インド太平洋経済枠組み(IPEF:Indo-Pacific Economic Framework)

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ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官は、5月22日からのバイデン大統領の日本訪問中に、岸田首相も同席して中国への対抗を念頭にしたIPEF(インド太平洋経済枠組み)の立ち上げを表明すると明らかにした。

東南アジアなどの国の首脳もオンラインで出席する。米国としては各国との連携をアピールする場にしたい考えとみられる。

「デジタル経済のルール作りや強固で強じんなサプライチェーンの確保、エネルギーの転換など、新たな経済の課題に立ち向かうためにデザインされた21世紀の新たな枠組みだ」と説明した。


IPEFは、(1)公平で強靭性のある貿易、(2)サプライチェーンの強靭性、(3)インフラ、脱炭素化、クリーンエネルギー、(4)税、反腐敗の4つの柱から構成される通商枠組み 。米国の輸入拡大につながる関税の引き下げは交渉しない、としている点が、TPPとは大きく異なる。通常の多国間協定とは違い、議会の承認は得ず、緩やかな連携を目指す。

米国は、各国が枠組みのすべてに賛同しなくても、参加したい分野だけを選んで参加できる珍しい仕組みも検討している 。

林外相は5月17日の会見で次のように述べた。

日本は、このインド太平洋経済枠組み(IPEF)を、米国のインド太平洋地域への積極的なコミットメントを示すものとして、歓迎をして いる。
同時に、米国によるインド太平洋地域の国際秩序への関与という戦略的な観点からは、米国のTPP復帰が「より望ましい」という我が国の立場、これは変わらない。

日本としては、自由で開かれたインド太平洋の実現という戦略的観点から、引き続き、この米国のTPP復帰を求めていくとともに、IPEFを通じても協力を推進し、米国を含む形での、地域の望ましい経済秩序の構築に向けて、日米で緊密に連携して取り組んでいきたい 。

インド太平洋地域にはTPPのほか、1月に発効した日中韓など15カ国による地域的な包括的経済連携(RCEP)といった大型自由貿易協定(FTA)が複数存在するが、いずれも「米国抜き」の枠組みで、中国はTPPへの加入を申請し、域内貿易の主導権を握るため先手を打っている。

政府関係者によると、IPEFへの参加がほぼ確定しているのは、米国のほか、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア、フィリピンの8か国とされる。

関税の引き下げは交渉しないため、米国の市場開放を通じて輸出を拡大したい東南アジア諸国の一部は、「参加をしてもあまりメリットがない上、アメリカの関与を嫌がる中国との関係が悪化するかもしれない」と懸念の声もあり、参加に慎重である。インドとインドネシアは条件が折り合わず参加に難色を示している。


付記 

バイデン米大統領は5月23日、新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の発足を表明した。日米と韓国、インドなど計13カ国を創設メンバーとし、中国に対抗してサプライチェーン(供給網)の再構築やデジタル貿易のルールづくりなどで連携する。

赤字がIPEFに参加する国:当初13カ国、青字が追加参加

ASEAN 東アジア 南アジア ANZ 旧NAFTA Mercosur その他 参加申請
RCEP TPP マレーシア 日本 豪州 カナダ ペルー 英国、
中国、台湾、
エクアドル
シンガポール NZ メキシコ チリ
ベトナム
ブルネイ
フィリッピン 韓国 米国 フィジー(5/26)
インドネシア 中国
タイ
ミャンマー
ラオス
カンボジャ
インド

付記

米国連邦上院議員52人が5月18日、バイデン大統領宛にインド太平洋経済枠組み(IPEF)の参加メンバーに台湾を含めることを要請する書簡を送付した。

しかし、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は5月22日、IPEF発足時に台湾は参加しないと明らかにした。バイデン政権も「一つの中国」政策を堅持しており、中国を除外して台湾の参加を認めれば、中国を過度に刺激しかねないと判断したとみられる。

補佐官は、「しかし、われわれは台湾と経済パートナーシップを深化させる考えだ。これにはハイテク、半導体、サプライチェーン(供給網)が含まれる」と述べた。


付記 インドも参加する。

Indo-Pacificという名前にもかかわらず、インドが参加しないのは米国にとって残念なことであろう。

インドは米国の対中包囲網のコアの一つである日米豪印のQuadのメンバーであるが、ロシアと中国との関係も深い。

中国、ロシア、中央アジア4カ国でつくる上海協力機構に2017年6月にパキスタンとともに正式に加盟した。中国とは国境紛争はあるが、両国首脳の関係は良好である。

2月25日に、ウクライナ問題でロシア軍の即時撤退を求める国連安保理事会の決議が当事者のロシアの拒否権で否決されたが、ロシアの拒否権に加え、中国、インド、UAEが棄権した。

インドはRCEPからも最終段階で離脱した。

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