ポーランドの国営ガス会社PGNiGは4月26日、ロシア国営Gazpromから天然ガス供給を4月27日から停止するとの通知を受けたと発表した。詳細な理由は明らかになっていないが、ポーランドがガス購入でルーブル決済を拒否し、ロシアが圧力を強めた可能性がある。
また、ポーランド内務省は4月26日、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)や、Gazpromを含めたロシア企業50社を対象に制裁を科すと発表した。資産凍結や、ポーランドへの入国禁止などが含まれる。この制裁とロシア産天然ガスの供給停止が関係あるかは不明。
付記 報道(5/5 BSフジ・プライムニュース)によると、ポーランド側が自らベラルーシからのパイプラインを閉めて、ロシア天然ガスの購入を停止したとのこと。
付記
Gazpromは5月12日、ポーランドなどを経由するパイプラインYamal Europeを通じた天然ガスの供給を止めると明らかにした。
ロシア政府が5月11日に発表した制裁対象に、パイプラインの一部を所有するポーランド企業EuRoPol GAZが含まれていたため。
Gazpromは、「制裁対象者の利益となる取引や支払いが禁止された。Gazpromの場合はEuRoPol GAZが所有するガスパイプラインの使用が禁止される」と説明した。
ポーランドはベラルーシ経由のYamal Europeパイプラインでガスプロムからガスを輸入してきた。
なお、ウクライナを経由するパイプラインは現在も稼働しており、ウクライナも天然ガスを購入し続けているとされる。
Nordstream 2 は完成したが、認可をうけておらず、稼働していない。
2021/11/13
ポーランド政府は、一定のガス貯蔵量を確保しているほか、他国からの液化天然ガス(LNG)などの代替手段もあるため、国内供給は「安定している」としている。ただ、これまでロシア産ガスは国内消費の約5割を占めており、今後、産業用などの利用制限が必要となってくる可能性もある。
ロイター通信によると、ブルガリアも同様に4月27日からのガス供給停止を通知された。
ブルガリアのエネルギー省は4月26日、ロシアからのガス供給停止に対し「状況に対応するための措置を講じた」と主張した。同国ではこれまでガス輸入の約9割をロシアに頼ってきた。
ブルガリアはTurkStream pipelineを経由してロシアの天然ガスを購入している。
2020/1/10 トルコストリーム開通
ウクライナ侵攻後では、ロシアが天然ガス供給を停止するのは初めてで、経済制裁などを強める欧州に揺さぶりをかける狙いがありそうだ。
ロシアのプーチン大統領は3月23日、非友好的と指定した国がロシアから天然ガスを購入する際には通貨ルーブルでの支払いしか認めない方針を示した。
欧州などの取引企業がガスを買う場合、国営ガス会社Gazprom傘下のGazprombank にユーロなどの外貨建てとルーブル建ての両方の決済口座を開設する必要がある。Gazprom は4月1日、需要家に指示した。
Gazprombankは口座に振り込まれた外貨を市場で売却し、ルーブルを買い入れる。その後、同行が取引企業の口座からルーブル建てで代金をGazpromに送金する仕組みをつくる。
2022/4/4 ロシア、天然ガス代のルーブル払い義務化
欧州連合(EU)の欧州委員会は契約でドルやユーロでの支払いを規定している場合は応じるべきではないとの見解を示しており、ポーランドはルーブル決済を拒否している。
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ロシア案の仕組みであれば、買い手は契約通りのユーロで支払ったと言え、売り手のGazpromはルーブルで支払いを受けたと言うことができる。
買い手が直接ルーブルで払う場合は各国の市中で多額のルーブルを入手するのは困難だが、この場合は問題ない。
欧州委員会は、代金の支払いのためルーブルを買い、Gazpromに支払うのは契約条件違反で、ロシア制裁にも違反するとしている。
しかし、上図の通りであれば自らルーブルを買う必要はない。Gazprombankにルーブル口座を設定すること自体(元の契約にはない)を拒否するということであろうか。
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