米国民主党の混乱

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米国民主党が混乱している。

バイデン大統領は2021年3月31日、国内のインフラの整備等に8年間で2兆2500億ドルを投入する新たな計画 American Jobs Plan を発表した。 その後、1兆ドルのインフラ包括法案と3兆5000億ドルの予算とに分かれたが、与野党でまとまらず、混乱に混乱を重ね、1兆ドル(新規追加は5500億ドル)規模の超党派インフラ投資法案は11月15日にようやく成立した。

2021/11/8 米インフラ法案、下院で可決、成立へ

もう一つの「10年で3.5兆ドルの予算案」は進展せず、バイデン大統領が10月28日に1.75兆ドルに修正した Build Back Better Act を発表した。

2021/11/1 バイデン大統領、10年間3.5兆ドルの予算案を修正

下院は11月19日早朝、これを賛成220、反対213で可決し 、上院に送付 した。

2021/11/22 米下院、1.75兆ドルの税制・支出法案を可決、上院は不透明

しかし、これは上院で、民主党員たった1人の反乱で議決できず、越年した。(詳細 後記)

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米連邦政府の債務残高に上限を定める法律の適用停止措置が2021年7月31日に期限を迎えた。問題が放置されれば10月にも政府の資金繰りが行き詰まってデフォルトに陥る可能性があった。

2021年10月から始まる新年度予算も目途が立たなかった。このためのつなぎ予算が必要だが、債務上限問題と上記の2法案が絡み合い、民主党と共和党で争い合い、目途が立たなかった。

とりあえず、前年度終了日の9月30日に、12月3日までの短期のつなぎ予算を通し、政府機関閉鎖を回避した。

米上下両院は12月2日、翌日で期限切れとなるつなぎ予算を2022年2月18日まで延長する法案を賛成多数で可決した。バイデン大統領は12月3日、これに署名、同予算が成立した。

2022年2月末には同じ混乱が予想される。

2021/12/4 米議会、つなぎ予算案を可決 

債務上限問題については、10月に債務上限を4,800億ドルだけ(約2か月分)引き上げる法案を通した。

その後、議会は交渉を重ね、共和党反対のままで上院を通すため、本件でのみ上院を過半数で議決できる法案を通してまでして、債務上限を2兆5千億ドル引き上げる法案を12月15日に議決した。

2021/12/16 米国、債務上限問題 ようやく解決

米国政府のデフォルト、政府機関の閉鎖を直前まで回避できな状況が続いている。

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前述のバイデン大統領肝いりの「10年で3.5兆ドルの予算案」改め「1.75兆ドルに修正した Build Back Better Act」 は、民主党と共和党の争いではなく、むしろ、民主党内の争いで決められない状況が続いている。

共和党は反対を貫いているが、本法案は財政調整法案に基づくため、上院でも過半数の賛成で可決できる。現在、与野党は50:50のため、民主党は上院議長である副大統領の1票で議決できる。

当初、民主党内でインフラ法案と「3.5兆ドルの予算案」のどちらを先に議決するかで揉めた。

インフラ法案は共和党も賛成のため、これを担保にして、さきに(当時の)「3.5兆ドルの予算案」を通すべきだとする組と、インフラ法案を先に早く可決すべきだとする進歩派が争った。

2021/8/26 米下院、3.5兆ドルの予算決議案を可決

11月に、インフラ法案と(新しい)1.75兆ドルのBuild Back Better Act がまとまったが下院民主党内で揉めた。

6人の中道派議員が、1.75兆ドルの予算法案について「議会予算局による財源の精査が終わっていない」として早期の法案採決に反対した。下院で民主党から4人が反対すれば可決できないため、ペロシ議長は「説得は困難だ」と判断した。

次善の策として、議長はインフラ投資法案を先に成立させる方針に転じたが、今度は左派が、インフラ法案を通してしまうと、大型歳出法案がそのままでは通らない可能性があるとして議決に反対した。

最終的に中道派議員が「議会予算局の精査の結果が政府の推計と矛盾しなければ、大型歳出法案に賛成する」と文書で約束したことで、左派が態度を軟化させ、インフラ投資法案を可決した。

2021/8/11 米上院、5500億ドル規模のインフラ包括法案を可決、下院採決時期は不透明

最終的にインフラ法案は上下両院を通り、法案となった。
しかし、Build Back Better Act は下院は通ったが、上院でまだ民主党議員たった一人の反乱で決められない状況が続き、越年した。

上院では民主党穏健派の West Virginia州選出のJoe Manchin議員が現状のままの法案賛成に強く難色を示した。

もともと総額3.5兆ドルの予算規模で民主党が単独で起案を進めていたが、Manchin議員の要請でその半分の規模の1.75兆ドルまで圧縮させられた経緯がある。

今回の法案で同議員はChild Tax Credit(児童税額控除)の扱いに反対した。

ホワイトハウスは同議員と交渉を続けた。

事態は12月19日、更に悪化した。Manchin議員は12月19日、 法案修正を求めるのではなく、「この法案はノーだ」として法案に反対すると断言した。

Manchin議員は法案に反対する理由にインフレや債務拡大への懸念を挙げたが、額面通り受け止める向きは少ない。

Manchin議員は West Virginia州選出で、以前は石炭産業で栄えた地域で民主党の地盤であったが、現在は共和党 支持が強い「Red State」となっ ており、議員の生き残りには保守層を取り込むしかない。

民主党政権の「左傾化」を阻むことで多額の政治献金も集まる。同議員は2021年に9月末までに300万ドル超の政治資金を集めたが、これは2019~20年実績の4倍を超える。石油・ガス、石炭などエネルギー業界からの献金が上院議員のなかで最高を誇る。

法案の内容の修正を求めるための交渉ではなく、法案をつぶすことを狙っているとの見方が強い。

ホワイトハウスは、Manchin議員の要求で法案を修正してきたため、法案を通過させるという約束を破ったと非難した。サキ報道官は「議員の反対は突然の不可解な心変わりである。大統領や同僚に対する約束違反だ」と述べた。 同議員が12月14日に同等の歳出規模の代替案を大統領に提示していたと「暴露」し「約束違反だ」となじった。

米上院民主党トップのシューマー院内総務は 、Manchin議員の不支持にもかかわらず、同法案を2022年初めに採決にかける意向を示した。

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米議会勢力は次の通り。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計 欠員
上院 50 48 2 100
下院 213 221 434 1

 
 上院は通常、議決に60票が必要(60票で
filibuster 阻止)である。なお、50対50の場合は上院議長である副大統領の1票で決まる。
 下院の欠員のフロリダ州の議席は2022/1/11に決まる。


2022年11月8日に議会の中間選挙の投開票が行なわれる。

上院(任期6年、定数100)の3分の1の34議席と下院(任期2年、定数435)の全議席が争われる。

バイデン大統領の支持率が低迷し(11月の世論調査で41%)、Kamala Harris副大統領はほとんど表に出ないし、移民問題で問題発言をした。

民主党内の争いで、重要法案を決められない。

CNNは、中間選挙の結果、上院、下院とも共和党が過半数を取る可能性が高いと報じている。

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