ロシアのウクライナ侵攻でパラジウム危機、自動車業界に大きな影響

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日本は、多くのレアメタルで90%以上を輸入に頼っているが、中でもパラジウムは全輸入量の40%をロシア産が占め、ニッケルも21%、プラチナは10%がロシアからの輸入である。

西側諸国による対ロシア制裁により世界的なレアメタルの供給不足、価格上昇が進むと予想され、特に日本の自動車産業は大打撃を被る可能性がある。

ニッケル・パラジウムの生産で世界最大手、プラチナ・コバルト・銅・ロジウムの生産で世界大手のロシアのNorilsk Nickelは、欧州空域の大半がロシアからのフライトに対し閉鎖されたことから、製品の供給途絶に直面している。但し、中国などの第三国を経由して世界に供給される可能性はある。逆にロシアが制裁への報復として輸出をとめる可能性もある。


パラジウムは、白金族金属(ルテニウム、ロジウムパラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ)の1つで、ロジウムとともに、自動車産業や燃料電池には不可欠なレアメタルである。

自動車においては、有害な排ガスを浄化・無害化する触媒の基幹材料として使われる。

ロジウムは、酸性雨の原因となるNOx(窒素酸化物)をN2(窒素)に還元し、プラチナとパラジウムは炭化水素を無害な水に、一酸化炭素を二酸化炭素に酸化して、クリーンなガスに変えて排出する。 ディーゼル車の浄化触媒装置には主にプラチナが、ガソリン車のそれにはパラジウムが使われている。

現行の技術では、排ガス浄化触媒として白金族金属を使用しないと、排ガス規制をクリアできない。


パラジウムは、触媒材料としてだけでなく、電極材料や歯科材料としても使われる。金(や銀)とパラジウムの合金は、耐食性、強度、延性が高いため、歯科材料としては重要な材料の1つである。

若干古いデータだが2012年のデータを示す。

1)鉱石生産シェア

ロシア 南ア 北米 その他
プラチナ 13% 69% 5% 13%
パラジウム 44% 36% 14% 7%
ロジウム 13% 80% 3% 4%


ロシアの白金族元素の大半は、ノリリスクのニッケル・銅鉱床から産出する。

2) 用途

自動車排ガス浄化 宝飾品 電子材料 その他
プラチナ 38% 34% 28%
パラジウム 67% 12% 21%
ロジウム 80% 20%

上記2つは、日経XTECH 「ウクライナ問題で「パラジウムショック」再び 露の供給に不安」より

3)企業別生産内訳

プラチナ パラジウム
MMC Norilsk Nickel ロシア 13% 45%
Anglo American Platinum 南ア 47% 44.5%
Impala Platinum 南ア 16% 10%
Lonmin 南ア 13% 5%
その他 11% 4.5%

    ソース:JOGMEC 白金族金属(PGM)のマテリアルフロー --安定供給上の課題--

白金族元素の生産はロシアと南アが大部分を占める。南アはこれまで、しばしば鉱山ストライキを起こしており、供給は不安定である。


パラジウムの価格推移は下記の通りで、最近急騰している。


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