米国ワシントン大学医学部のCecilia S. Lee教授(韓国生まれ、アルゼンチン育ちの女性)の研究陣は12月7日、米国医師会雑誌 JAMA Internal Medicine に「年を取って白内障の手術を受けた人は他の人より30%も認知症になりにくい」と発表した。
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2786583
白内障は、目の水晶体が白く濁ってしまうことにより視力が低下する疾患で、手術は、損傷した水晶体を人工の水晶体に変えるもの。
研究陣は65歳以上の3038人を対象に長期間の追跡調査を行った。調査期間中、853人が認知症にかかった。
白内障の手術を受けていた参加者(ほぼ半数)は、手術を受けていない白内障患者のグループより認知症発症リスクが29%低かった。
白内障は青色の光を遮断する。睡眠の周期を調節する生体時計は青色の光に対し敏感に反応する。
Lee 教授は「白内障は、青色光をはじめ網膜に届く全ての光の質に影響を及ぼすので、白内障手術が神経細胞を再活性化させて認知能力の減少を防いだ、とみることができる」と説明した。
なお、緑内障の手術を受けた人は、認知症の発症が減るということはなかった。
緑内障は視神経の異常や眼圧の増加で視野が狭くなるもので、手術は視力の改善にはならない。
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2018年2月に奈良県立医科大学が奈良県在住の地域高齢住民を対象とした研究で、白内障手術を受けた人では軽度認知機能障害(認知症の前段階)が有意に少なかったが、認知症とは有意な関連を認められないと発表している。
視力と独立して白内障手術が軽度認知機能障害と関連することが明らかとなったとしている。
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