米議会は4月7日、ロシアと、侵攻に協力したベラルーシに対し、世界貿易機関(WTO)ルールに基づく「最恵国待遇(MFN)」を取り消す法案と、ロシア産原油の輸入禁止法案を可決した。
米議会下院は3月17日、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアと、侵攻に協力したベラルーシの製品に高い関税を課す制裁法案(Suspending Normal Trade Relations with Russia and Belarus Act)を賛成多数で可決した。
但し、この法案にはGlobal Human Rights Act の人権条項が折り込まれているのが問題となった。人権侵害の外国人(any foreign person)への制裁で、ロシアとベラルーシ以外の外国人も全て対象となる。
下院では民主党と共和党がことごとく鋭く対立するなかで、両党が賛成したが、共和党議員8人 のみ反対した。
反対した共和党議員8人も、正常貿易関係の断絶には同意するが、法案に含まれた人権関連制裁条項が、大統領に過度な権限を与えるとして反対票を投じた。
Andy Biggs 議員は、大統領がこの条項を「中絶の権利の反対者」を罰することに利用することを懸念すると述べた。
上院では民主党のシューマー院内総務は、ウクライナ政府を支援するため、全会一致での早期可決を呼び掛けたが、人権を巡る条項について、範囲が広すぎるとの懸念が一部の共和党議員の間で浮上し、議決できないでいた。
ロシア産原油の輸入禁止法案についても下院は3月10日に可決しているが、上院はまだ可決していなかった。しかし、バイデン大統領は3月8日に、追加経済制裁としてロシア産の原油やLNG、石炭などの輸入を禁止する大統領令に署名し、即日発効しているため、支障はない。
2022/3/30 米上院、 対ロシア制裁法案の審議遅れ
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今回、ロシアとベラルーシの最恵国待遇を取り消す法案については、Global Magnitsky Human Rights Accountability Actの名で知られる法律で対象となる人権侵害を" gross human rights violations(重大な人権侵害)"から "serious human rights abuse(深刻な人権侵害)" に修正し、対象となる人権侵害の範囲を狭くすることで折り合いがついた。
法案によると、成立の翌日以降、ロシアとベラルーシからの輸入に対して、米国の品目別関税率表のコラム2に記載の関税率が適用されることになる。
(コラム2とは、米国が正常貿易関係を与えていない国に対する関税率を記したもので、これまではキューバと北朝鮮のみが対象となっていた。)
法案は大統領に対して2024年1月1日まで、コラム2記載の関税率を引き上げる権限を与えている。ロシアの主要な輸出品目の天然資源については、コラム2の関税率が低い場合も多いため、そのままでは制裁の意味をなさないとの認識から加えられた。
ロシア産原油の輸入禁止法案は、既に大統領令で実施されているものを法制化するものである。
上院は両法案について100 対 0 の賛成で通し、下院に再送付した。
下院では前者については420対3、後者については413対9の賛成多数で可決した。
近くバイデン大統領の署名を経て成立する。
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