シャープ、堺ディスプレイプロダクトを完全子会社化

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シャープは3月4日、テレビ用の大型液晶パネルを生産する「堺ディスプレイプロダクト」について、現在80%を保有する海外ファンド World Praise Limitedから全株式を取得することで合意したと発表した。

シャープの経営危機時に手放したものを買い戻すもので、パネル調達を安定させて北米向けなどの販売を拡大する。

シャープは約3845万株の新株を発行、堺ディスプレイ 1株に対してシャープ株11.45株を割り当てる株式交換を実施する。実施日は未定。

同社は2021年2月15日には所有する全株式の売却を決定し、3月15日に実施すると発表していたが、売却を予定していた相手先から中止を申し込まれ、3月12日に売却断念を発表した。

堺ディスプレイプロダクトの20%を保有するが、2022年2月18日に今回の取得の協議を開始したと発表している。

今回、シャープの戴正呉会長兼CEOは昨今の国際情勢や大型パネル市場の動向などを踏まえて完全子会社化を判断したとしている。

同社は次のように説明している。

「テレビ事業及び業務用ディスプレイ事業においてグローバルレベルの事業拡大に取り組む上で、コスト構造上大きな割合を占める高品位パネルの安定的且つ優位性のある調達が極めて重要である」

「現在、大型液晶パネル市場において高いシェアを占める中国が米中貿易摩擦の最中にあることから、中国以外にある唯一の第10世代(マザーガラス2,880mm×3,130mm)以上の大型液晶パネル工場である堺ディスプレイプロダクトPは、米州市場向けのパネル供給において優位性が期待できる」

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シャープは2007年7月、新たに大阪府堺市に最先端の液晶パネル工場と、薄膜太陽電池を量産する太陽電池工場を併設することを決定したと発表した。

主な生産品目:40型・50型・60型クラスの大型テレビ用液晶パネル
 ・マザーガラスサイズ:2,850mm x 3,050mm(第10世代)
  (60型クラスのパネルが6枚、50型クラスは8枚、40型クラスは15枚取れる)
 ・投入能力:月72,000枚(稼動当初は月36,000枚)

液晶パネル工場は2009年10月に稼働した。太陽電池工場はその後、シャープ本体の「グリーンフロント堺」の愛称で事業を行っている。

凸版印刷と大日本印刷は同地にカラーフィルターの工場を建設した。

2007/12/5  シャープの「21世紀型コンビナート」

2009年4月にシャープとソニーは、この液晶パネル工場を分社化し、大型液晶パネル・モジュールの生産および販売を行う合弁会社シャープディスプレイプロダクトを設立した。

会社名称 シャープディスプレイプロダクト
設立日 2009年4月1日
稼動開始 2009年10月
出資比率 最終 シャープ66%、ソニー34% (当初 ソニー 7.04%)
事業 大型テレビ用液晶パネル・モジュールの生産およびシャープ、ソニーへの販売
生産能力 72,000枚/月(稼動当初は36,000枚/月)(マザーガラス投入ベース)

2009年12月29日、ソニーはシャープディスプレイプロダクトの増資を引き受け、7.04%を100億円で取得した。
ソニーは堺工場で生産されるパネルの7%にあたる55万台分(40型換算)を購入する。

2011年4月末までに最大34%まで引き上げられ、その時点で265万台分がソニーに供給されることとなっていた。

しかし液晶パネルの調達環境をめぐる変化を背景に、両社は2011年4月、ソニーの追加出資を先送りにした。

シャープは2012年3月27日、電子機器の受託製造サービスの世界最大手の鴻海グループ(Hon Hai) と戦略的グローバル・パートナーシップを構築すると発表した。

鴻海グループのシャープの第三者割当増資 9.88% 669億円
これは中止となり、その後2016年3月30日に鴻海は取締役会でシャープ買収を決めた。鴻海グループでシャープの3888億円の第三者割当増資を引き受け、議決権の66%を得た。

シャープディスプレイプロダクトを「ワンカンパニー」として共同で事業運営 シャープ 46.48%、董事長 46.48%、ソニー 7.04%

シャープとソニーは2012年3月28日、ソニーの追加出資を行なわないことで合意し、2012年5月24日にシャープディスプレイプロダクトについて、6月末までにソニーが保有する株式(出資比率:7.04%)すべてを譲渡し、両社の合弁を解消すると発表した。対価として、ソニーの出資時と同額の100億円が全額現金で支払われる。

また、シャープと凸版印刷、大日本印刷は2012年5月24日、凸版、大日本の堺工場における液晶カラーフィルター事業をシャープディスプレイプロダクトに吸収分割の方式により承継させることを決めた。

これらの結果、シャープディスプレイプロダクトの出資比率は以下の通りとなった。(吸収分割で株式発行)

シャープ 37.61%
郭台銘 37.61SIO International Holdings Limited)
凸版印刷 9.54
大日本印刷 9.54
自己株式 5.70 (ソニーから買収分 旧 7.04%相当)

2012年7月17日付で社名を「堺ディスプレイプロダクト」に変更した。

2016年12月28日、シャープが持ち株 436千株を 17,170 百万円で郭台銘氏の投資会社に譲渡した。

シャープディスプレイプロダクトの出資関係は次の通りとなった。

郭台銘 53.05%
シャープ  26.71%
凸版印刷 9.54%
大日本印刷 9.54%

その後、2019年6月に、シャープがテレビ向けの大型液晶パネルを生産する運営会社 堺ディスプレイプロダクトを子会社化する検討を始めたと報じられた。

2019/6/19 シャープ、堺の液晶パネル工場の子会社化検討

しかし、これは進展はなく、株主の異動についても全く報道されていない。今回、代表取締役がWorld Praise Limited邱啓華氏と発表されたが、これも初めてと見られる。

但し、情報として郭台銘氏の保有株が個人の都合により譲渡されたとの記事があった。

2022年2月18日、シャープは「堺ディスプレイプロダクトの子会社化(復帰)に向けた協議開始」の発表を行った。

現時点の出資が、シャープ 20.00%、World Praise Limited 80.00%で、シャープの子会社として復帰させることを目的として、World Praise Limitedから株式を取得することにつき協議することを確認したとした。

郭台銘氏 がWorld Praise Limited売却し、その時に凸版印刷、大日本印刷、およびシャープ(6.71%分)も合わせて売却したと見られる。

そして、3月4日に契約締結を発表した。

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World Praise Limited については詳細は不明である。判明事項は次の通り。

所在地:サモア島(Tax Havenと見られる。)
組成日:2001/3/8
組成目的:
Investment Holding
大株主:
Yau Leroy(邱啓華)83.08%   現 堺ディスプレイプロダクト代表取締役

Yau Leroy(邱啓華)は台湾人で、コンサルタント事業の Everiii のexecutive directorで、グローバル志向の企業家を養成し最も革新的な台湾スタートアップを世界に展開することを目標とする Taiwan Startup Stadium (台灣新創競技場)の共同設立者でCEOを務める。

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