米上院は12月16日、中国・新疆ウイグル自治区からの輸入品について、強制労働で生産されていないという証明を義務付ける法案(Uighur Forced Labor Prevention Act)を1票の反対のみで可決した。
同法案については、新疆地域での取引があるCoca ColaやNike、Appleといった大企業が ビジネスへの影響を懸念し、反対していた。
当初はバイデン政権も支持せず、ホワイトハウスはこの法案について立場を示していなかったが、大統領報道官はバイデン大統領が署名する方針だと発表した。
上院では、 法案を2021年7月に満場一致で可決していたが、今回、下院が類似法案を可決したため、これを再審議し可決した。
付記 12月23日、法律成立。
ーーー
米下院は12月8日、中国・新疆ウイグル自治区におけるイスラム教徒の少数民族ウイグル族への弾圧を巡り、同国に制裁を科すことを目的とするウイグル強制労働防止法案"Uighur Forced Labor Prevention Act" を賛成428、反対1の圧倒的賛成多数で可決した。
新疆ウイグル自治区 からの全ての産品が強制労働で製造されていると見なす「反証を許す推定」規定が含まれており、製品が強制労働によって生産されたものではないと証明できなければ、米税関・国境警備局(CBP)が輸入を差し止められるようにする内容 。
輸入禁止措置は法律成立から180日後に発効する。
米国は中国による新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル人弾圧をめぐり、中国への圧力を強めてきた。
トランプ前大統領は2020年6月17日、新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル人弾圧をめぐり、中国政府の高官らに制裁を科すよう トランプ大統領に求める「2019年ウイグル法案(Uighur Act of 2019)」に署名し、同法は成立した。
2019/12/7 米下院「ウイグル人権法案」可決
米政府は2020年12月、新疆ウイグル自治区に拠点を置く組織「新疆生産建設兵団(XPCC)」が製造する綿製品に対して、禁輸措置を発動した。
2021年1月、米税関・国境警備局(CBT) は新疆ウイグル自治区の強制労働をめぐる輸入禁止措置に違反したとして、ロサンゼルス港でユニクロの男性用シャツの輸入を差し止めた。「新疆生産建設兵団(XPCC)」が原材料の生産に関わった疑いがあるとしている。
綿の原材料は生産過程が複雑で、原産地の特定が困難とされるが、輸入する企業に、強制労働の製品を使っていないと証明する義務を課していた。
米税関・国境取締局は2021年1月13日、少数民族による強制労働で製造されていることを理由に新疆ウイグル自治区で生産された綿とトマト関連製品全ての輸入を禁じると発表した。これまで特定企業を対象に実施していた禁輸措置を全域に広げた。
バイデン米政権は2021年7月13日、中国政府による新疆ウイグル自治区での人権侵害や強制労働問題を巡り、 国が広く関与する強制労働、監視、強制的な人口抑制策、子供の家族からの隔離、大量拘留、その他の人権侵害を挙げ、「新疆と結びついた供給網や事業、投資から退出しない企業や個人は、米国法違反に問われる高いリスクを冒すことになりうる」とする勧告を発表した。
2021/7/15 ウイグル関連の取引は「米国法違反リスク」
今回、同地区の全ての製品について、強制労働によって生産されたものではないと証明できなければ、 輸入を差し止められる。
しかし、下図(毎日新聞)のとおり、強制労働によらないとの証明は困難である。
綿花やトマトの主要産地であるほか、太陽電池用多結晶シリコンの生産でも世界の供給の4割超を占めるとされ、 影響が大きい。
ーーー
バイデン政権は12月6日、新疆などでの人権侵害を理由に、来年2月の北京冬季五輪に外交使節団を派遣しない「外交ボイコット」を発表した。 多くの国が追随している。
必ずしもウイグル問題だけではないが、財務省、商務省も中国への圧力を強めている。
米財務省は2021年12月10日、中国の人工知能(AI)関連スタートアップ企業、商湯科技(Sensetime)を「中国軍産複合体企業」のリストに掲載し、米国人による投資を禁止したが、12月16日、ドローン大手DJIなど中国企業8社を米国人による証券投資の禁止対象に追加した。
2020/11/13 米国、中国軍支援企業への投資を禁止 付記
米商務省は11月26日、中国とパキスタン企業及び中国企業の日本とシンガポール子会社27社をEntity list に追加したが、12月16日に中国など37事業体の40拠点をEntity Listに追加した。
2020/12/19 米国、半導体SMICなど中国企業77社をEntity Listに追加 付記
コメントする