ロシア政府系電力会社、フィンランドへの送電を停止

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ロシアの政府系電力会社 PJSC "Inter RAO"の北欧子会社RAO Nordic Oyは5月13日、電力代金の支払い問題でフィンランドへの送電を14日から停止すると発表した。

RAO Nordicは、「5月6日以降、Nord Pool 経由で販売した電気代の支払いがないため、ロシアからの輸入代金を支払えない。送電を止めざるを得なくなった」と主張した。

フィンランドは5月12日にNATOへの加盟を申請する意向を表明、ロシア外務省は「報復措置」を取らざるを得なくなるだろうと述べており、送電停止は報復の可能性もある。


北欧では電力取引所(Nord Pool)が電力の仲介をしており、ロシアの電力はNord Poolを通じてフィンランドの系統運用者のFingridが輸入している。


    https://www.kepco.co.jp/corporate/report/yaku/15/pdf/yaku15_P34_54.pdf


Fingrid もNord Pool も、今回の支払問題の背景について説明していない。

Fingridは、ロシアへの支払いはNord Poolが行なっており、同社としては取引当事者でないとしている。

ロシアは天然ガスについてはルーブル払いを条件にしたが、電力については明らかでない。Nord Poolは、ルーブル払いを要求されたかの問いに「我々はルーブルで決済を行ったことはない」と述べるにとどまっており、詳しい背景は不明である。

輸入した電気の代金を支払わないということは考え難く、フィンランドのNATO加盟への報復か、又はルーブル払いの要求の可能性がある。

Fingridでは、ロシアからの電力は国内需要の1割を占めるが、「スウェーデンからの輸入増や国内の供給増で不足分を賄える」としている。

ィンランドの電力自給体制はどんどん改善しており、特に風力発電が増加している。本年だけでも追加の2000メガワットの風力発電が稼働する。

フィンランドのTeollisuuden Voima Oy(TVO)は2021年12月21日、2005年から建設中だったOlkiluoto原子力発電所3号機(出力172万kWの欧州加圧水型炉:OL3)が臨界条件を達成したと発表した。本年6月からは営業運転を行う。(Olkiluoto島には、原発から出る放射性廃棄物の地下最終処分場 Onkaloが併設されている。)

2023年に電力自給が完成する予定。


なお、フィンランドの地元紙はロシアからの天然ガス供給が近く停止される可能性があるとも報じている。フィンランドでは2020年に国内で消費した天然ガスの7割近くをロシア産が占めた。

付記

フィンランドの国営ガス会社Gasumは5月20日、ロシアからの天然ガス供給が21日午前7時で停止すると明らかにした。ロシアからは既に送電が止まっている。
ロシアのGazpromは、ユーロではなくロシアの通貨ルーブルによる支払いを求めていたが、フィンランドはこれを拒否し、供給停止が決まった。

天然ガスについては、欧州で下記の問題が発生している。

1)ロシアはパイプライン経由の天然ガスについてルーブル払いへの切り替えを要求している。但し、下図の仕組みを提案した。


ロシア案の仕組みであれば、買い手は契約通りのユーロで支払ったと言え、売り手のGazpromはルーブルで支払いを受けたと言うことができる。

買い手が直接ルーブルで払う場合は各国の市中で多額のルーブルを入手するのは困難だが、この場合は問題ない。

2)ポーランドの国営ガス会社PGNiGは4月26日、ロシア国営Gazpromから天然ガス供給を4月27日から停止するとの通知を受けたと発表した。ブルガリアも同様に4月27日からのガス供給停止を通知された。

ポーランドがガス購入でルーブル決済を拒否し、ロシアが圧力を強めた可能性がある。
ポーランド側がロシア天然ガスの購入を拒否したとの説もある。


3)ウクライナが同国のロシア占領地域経由のパイプラインを停止、ロシア非占領地帯経由パイプラインへの切り替えを要求

2022/5/12 ウクライナ、ロシア産天然ガスの欧州向けパイプラインを一部停止

4)Gazpromは5月12日、ポーランドなどを経由するパイプラインYamal Europeを通じた天然ガスの供給を止めると明らかにした。
  ロシア政府が5月11日に発表した制裁対象に、パイプラインの一部を所有するポーランド企業EuRoPol GAZが含まれていたため。

2022/4/28 ロシア、ポーランドとブルガリアに天然ガス供給停止 



付記

デンマークのエネルギー会社Ørstedとオランダのガス会社GasTerraは5月30日、ルーブル払いを拒否したため、天然ガスを切られると発表した。

Gazpromは同日、5月31日でGas Terraへの供給を停止すると発表した。

ポーランド、ブルガリア、フィンランドに次ぐもの。

Gazprom は5月31日、デンマークのØrsted向けと、Shell Energy経由のドイツ向けの供給停止を発表した。両社がルーブル払いを拒否したため。

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