ウクライナ、EU加盟申請書に署名、即時加盟を求める

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ウクライナのゼレンスキー大統領は2月28日、EUに正式に加盟申請した。通常手続きでなく、「新たな特別手続きによる即時加盟を求める」と訴えた。


ウクライナの南西に隣接する旧ソ連のモルドバのサンドゥ大統領は3月3日、 EU加盟を正式に申請する文書に署名した。
同じく旧ソ連のジョージアのガリバシビリ首相も同日、EUへの加盟を正式に申請した。

ロシアは強く反発している。

ウクライナ、モルドバ、グルジア(現 ジョージア)は2014年に南部クリミア半島をロシアに併合された直後に、EUとの貿易自由化を含む関係強化に向けた 「連合協定」に署名したが、正式にEUに加盟申請するのはこれが初めて。

EUは2014年6月27日、ウクライナ、モルドバ、グルジア(現 ジョージア)の3ヵ国と高度かつ包括的な自由貿易圏(DCFTADeep and Comprehensive Free Trade Areas)の構築を含む連合協定を調印した。

「連合協定」は、EUと非EU諸国との間の政治、貿易、社会、文化、安全保障上の結びつきを強める協定。
DCFTAは連合協定の一部として、関税障壁撤廃というFTA本来の課題に加えて、双方間の貿易経済活動にEUのルールを浸透させてヒト・モノ・カネの動きを活発化させようとするもの。

ゼレンスキー大統領は2月28日、EUのフォンデアライエン委員長と電話で会談したことを明らかにし、以前から希望しているEU加盟を重ねて求めた。

EUのフォンデアライエン委員長は27日、「いずれ、ウクライナはわれわれの一員となる。彼らに加わってほしい」などと述べ、加盟を支持すると受け取ることができる発言をした。

但し、EUの報道官は、「委員長の発言は、ウクライナがヨーロッパの国だという意味だ。委員長はあわせて、加盟には手続きがあるとも述べていて、これが重要なポイントだ」と強調し、実際の加盟までには時間がかかることを示唆した。

EUへの加盟にあたっては、全加盟国の承認が必要な上、法の支配や汚職の撤廃、経済の安定などの条件を満たさなければならず、加盟交渉には数年かかるのが一般的。

スロバキア、スロベニア、チェコの首脳陣は、ウクライナが速やかにEUに加盟できるような「まったく新しい道筋」をEUに作るよう求めているが、EU側は 消極的である。

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ウクライナのNATO加盟阻止が今回のロシアによる軍事進攻の口実である。

ウクライナ最高会議は1990年7月に「主権宣言」を採択したが、「対外安全保障」の項は次の通り であった。

「将来において恒久的に中立国家となり、軍事ブロックに加わらず、非核三原則――核兵器を受け入れず、使用せず、保持しないという自らの意向を厳に宣言する」。

ドイツの東西統合(1990年)に際し、NATOを統合ドイツより東に拡大しないという口頭の約束があったが、西側は順次東方に拡大、ロシアの隣国で、ロシアにとって特別な国であるウクライナの加盟を否定しなかった。

2021/12/22 ロシアの安全保障条約草案 
2022/1/2   プーチン大統領の怒り

2019年2月、ウクライナの議会に当たる最高会議は、ポロシェンコ大統領(当時)が提出したEUとNATOへのウクライナの加盟路線をウクライナ憲法に明記する憲法改正法案を可決した。

NATOについては、西側は建前として参加を求める国の要請は拒否しないとするが、北大西洋条約の第5条で、締約国に対する武力攻撃を「全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する」と定めており、ロシアとの全面戦争になりかねないため、NATOは簡単には ウクライナの参加を認めないと思われる。

このため、ウクライナのゼレンスキー大統領はまず、EUへの加盟を求めたもの。


現在、EUに加盟しているのは27カ国で、東方への拡大に向け一部のバルカン諸国と加盟交渉を進めているが、西欧の慎重姿勢もあって協議は停滞している。最後に加盟したのは2013年のクロアチアが最後で、新規加盟は8年以上ない。

2007/1/5 EU 加盟国、27カ国に  → 28か国 (2013/7/1) → 27か国(2020年英国離脱)

加盟交渉はバルカンのモンテネグロとセルビアと始めており、コソボとボスニア・ヘルツェゴビナを潜在候補国と位置づける。

トルコとの加盟交渉は、キプロス問題やトルコの司法制度が依然として西欧法治国家の水準に達していないことなどから事実上停止している。

2020年3月にアルバニアと北マケドニアとEU加盟に向けた交渉に入ることで合意した。欧州委は2018年に交渉入りを加盟国に勧告したが、フランスやオランダ、デンマークが難色を示していた。

欧州委は交渉国について、「法の支配」「市場経済」などの分野でEU基準を満たすための改革が進んでいるかを年ごとに評価し、各国に報告する。

ウクライナについては、もしウクライナをEUに入れた場合、EUの一部がロシアに侵略されたことになり、ロシアに対し直接対応せざるを得なくなる。

また、ウクライナ(とモルドバ、ジョージア)を加盟審査を経ずに早期の加盟を認めるのは問題である。

欧州委は「法の支配」「市場経済」などの分野でEU基準を満たすかどうかを重視する。

EUは加盟国のうちで法の支配の後退が目立つハンガリーとポーランドに資金提供を禁止した。

2022/2/18 欧州司法裁、「法の支配」違反国へのEU資金停止を合法と判決

加盟国についてさえ、EU基準を守らない国に制裁をしているなかで、例外的にウクライナ等の早期のEU加盟を認めると、長年交渉を続けている他の候補国をどうするかが問題になる。

1987年に加盟申請を行ったが棚上げされているトルコのエルドアン大統領は早速、3月1日に同国のEU加盟手続きについて、ウクライナと同様に扱うよう求めた。トルコがNATO加盟国であることも付言している。

仮にEUの基準を満たしていない参加希望国をすべて加盟させた場合、その後のEUの運営は混乱すると思われる。

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