3月24日の東芝の臨時株主総会で、会社を2分割にするという会社提案は反対多数で否決された。
「物言う株主」から出された会社の非上場化も含めてあらゆる選択肢を検討するよう求める案についても議論され、この提案も否決された。(経緯、議題は後記)
付記
会社側提案 賛成 39.53%、反対 59.69%
株主提案 賛成 44.60%、反対 54.84%
2分割案については、「物言う株主」として知られる海外ファンドが相次いで反対を表明していたほか、株主に議決権行使についてアドバイスを行う Institutional Shareholder Services や Glass、Lewis&Co. も反対を推奨していた。
今回の会社側提案は「株主の皆様のご意見確認」であり、議決に法的拘束力はないが、会社側は事業方針の見直しを迫られる形となり、経営が一層混乱することになる。
3月1日に就任した東芝の島田太郎社長は臨時株主総会で2分割計画推進の議案の否決を受け、「企業価値向上のためあらゆる選択肢の検討を行う」と述べた。
「物言う株主」は、所有株を高く売ることが目的である。
東芝はWestinghouseの損失で債務超過となり、2018年3月末までにそれを解消しなければ上場廃止となる。東芝メモリを売却したが、各国の独禁当局の承認が遅れ、売却益計上ができない。
このため、東芝は2017年11月の取締役会で、第三者割当による新株式の発行を決めた。旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールのEffissimo Capital Management や米King Street Capital Managementなど、Goldman Sachs が集めた海外約60社の投資家に割り当てた。
このほとんどは、東芝株を長期に保管する考えはなく、早期に高く売る抜けることが狙いである。
東芝が「2分割」や「3分割」を行っても、急速に株価が高騰することは望めない。このため、会社提案の第1号議案を否決した。
可能性のあるのは、東芝の丸ごと売却である。第3号議案にある「非公開化」である。
東芝は2021年4月7日に英投資ファンドのCVC Capital Partnersから買収を提案された。
CVCは前日6日終値に約30%のプレミアムを加え、1株5000円での買い取り価格を提案した。6日時点の東芝の時価総額は1兆7437億円で、TOBが成立した場合の買収額は2兆3,000億円弱となる。
4月14日付で車谷社長兼CEOが辞任した。
社内での車谷社長に対する不信任は半数を超えたという。
CVCによる買収は車谷氏が持ちかけたとみられ、永山治・取締役会議長 兼 指名委員会委員長(中外製薬名誉会長)らは、こうした動きを「私物化」と判断し、取締役会には解任動議を提出する予定だったとされる。
東芝は4月20日、CVCからの新たな書面になんら具体的な詳細情報が記載されていないとして買収交渉の中断を発表した。
その後、CVCとの交渉は中断されているが、同社や他社との売却案が検討課題となる。
社内の体制も問題である。
3月1日に2人しかいない社内取締役である綱川社長、畑澤副社長を退任し(取締役は留任)、新たに社内から3人の代表執行役(いずれも取締役ではない)を選任した。
しかし、3人の選任は暫定とされており、本年6月開催予定の定時株主総会に付議する取締役候補者の選任案については追って決定することとなっている。
この大混乱を終息する体制がつくれるであろうか。
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東芝は2021年11月12日、事業をスピンオフし、3つの独立会社とする方針を決定した。
インフラサービス Co. とデバイス Co. をスピンオフし、残る東芝は事業は営まず、キオクシアと東芝テックの株式を保有するというものであった。
東芝は、「モノ言う株主」から3分割案に反対意見が出るなか、2022年2月7日に「会社を3つに分割する」という方針を一転して見直し、半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とすると発表した。
2022/2/8 東芝 「3分割」を「2分割」に見直し
東芝は2月14日、分割案について株主の意向を確認するための株主総会を3月24日に開催すると発表した。
2分割案に対する株主の意向確認に加え、株主の3D Investment Value Master Fundからの株主提案(第3号議案)も付議する。 同じ株主提案の第2号議案は、株主が撤回したため、議題から削除した。
第1号議案(会社提案) 戦略的再編の検討を進めること(2分割案)に関する株主の皆様のご意見確認の件
第2号議案(株主提案) 定款一部変更の件 → 株主が撤回し、議題から削除
第3号議案(株主提案) 戦略委員会及び取締役会における戦略の再検討の件
(i)非公開化又はマイノリティ出資に関して積極的に検討を行い、
(ii)すべての検討内容、受領した提案及び検討結果の詳細を株主に対して定期的に報告する2022/2/15 東芝、分割案について株主の意向を確認するための株主総会を開催
東芝は3月1日、同日付での代表執行役の異動を発表した。
2人しかいない社内取締役である綱川社長、畑澤副社長を退任し(取締役は留任)、新たに社内から3人の代表執行役(いずれも取締役ではない)を選任した。
総会議長を務めた 島田新社長は、会社全体を2つに分割する改革案について「予定通り進捗する」としつつ、「全てのステークホルダーの意見を受け止め、全てのオプションを検討したい」と述べた。
2022/3/2 東芝、綱川社長が退任
東芝の社外取締役のGeorge Zage Ⅲは3月17日、会社側が反対している第3号議案に賛成すると表明した。株主の一人として賛成票を投じるという。
非上場化を検討することで、「株主に追加情報を提供できる可能性がある」としている。会社2分割計画への賛否は示さなかった。
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