 ①③ |
〇 ①② |
操作国非認定 | 〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
〇 ①② |
〇 ①② |
2021/12 | 〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ①② |
操作国 非認定 |
〇 ①② |
〇 ①③ |
〇 ①③ |
〇 ② |
操作国非認定 | 〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
〇 ①② |
〇 ①② |
丸数字は問題となった項目
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