住友金属鉱山は4月25日、インドネシア共和国Southeast Sulawesi Province州Kolaka市Pomalaa地区でのニッケル製錬所建設(Pomalaa Project)の事業化検討を進めてきたが、これを中止すると発表した。
2012 年に PT Vale Indonesiaと共同でPre-Feasibility Studyを開始し、2018 年からは 最終的な事業化調査を進めてきた 。
PT Vale Indonesiaの株主は、Vale Canada Limited 43.79%、国営PT Indonesia Asahan Aluminium(Inalum) 20.00%、住友金属鉱山 15.03%、その他 21.18%
Inalum は2020年10月に主要各株主から譲渡を受けた。2020/6/25 住友金属鉱山、インドネシアのニッケル事業会社の株式の一部を売却
新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、 許認可の取得手続きが難航、更に、ビジネスを早期に収益化するため迅速な建設や予算削減を求めるVale Indonesiaと、工期や採算の調整を慎重に進めたい住友金属鉱山で方向性の相違が生じ、Valeが第三者との協業の検討を始めたため、検討を中止せざるを得ないとの判断に至った。
住友金属鉱山の2021年の中期経営計画では、長期ビジョンとして「世界の非鉄リーダーを目指す」とし、ターゲットとして、ニッケル生産量15万トン/年としている。
また、大型プロジェクトの推進として、電池材料(正極材)生産能力増強とこのPomalaaニッケル精錬プロジェクトを挙げている。
(他にチリ銅鉱山:Quebrada Blanca Phase2 とカナダのCôté金開発プロジェクト)
ニッケル、コバルトは車載用二次電池の正極材に使用される。
ニッケル精錬に関しては、同社は世界に先駆け高圧硫酸浸出法(High Pressure Acid Leach:HPAL)実用化に成功した。従来は製錬の対象とならない低品位のニッケル酸化鉱から、ニッケルやコバルトといったメタルを回収できるプロセスで、未利用資源の有効活用という側面からも注目されている。
ニッケル鉱石は、フィリピンとインドネシアが2大産出国で、有力鉱山はアジアを中心に分布してい るが、地球上に存在するニッケル資源の多くは低品位酸化鉱と呼ばれるニッケル含有量のきわめて少ない鉱石である。
現在、フィリピンのコーラルベイニッケルとタガニートHPALでは、MS(Mixed Sulfide)と呼ばれるニッケルとコバルトの混合硫化物を生産、これを原料として日本のニッケル工場と播磨事業所で製錬を行ない、電気ニッケルや電気コバルト、硫酸ニッケルなどを製造し、正極材にしている。
鉱山 HPAL 能力
(千トン)出資
鉱山所有 住友金属鉱山 三井物産 双日 Nickel Asia Rio Tuba鉱山 Coral Bay Nickel 30→36 54% 18% 18% 10% Nickel Asia 60% Taganito鉱山 Taganito HPAL 20 62.5%→75% 15.0% 22.5%→10% Nickel Asia 65% Sulawesi 島 Pomalaa 40
Nickel Asiaはフィリピン最大手のニッケル鉱山会社 で、住友金属鉱山は2009年8月に16.5%出資、同年12月に25%に増やした。2009/8/22 住友金属鉱山、比最大手ニッケル鉱山会社の株式を取得
住友金属鉱山では、Pomalaaプロジェクトを長期ビジョンの1つである「ニッケル 15万トン体制」の実現に向けたニッケル資源戦略の中心に据えていた。
同社では、この結果は遺憾だが、中期経営計画に掲げた「事業連携(ニッケル-電池)のバリューチェーン強化」ならびに製品の安定供給に向け、今後も資源の安定確保に努めていくとしている。
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