中絶の権利擁護法案、米上院が動議否決

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米上院は5月11日、女性が人工妊娠中絶を選ぶ権利を保障する法案 (Women's Health Protection Act of 2022)について、採決に進むための動議を否決した。

最高裁が女性の中絶の権利を認めた1973年の判決 Roe v. Wade)を覆す可能性が高まったのを受け、民主党が州による中絶の禁止や大幅な制限を防ぐために同判決を成文化する法案の採決を目指していた。

2022/5/10 米最高裁の中絶権判例を覆す意見草案 

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共和党が知事の多くの州で妊娠中絶を禁止、制限する州法が制定されている。

米連邦最高裁は2021年9月1日、妊娠6週目以降の中絶を禁じたテキサス州の法律に対する差し止め請求を退け、同法は同日施行された。

バイデン政権は9月9日、妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を原則禁止するテキサス州法に異議を唱え、テキサス州西部地区連邦地方裁判所に同州を提訴した。

2021/9/14  バイデン米政権、中絶禁止法でテキサス州を提訴 

連邦最高裁は2021年10月10日、8対1で同法の効力を容認する判断を下した。同法の合憲性については判断を回避した。

2021/12/14 米最高裁、テキサス州の中絶禁止法の存続容認 

これを受け、民主党は2021年9月に妊娠中絶サービスを保護する法案Women's Health Protection Act を下院に提出、下院は2021年9月24日、賛成218 対 反対211でこれを通した。ほぼ党派に沿った投票結果で、民主党からはテキサス選出の1人だけが反対した。

しかし、上院では採決に進むのに60票の賛成が必要で、全く見通しが立たないため、付議されてこなかった。

今回、最高裁が女性の中絶の権利を認めた1973年の判決を覆す可能性が高まったのを受け、民主党が付議した。

同法案が可決される可能性は極めて低かったが、動議を出すことで中絶の権利擁護派が多い支持基盤にアピールする狙いがあった。
この取り組みによって、11月8日の中間選挙で獲得できる議席が増えると計算している。米CBSテレビが4~6日に実施した世論調査では、米国民の64%が 妊娠中絶を認めた1973年判決(Roe v. Wade)の維持を支持している。

採決に進むための 動議は上院で賛成49、反対51で否決された。共和党議員全員(50票)と民主党から中道派のJoe Manchin議員(West Virginia州選出)が反対した。

バイデン大統領は「共和党は、自分の体や家族、生命という最も個人的な判断を下す国民の権利の前に立ちはだかった」と、反対した共和党議員を批判した。

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