セルビア、Rio Tintoのリチウム開発許可取り消し

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Serbia 政府は1月20日、資源大手Rio Tintoのリチウム開発許可を環境面の懸念から取り消したと発表した。

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Rio Tintoは2021年7月27日、EV向けバッテリーの需要増加を受け、Serbia のJadarでのリチウム事業に24億ドルを投資する意向を明らかにした。関連施設を2022年から4年かけて建設する計画で、投資については年内に最終決定する。

Jadar鉱床は、セルビア西部 Loznica にあり、2004年に発見された。地下鉱山とオンサイト加工施設から成り、バッテリー用の炭酸リチウムを生産する。同鉱床では太陽光パネルや風力タービンに使われるホウ酸塩も生産する。

セルビアは世界で唯一、新規鉱物である Jadarite(ジャダライト:白を基調とした単斜晶ケイ酸塩鉱物で、組成式はLiNaSiB3O7(OH) または Na2OLi2O(SiO2)2(B2O3)3H2O で表される。が採掘可能な国である。ベオグラードから西方 100 ㎞の Loznica 地域に位置する Jadarリチウムプロジェクトは、2004 年に Rio Tinto が鉱床を発見した、

同地で探鉱を行っていたRio Tintoの地質学者が、ドリルコア中に従来知られていた鉱物のいずれとも異なる小さな丸い団塊を発見した。ロンドン自然史博物館およびカナダ国立研究評議会の鉱物学者の確認の結果、新鉱物と認められた。

同プロジェクトがリチウム生産を開始すれば世界生産の 2 割を占めると推測されている。Rio Tintoはこれまでに同プロジェクトに 7千万US$を投じており、2016 2 月にはさらに 2千万 US$を投じると発表した。

Rioにとって唯一のリチウム開発事業。

2029年に完全生産に向けて立ち上げた後、年間約58,000トンの炭酸リチウム、160,000トンのホウ酸、255,000トンの硫酸ナトリウムを生産する。

鉱山の予想される40年の寿命にわたって230万トンの炭酸リチウムを生産することを目指しており、Jadar事業により、Rioは少なくとも向こう15年間は欧州最大のリチウム供給企業になる見込み。

Jadarの開発には、地域社会への影響を最小限に抑えるために、最高の環境基準に基づいてプラントが建設される。また、水処理についても、専用の施設を設置し、原水の約70%をリサイクル水や鉱山排水処理水で賄うなど、最先端の技術を導入する。


しかし、Rio Tintoは2022年1月18日、許認可手続きが長引いていることや、環境保護の観点から激しい反対運動が起きていることから、リチウムの生産開始が2027 年に遅れる見通しを明らかにした。

セルビア議会は2021年、リチウム鉱山開発プロジェクトを加速させるために、私有財産の収用手続きをより迅速に行える法律を施行し、極右のヴチッチ大統領もそれを強く支持した。

セルビアは深刻な水質汚染、大気汚染、産業廃棄物の不適切な処理に伴う公害に悩まれており、環境保護を蔑ろにする極右政党への非難は日増しに高まった。ある環境専門家は、リチウム鉱山は農地を破壊し、水源をさらに汚染すると警告した。

リチウム鉱山に反対するデモは2021年11月27日に本格化し、一部の抗議者と警察が衝突した。

12月4日に首都ベオグラードなどで政府のリチウム鉱山開発プロジェクトに反対する抗議デモが行われ、数千人が高速道路と橋を封鎖した。

今回、セルビア政府は1月20日付の声明で、ブルナビッチ首相がRioのリチウム開発計画について「許認可や決定はすべて無効になったと述べた」ことを明らかにした。環境団体の要請などに対応したと説明している。

Rioは「ブルナビッチ首相の声明に重大な懸念を抱いている」との声明を出した。「常にセルビアの法律を順守して事業を運営してきた」と強調したうえで、「決定の法的根拠を検証している」とした。


オーストラリア政府は1月16日、セルビア出身であるテニスのノバク・ジョコビッチ選手を国外退去とした。セルビア政府は猛反発し、大統領は同選手のビザ取り消しを認めた豪裁判所の判断について「多くの噓にまみれた茶番劇だ」と批判していた。

(各紙がこれに触れている。環境保護での反対運動があることは確かだが、本件がいくらかは関係しているのではとの疑いを表しているのではと見られる。)


専門家は「ジャダールほどのプロジェクトは多くない。ジャダールの開発ができなければ、西側諸国は自前のサプライチェーンを持てなくなる」と述べ、リチウム、その他重要な電池資材の不足が深刻化すると予想した。

専門家の間では、世界的なリチウム不足が少なくともあと3年続くと予想されていた。ジャダールの開発許可取り消しで、不足状態がさらに長期化することになる。

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