Volkswagen は12月8日、バッテリー技術で3社と戦略的提携契約を締結したと発表した。
自動車メーカーの電池、更にその原料への進出が急である。
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VWは3月15日に"Power Day" を開催、2030年までのEVなどの電動車向けバッテリーとその充電に関する技術ロードマップを発表した。
最重要部品となるバッテリーについて、電池メーカーとの合弁などを通じて40 GWh の工場を2030年までに欧州で6カ所設ける。規格を統一した電池("Unified Cell")を大量生産しコストを半減、ガソリン車より安いEVを目指す。
VWはスウェーデンのバッテリーメーカー Northvoltとの間で、今後10年にわたるバッテリー製造で140億ドルの契約を結んだ。
VWはNorthvoltの株式を追加取得し、Northvoltが欧州のVWグループ向けの主要な電池サプライヤーとなる。
提携の一環として、Northvoltのスウェーデンのプラントは拡張し、40 GWh とする。NorthvoltはドイツのSalzgitterのJV持ち株をVWに売却することにも同意した。ここも40 GWh に増強する。
今後、2026年には西欧(スペインかフランスかポルトガル)に1工場、2027年には東欧(ポーランドかスロバキアかチェコ)に1工場、2030年までにあと2工場を建設し、合計6工場 240GWh の能力とする。
標準的な電池容量のEV換算で、合計500万台分相当の電池を生産できる。
2021/3/23 VWグループ、EV向け次世代電池を大量生産
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今回の戦略的提携契約は次の通り。
1) ベルギーの素材大手Umicore と電気自動車(EV)向け電池の正極材を合弁で生産する。
2025年から欧州で生産を始め、2030年までに約220万台分の生産体制を整える。内製化を進めて安定調達を確実にする。
合弁会社はまずVWがドイツ北部Salzgitterで立ち上げ中の電池セル工場にEV約30万台に相当する20GWh 分を供給する。2030年に生産能力を160GWh 分(Battery Electric Vehicle 220万台分)まで高める。
3月に公表した欧州の6つの巨大な電池セル工場で必要となる正極材の半分以上を確保する。合弁会社は今後、正極材の原料となるコバルトやリチウムなどのリサイクルも事業範囲に含めることを検討する。
Umicore は、機能材料メーカーで、その事業はエネルギー関連材料、触媒、 貴金属リサイクル、パフォーマンス材料の4つのビジネスグループに分かれており、自動車触媒、リチウムイオン電池材料、太陽電池、燃料電池、貴金属リサイクルのクリーンテクノロジー分野に注力している。
Horizon 2020戦略として、特に資源不足、排出抑制、輸送の電化という3つのメガトレンドに牽引されているビジネスにおいて、成長とパフォーマンスの加速を目標としている。
日本では、日本触媒との自動車用排気ガス浄化触媒のJVのユミコア日本触媒(Umicore 60%、日本触媒40%)を持つ。
2) VWは電池開発スタートアップの米24M Technologies, Inc.への出資も決めた。製造プロセスの独自技術を持ち、電池生産のコストを大幅に削減できる可能性があるとしている。
24M Technologies (CEO Naoki Ota) はMIT(Massachusetts Institute of Technology )からのスピンオフで、独自の半固体プロセスを確立し、多数の技術特許を取得している。最大の特徴は、現行リチウムイオン電池の性能を維持・向上できることに加え、使用部材の削減、製造プロセスの簡略化により、価格競争力・リサイクル特性・安全性の高い製品を提供できる点にある。
半固体電極はMITのDr. Yet-Ming Chiangにより発明された。バインダーを使用せず、電解質と活物質を混合して粘土(クレイ)のようなスラリーを形成する。独自のスラリーにより、より簡単な製造プロセスを可能にしながら、より少ない体積、質量、およびコストで厚い電極を作成することができる。
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当該特許技術を複数の製造パートナーにライセンス供与することで、半固体リチウムイオン電池の普及を進めている。2020年には京セラが商業生産を開始している。
京セラは2019年10月、世界初となるクレイ型リチウムイオン電池の開発に成功するとともに、採用製品の第1弾となる住宅用蓄電システム「Enerezza」を2020年1月に少量限定発売すると発表した。クレイ型リチウムイオン電池は、粘土(クレイ)状の材料を用いて正極と負極を形成することから名付けられた。
伊藤忠商事は5月18日、リード投資家として出資ラウンドを取りまとめ、第三者割当増資を引き受け、24M Technologiesを伊藤忠商事の持分法適用会社とした。
3) VWは、Upper Rhine Valley でリチウムを生産するスタートアップの豪Vulcan Energy Resources Ltd とリチウムの購入で合意した。
水酸化リチウムを2026年から5年間調達する。二酸化炭素排出が少ないリチウム(ZERO CARBON LITHIUM™) 生産が売りのVulcanはUmicoreやStellantisとも供給契約を結んでいる。
Vulcan Energy Resourcesは9月29日、Zero Carbon Lithium™プロジェクトで計画中のCentral Lithium Plantの用地について独Frankfurt郊外のIndustriepark Höchstに確保したと発表した。
地熱とリチウム吸着装置を組み合わせた複数のプラントで塩化リチウムを処理して水酸化リチウムに変換する。
ドイツでの生産で欧州の顧客に対し、現在のリチウムサプライチェーンの輸送フットプリントを大幅に削減する形で、水酸化リチウムを提供できる。
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