人口約1300万人の中国陝西省西安市が、新型コロナウイルスのデルタ株の拡大で事実上のロックダウンに陥った。
12月9日~23日の間に市内で250人余りの感染者が確認された。感染経路の特定が追いつかないまま市内全域に広がったため、12月23日午前0時より都市全体に封鎖令を出した。
12月23日から市外との間を結ぶ航空便と長距離バスがすべて停止されたほか、列車の運行も制限されている。市外へ続く道路には検問が敷かれ、多くの車が市内へ追い返されている。
市内ではすべての団地や居住地域がそれぞれ封鎖され、地域外に出られるのは「1家族につき1人が、2日間に1度だけ」という制限が敷かれた。
西安には、メモリー半導体業界世界1位のSamsung Electronics 、同 3位の米Micron Technology の工場があるが、生産に障害が出ている。
西安はサムスンの海外で唯一のメモリー半導体生産基地で、第1、第2工場からなり、完成段階にある第2工場の増設分も含めれば、月にウェハー25万枚規模のNANDフラッシュを生産可能。サムスン電子によるNANDフラッシュ生産量の42.5%、全世界の生産量の15%を占める。
同社の3D NAND工場については、中国当局から日常生活に必須の業務 (Essential Work) と認定され、操業継続のライセンスを受け、同社も当初は「従業員は都市封鎖前に会社の寄宿舎に移動しており、消耗部材の在庫も十分ある」と説明し、操業を継続する姿勢を見せていた。
しかし、西安市民に対する厳しい外出禁止令が長引いていることから、クリーンルーム内で働く人員確保が徐々に困難になりつつあ り、原材料の運送などに支障が生じることが判明し、通常の操業を継続していくことは困難と判断した。
同社は2021年12月29日、「中国西安の状況について」と題する異例の声明を発表した。「新型コロナウイルス感染症が続いているため、中国西安のNAND工場の操業を一時的に調整することを決定した」というもので、同社の最優先事項である従業員とその家族の健康と安全を保護するというコミットメントに沿う形で決定されたとしている。また、この取り組みに際し、グローバルな製造ネットワークの活用を含め、顧客に影響を与えないよう必要な措置を講ずるともしている。
完成品の在庫がかなりあり、当面の供給に支障はないが、都市封鎖が長引けば世界的なNAND不足問題が発生する懸念がある とみられている。
マイクロンは2007年3月に西安 工場を開設した。中国に設置する初の製造施設で、DRAM後工程(パッケージング)を行っている。
同社は、「西安のロックダウンにより、Micron西安工場のチームメンバーや請負業者などの人員が不足しているため、DRAM組立工場の生産水準にも、ある程度の影響が及んでいる」と述べている。
「より厳しい制限が追加され、西安工場の稼働に影響が及ぶことになれば、それを軽減するのはますます困難になるだろう」と付け加えている。
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なお、オミクロン株の流行が中国の天津市で拡大し、緊張が高まっている。
1月8日に2人の新型コロナへの感染がわかり、9日にいずれもオミクロン株であることが判明した。市中感染とみられ、感染の経路はわかっていない。濃厚接触者や周辺住民の検査で、10日午後6時までに計41人の感染が確認された。
北京で冬季五輪の開幕まで1カ月を切るなか、大会の「円満な成功」を目指す習近平指導部は神経をとがらせている。 北京と天津は高速鉄道で30分程度。通勤圏内でもあり、往来は多い。
天津市は感染者がいる地域を封鎖したほか、約1400万人の全市民へのPCR検査の実施を決定 、濃厚接触者など計約7万5千人を隔離した。
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