英国の食品・日用品大手のUnileverは英製薬大手のGraxoSmithKline(GSK)の大衆薬事業の買収を提案した。
GSKによると、3度目の最新提案(12月20日付)では買収額は500億英ポンド(約7兆8千億円)という。(現金417億ポンド+Uniliver株式 83億ポンド相当)
GSKはこの提案を事業価値を反映していない("fundamentally failed" to reflect the value of the division)として拒否した。
UnilverはGSKのこの事業の出資者であるPfizerにもアプローチしている。
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GSKの大衆薬事業は、GSKとPfizerの大衆薬事業を統合したもので、GSKが68%、Pfizerが32%出資する。
2018年12月19日に統合を発表した。
GSKの大衆薬は、歯磨きのSensodyne(シュミテクト)や抗炎症剤Voltaren、非ピリン抗炎症剤・鎮痛解熱剤Panadol(カロナール) など。2017年12月期の部門売上高は71億ポンド(約1兆円)。
Pfizerの大衆薬は、痛み止めAdvil(アドビル)、サプリメント製品のCentrum やCaltrate など。2017年12月期の部門売上高は34億ドル(約3800億円)。
統合会社は売上高は98億ポンド(約1兆4000億円)で、Johnson & Johnsonを上回り世界最大の大衆薬メーカーになる。市場シェアは7.3%に達し(2位のJ&J は4.1%)、米国と中国を含む主要地域の全てで1位か2位の市場シェアを持つこととなる。
2018/12/21 GlaxoSmithKlineとPfizer、大衆薬事業を統合
このため、本年央にも分社化すべく準備を進めており、売却そのものには反対でない。売却金額が不満というものである。
この事業は中期的に年率6%で成長すると見られ、Unilever はこの点を考慮していないとしている。
なお、GSKは株主から、COVID-19ワクチンの開発遅れで批判を受けている。高額の売却で株主から評価されることを期待している。
SanofiとGSKは2020年4月14日、両社の技術を活かし、COVID-19に対するアジュバント添加ワクチンを開発すると発表した。
Sanofiでワクチンを担当するSanofi Pasteurは、遺伝子組換えDNA技術をベースとするS-タンパク質COVID-19抗原を提供する。
GSKは、実証済みのパンデミックアジュバント技術を提供する。Sanofiの遺伝子組換え技術をベースとするCOVID-19ワクチン候補の開発は、米国保健福祉省(HSS)の一部門である米国生物医学先端研究開発局(BARDA)との協力の下で、同局の資金提供を受けて実施された。
SanofiとGSKのワクチンは、米政府の爆速ワクチン計画(Operation Warp Speed)の対象に選ばれている。2020年7月31日に米政府が21億ドルを支払い、5000万人分を確保した。
しかし、SanofiとGSKは2020年12月11日、試験計画を遅らせると発表した。
第1/2相臨床試験で、18~49歳の被検者においてはCOVID-19から回復した人に匹敵する免疫応答が示されたが、高齢者において十分な免疫応答が得られなかったことから、すべての年齢層において十分な免疫応答を得るために抗原の濃度を改善する必要性が示された。
2021年2月に改善された抗原を用いて第2b相臨床試験を実施する。開発計画が成功すれば、2021年第4四半期に実用化の見込みとしている。
2011/10/1 Sanofi の新型コロナワクチン開発
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英国のSir William Hesketh Lever の石鹸会社 Lever Brothers とオランダのマーガリン会社 Margarine Unie が1930年に統合し、Unilever となった。
その後、両国に本社を持つ英蘭会社としてやってきたが、2020年6月に英国への一本化を発表し、同11月に完了した。(2018年3月に本社をオランダに統合すると発表したが、英国の機関投資家が強く反対し撤回している。)
同様に英蘭資本の石油メジャー、Royal Dutch Shell plc は2021年11月15日、英国とオランダの二重構造となっていた株式や本社機能を英国に一本化する計画を明らかにした。組織構造を簡素化し、社名もShell plc.に変更する。
2021/11/19 Royal Dutch Shell、英本社に一本化し、社名をShell に変更
同社の主要製品は、Dove(パーソ ナルケア)、Lipton、PG Tips(紅茶)、Dirt is Good(洗剤)、Rexona(制汗剤)、Hellmann's(調味料)、Knorr(食品・調味料)、Marmite(酵母ペースト)など多数。
Unileverは製品群の再編成を続けている。
同社は近年、パーソナルケア分野での成長を重視し、利益率の低い食品などの事業を切り離す戦略を総合的に展開している。
2016年7月にカミソリのサブスクリプション(定額制・定期購入)サービスを月額最低3ドルで提供しているDollar Shave Clubを10億ドルで買収した。
同社は2021年9月に紅茶事業を分社しEkaterraとしたが、2021年11月18日、同社を45億ポンド(cash-free, debt-free basis)で CVC Capital Partners Fund VIII に売却すると発表した。紅茶の需要が伸び悩んでおり、今後も収益の大幅な拡大は見込めないと判断した。
今回、GSKの大衆薬事業を買収対象に選んだ。
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