東芝、分割案について株主の意向を確認するための株主総会を開催

| コメント(0)

東芝は2月7日、企業価値を高めようと打ち出した「会社を3つに分割する」という方針を一転して見直し、半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とする と発表した。

株主還元は当初案より増やした。

2022/2/8 東芝 「3分割」を「2分割」に見直し 

3分割案、2分割案には一部の大株主から反対の声が上がっているが、東芝は2月14日、分割案について株主の意向を確認するための株主総会を3月24日に開催すると発表した。

株主の意向確認に加え、株主の3D Investment Value Master Fundからの株主提案も付議する。

同社はシンガポール拠点の日本特化型の独立系資産運用会社で、東芝への出資比率は7.57%とされる。

本株主提案は1月6日付で行われており、「3分割案」を前提にしている。但し、内容としては「2分割」の場合にも当てはまるものである。

なお、臨時株主総会について、会社法第 306 条第1 項に基づき、東京地方裁判所に対して、株主総会検査役の選任の申立てを行うとしている。

株主提案などの場合、後日、株主総会決議取消訴訟や決議不存在確認訴訟等が提起され、決議の有効性が争われることがあるため、そのような事態に備えるため、裁判所に検査役の選任を申し立てることがある。

会社法第306条
① 株式会社又は総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。


議案は次の通りで、株主提案の第2号、第3号議案には会社側は反対している。

第1号議案(会社提案) 戦略的再編の検討を進めることに関する株主の皆様のご意見確認の件

今回の戦略的再編の検討を進めることについて株主の意見を確認することを目的としており、法的拘束力を有するものではない。本議案の決議要件は普通決議(過半数の賛成で可決)とする。

戦略的再編の実施について法的拘束力のある株主総会決議については、再編の内容を最終的に確定させたうえで、別途、2023年に開催する株主総会に上程する

しかし、過半数の賛成を得られるかどうかは不透明で、仮に過半数の賛成が得られなければ、計画は見直しを迫られる。綱川智社長は14日の会見で、否決の場合は「会社分割の内容を修正するか、まったく別の選択肢にするか再度検討する」と話した。


第2号議案(株主提案) 
定款一部変更の件(定款変更は「特別決議」事項で、可決には3分の2以上の賛成が必要)

以下の章を新設

第6章 戦略的再編の実施

32 当会社は、2021625日に設置された戦略委員会が策定し、取締役会が承認した戦略的再編について、会社法その他の適用法令の要請に従って、取締役会が決定した方法により、取締役会が決定した時期に実施することとする。20211112日に当会社が公表した当社グループを 3つの独立した会社とする戦略的再編は本条の適用を受ける戦略的再編に該当する。

会社側は次の理由でこれに反対している。

・後日法的拘束力のある決議を得る予定であること: 現時点においては、本戦略的再編に関する法的拘束力のある決議を行うことは適切でない

定款に馴染まないこと

極めて異例な提案であること-提案者ですら反対していること:提案者は、自らは反対の議決権行使をする意向を示している。

3D Investment Value Master Fundは、「莫大な経費が必要な3社分割案は、臨時株主総会における3分の2以上の株主の賛成を得ずして、推進すべきではありません」とし、「この議案に反対する」が、「すべての株主が、東芝が3社分割案を真に進めるべきかについて、投票を行う機会を得るべきであるため、今回の株主提案に至った」としている。

付記 第2号議案については、東芝は当該株主から撤回する旨の書面を2月21日付受領した。


第3号議案
(株主提案)  戦略委員会及び取締役会における戦略の再検討の件

すべての企業価値向上策既に推奨されている戦略的再編と比較・評価するため、検討手続を継続する。

(i)非公開化又はマイノリティ出資に関して積極的に検討を行い、
(ii)べての検討内容、受領した提案及び検討結果の詳細を株主に対して定期的に報告する

3D Investment Value Master Fundは「3分割案」(「2分割案」も同様と思われる)に反対している。

「東芝は、東芝の全部又は一部の事業の売却に関する提案を募集しませんでした。また、潜在的な戦略的買収者と協議することはありませんでした。更に、大規模なマイノリティ出資に関するPEファンドとの協議についても、十分に行うことなく打ち切りました」とし、非公開化又はマイノリティ出資等に関して積極的に検討を行うことを求めている。

2021年4月7日に英投資ファンドのCVC Capital Partnersが買収を提案したが、東芝は4月20日、買収交渉の中断を発表した。

2021/4/14 英投資ファンド、東芝に買収提案


会社側は次の理由でこれに反対している。

会社は本戦略的再編が最善の方策であると考えていること

他の戦略的選択肢を排除していないものの、このような選択肢をどの程度検討するかは経営判断に委ねられていること

情報の全面開示は当社及び株主の利益に反する


なお、会社側は非公開化、マイノリティ出資に関しても、これまで検討を行っており、11月の「3分割案」発表時に説明を行っている。

https://www.global.toshiba/jp/news/corporate/2021/11/news-20211112-06.html


「物言う株主」は、所有株を高く売ることが目的である。

上述のCVC Capital Partnersの買収提案では、前日の終値に約30%のプレミアムを加えるものであった。

1株5000円での購入で、前日の時価総額 1兆7437億円に対し、2兆3,000億円弱での購入となる。数日後に株価はこれに近いところまで上昇した。
しかし、3分割発表、2分割発表で、株価は上昇していない。

株価が大幅に上がる案でないと、物言う株主の賛成を得るのは難しいだろう。

コメントする

月別 アーカイブ