主要企業の2022年3月期決算  信越化学、営業利益 6,763億円

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各セグメントともに増収増益で、全社の営業損益が72%増の6,763億円、株主帰属損益で70%増 の5,001億円となった。

特に塩ビが中心の生活環境基盤の営業損益が2,182億円増 の3,178億円となり、前年比で3.2倍という脅威的な伸びである。
後述するが、第1四半期から第2四半期に営業利益が8割増となっている。

なお、海外子会社損益の連結には1-12月平均の為替レートを使っているが、2020年は106.18円、2021年は109.8円で、レート差だけでも 2.8%の利益増となる。

株主帰属利益は5000億円を超えた。年間配当は前年の250円を400円に増やす。

更に、 1000億円を上限とする自己株式の取得を行い、全てを消却する。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 株主帰属
当期損益

配当

中間 期末
2020/3 15,435 4,060 4,182 3,140 110 110
2021/3 14,969 3,922 4,051 2,937 110 140
2022/3 20,744 6,763 6,944 5,001 150 250
前年比 5,775 2,841 2,893 2,064 40 110
2023/3

未定


営業損益

今回、セグメントを変更した。(2021/3実績は新旧セグメントで表示)
2021/3の旧セグメントでの塩ビ・化成品と、新セグメントでの生活環境基盤がほぼ同額であるため、ほぼ同じとみなせる。

2022/3では、塩ビが中心の生活環境基盤が3.2倍と大増益となったほか、他のセグメントも増益となった。

2011/3 2018/3 2019/3 2020/3 2021/3 2021/3 2022/3 増減
塩ビ・化成品 197 932 1,065 922 970 生活環境基盤
(塩ビほか)
996 3,178 2,182
シリコーン 341 520 585 615 451 機能材料
(シリコーンほか)
707 948 241
機能性化学品 129 257 266 277 218
半導体シリコン 389 930 1,320 1,433 1,441 電子材料
(半導体シリコンほか)
2,061 2,448 387
電子・機能材料 361 616 670 685 702
その他 73 115 133 148 143 加工・商事 163 209 46
全社 3 -2 -3 -20 -3 -5 -19 -14
合計 1,492 3,368 4,037 4,060 3,922 3,922 6,763 2,841


生活環境基盤の大増益の理由

塩化ビニル、苛性ソーダともに、需要は堅調に推移し、米国シンテック社を初めとする全拠点でフル操業を行なった。

今回、Shintechの損益がまだ公表されていないが、2020年12月決算は経常損益が800億円弱であり、塩ビ・化成品の営業損益(970億円)の大半がShinechのものであることが分かる。

特に米国の住宅需要は旺盛で、PVCの国内需要が好調なほか、輸出も好調であ る


売価も、2021年平均(四半期平均)が2020年平均と比較し、国内が41%アップ、輸出価格は2.1倍となっている。
売価は上がり調子のため、増設分の寄与が後半に増えると売価差益は平均より増えることとなる。

勿論、原料価格も上昇している。自製VCMの原料エタンは53%アップした。塩素は地下の岩塩使用のため、電気代のアップのみ響く。
購入VCMは契約条件が不明だが、かなりアップしていると思われる。



今回の発表では、営業損益の四半期別推移から、2022年第2四半期(Shintechの下半期)に営業利益が急増(1.79倍)になっている。
ShintechのPVC増強による販売数量のアップ(徐々に増えていったとみられる)と価格上昇によると見られる。

ShintechではPVC増設第一期が2021年下半期に完成した。(赤字は発表文からの推定で、VCMは今回修正)

立地 PVC VCM

NaOH

エチレン
Texas州 Freeport  145   -   -
Louisiana州 Addis   58   -   -
Plaquemine   60   160  106
2013/6 増設 32 30 20
手直し 7 3
2020年初め 完成 50
Ⅰ 2021年下期 完成 29 40 27  
Ⅱ 2023年末 完成 38 58 39
今回増設後合計 362  295   195 50


PVCの増設は29万トン(これだけでも大きい)
だが、2022/1/27の説明会で、 実質40万トンの増になると、以下の説明をしている。

北米においては、昨年と比較すると、極めて高い値段から今年は出発するということ、それから (発表の図では2021年下期完成となっているが)2020年12月に稼働を開始した新工場が今年フルに(約40万トン)寄与します。全て売り切る自信があります。

新工場の塩ビの能力は29万 トン/年ですが、モノマーの方が大きい増設になっています。これまでモノマーが足りないマテリアルバランスで来ており、今回稼働したモノマーをフルに塩ビにできるため、(PVCは)約40万トンの数量が増えます。


なお、Shintechの第二期の新増設工事は計画通り進捗している。


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