「歯生え薬」の安全性試験実施

| コメント(0)

京都大学発スタートアップのトレジェムバイオファーマは3月8日、第三者割当増資で4億5000万円を調達したと発表した。

出資したのは、京都大学イノベーションキャピタル、Astellas Venture Management、新日本科学の創薬支援子会社Gemseki、フューチャーベンチャーキャピタル、京信ソーシャルキャピタル、京都市スタートアップ支援 2 号ファンド

今回の資金調達により、「歯生え薬」の開発に向け、臨床試験(治験)の前段階の安全性試験に乗り出す。

ーーー

歯の再生を促す新規医薬品を開発する歯科領域の創薬ベンチャー、トレジェムバイオファーマ(Toregem BioPharma)は2020年5月12日に設立された。
Toregemの社名は Tooth Regeneration Medicine(歯の再生薬)から採った。

京都大学医学研究科口腔外科学分野の高橋克准教授が、永久歯の次に生える歯(第3生歯)を成長させることによって歯の再生の実現が可能なことを発見した。
一般的な歯の治療法である義歯やインプラントの人工歯に対し、自己歯の再生が根治的な治療法と成り得る可能性がある。

ヒトでは大臼歯が1生歯性(永久歯)、それ以外は2生歯性(乳歯+永久歯)で、歯数は厳密に制御されている。

実際には、乳歯と永久歯のあとに第3歯堤という歯の原器があるが、骨形成タンパク質(BMP)等の働きを阻害する拮抗分子USAG-1遺伝子の働きによって第3生歯は消失してしまう。

USAG-1遺伝子の欠損マウスでは、本来は退化消失するはずの痕跡的乳切歯が生き残った結果、過剰歯として萌出することが確認されている。

橋克准教授による長年の研究により、この拮抗分子USAG-1遺伝子を抑制する中和抗体siRNA2本鎖RNAが遺伝子の発現を抑えてしまうRNA干渉に関与するRNA)によって無歯症モデル動物で欠損歯が歯槽骨と共に回復することが分かった。

京都大学医学研究科口腔外科学分野の喜早(きそ)ほのか氏がCEOを務めるトレジェムでは、USAG-1中和抗体のヒト化に向けた開発を進めており(現在は前臨床開発段階)、中和抗体とsiRNAの化合物を新規医薬品として上市することを目指している。

2020/12/2 歯の再生を促す医薬品を開発する トレジェムバイオファーマ

トレジェムは USAG-1 中和抗体の実用化を目指しており、同抗体のヒト化に成功している。

トレジェムは今回の資金調達により、USAG-1 中和抗体の非臨床安全性試験と治験用製剤の製造準備を進める。

根本的な治療手段がない先天性無歯症患者を第一適応症の候補として USAG-1 抗体の開発を行う。

さらに、USAG-1 中和抗体は永久歯の後の第三生歯を発生させることを動物試験にて確認しており、この知見は、高齢者のオーラルフレイル(口腔内の虚弱)の改善に貢献し得ると考えている。


今回、2億円を引き受けた京都
イノベーションキャピタル は、京都大学 100%出資子会社として、京都大学を中心とした国立大学から生まれた研究成果を活用するベンチャー企業を対象に投資やその他の事業支援を行っている。

現在、総額160億円のKYOTOiCAP 1 号ファンドと総 180 億円の KYOTOiCAP 2 号ファンド(2021 1 月設立)を運営している。

コメントする

月別 アーカイブ