フランス南部で昨年11月4日に初めて確認された新型コロナウイルスの変異株「IHU」(B.1.640.2)について、WHOは1月4日、現時点ではそれほど警戒すべきものではないと見ていることを明らかにした。
WHOは昨年11月以降、IHU株を監視しているが、この変異株が20人を超えて感染を広げていることを示す証拠はほとんど得られていないと明らかにした。
フランス・マルセイユ大学病院地中海感染研究センター(Institut Hospitalo-Universitaire en Maladies Infectieuses de Marseille)は2021年12月29日、フランス南部のマルセイユと周辺地域の12人から新型コロナウイルスの新しい変異株を発見したという 査読前論文を発表した。感染者の一人はカメルーンからフランスに帰国したワクチン接種済みの旅行者で数日後に発症した。
昨年9月にコンゴで変異株B.1.640 が発見され、同10月にフランスで24人が感染した。その後は発生していない。
今回の変異株はこれと系統発生的に関連があり「B.1.640.2」と呼んでいるが、両者には違いが存在するという。 大学の名前から「IHU」とも呼ばれる。
オミクロン株と同様に変異部分が多い。46カ所の変異と37カ所の欠失が確認されている。スパイクたんぱく質には、14のアミノ酸置換と9つの欠失がある。
このスパイクタンパク質は、ワクチンへの耐性を高めると考えられる「E484K」の変異や、「アルファ株」で初めて見られた「N501Y」の変異も持っており、専門家はこの変異が感染力を高めると考えているという。
WHOは問題とする変異株を、VOC(Variants of Concern)、VOI(Variants of Interest)、VUM(Variants Under Monitoring)に分類しているが、2021/11/22にB.1.640 をVUMに指定した。
今回のB.1.640.2はまだ指定していない。
ブログ 変異株一覧
最初の論文に携わった研究者も、わずか12例をもとにこの変異株について憶測するのは"時期尚早"と述べている。
なお、今回の発表とは直接は関係ないと思われるが、IHUのDidier Raoult所長はしばしば問題を引き起こし、批判を浴びている人物で、各紙の本件報道の多くに付言されている。
2020年には、裏付ける証拠が乏しいにもかかわらず、抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」が Covid-19に100%有効な治療薬だと主張した。これを受け、当時のトランプ大統領が繰り返し、「マラリアなどの治療に使われる薬が有効だと思う」と主張、自分は予防薬として飲んでいると発言した。
WHOは2021年3月2日、「ヒドロキシクロロキン」を新型コロナウイルスの予防薬として使わないよう「強く勧める」と発表した。
2020/4/9 トランプ大統領、CVD-19治療に抗マラリア薬を絶賛
Raoult所長の試験手法は、プラセボ(偽薬)を投与する対照群がないために批判を浴びていた。
2021年2月のTVインタビューでは、「個人的にはmRNAワクチンよりも中国の不活化ワクチンの方がより合理的だと信じている。これは私が熟知する技術ロードマップであるからで、そして不活化ワクチンであってもより論理的な方法で新型コロナウイルスの変異種に対応できると考えている。そのためもし選択できれば、中国の新型コロナワクチンを選択するだろう」と明言した。
ーーーーー
イスラエル保健省は1月4日、新型コロナウイルスとインフルエンザの両方に同時感染した患者が同国で初めて確認されたことを明らかにした。
患者はワクチン未接種の30代の妊婦で、イスラエル中部ペタクチクバのベイリンソン病院で新型コロナとインフルエンザの両方に対処する医薬品を組み合わせた治療を受け、12月30日にを退院した。退院時の体調は全般的に良好だった。
新型コロナのワクチンもインフルエンザのワクチンも接種していない妊婦の間で、コロナの症例に加えてインフルエンザ感染が急増しているという。
インフルエンザ(flu)とコロナ(corona)を組み合わせた「Flurona」という新語もつくられた。
コメントする