EUが対ロ追加制裁案、原油の段階的禁輸やSberbankのSWIFT除外

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EUの欧州委員会のフォンデアライエン委員長は5月4日、欧州議会で、ウクライナ侵攻を受けた対ロシア制裁第6弾として、ロシア産原油の段階的輸入禁止、主要銀行や放送局への制裁措置を提案した。

ロシア産原油の輸入を6カ月以内に、石油製品の輸入は2022年末までに、それぞれ段階的に停止する。欧州経済への影響は最小限に抑える方針。

EUは4月8日の第5段で、ロシアからの石炭・その他の固形化石燃料のEUへの輸入、輸送の禁止を決めている。(但し、移行期間を経て2022年8月から適用開始)。

付記

欧州連合(EU)は5月30日夜、ロシア産石油のEUへの輸入を禁止することを柱とする追加制裁で合意した。
発動後ただちに3分の2の輸入が止まり、年内に90%以上になるという。

パイプラインでロシアから石油を調達しているハンガリーが、自国のエネルギー確保が脅かされるとして強く反対していたが、協議の結果、パイプラインによる輸入は当面除外し、船で輸送される石油に限ることで合意した。
ドイツとポーランドはパイプライン経由分の年内停止も約束、ハンガリー、スロバキア、チェコはパイプラインで輸入を続ける。

さらに、ロシアの石油や石油製品の輸送に関連し、欧州の船舶や保険などの企業がサービスを提供することも禁止している。世界のタンカー賠償責任保険は、約95%がロンドンを本拠とする組織を通じて結ばれており、これがEUの法律に従うことになる。

制裁が実行されれば、ロシアとその顧客は原油漏れや海上での事故といった巨額請求につながるリスクに対し、一切の備えを失う。

フォンデアライエン委員長は「加盟国の中にはロシアの石油に大きく依存している国もあり、簡単にはいかないだろうがやらなければならない。プーチン(ロシア大統領)は、残忍な侵略行為に対して高い代償を支払わなければならない」と述べた。「代替策を確保し、市場への影響を最小化する秩序だった方法で進める」と説明した。

また、追加制裁案には、ロシア最大手の銀行
Sberbankと他2行(Credit Bank of Moscow、Russian Agricultural Bankとされる)の3銀行を新たに国際送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から除外する措置が盛り込まれた。

  順位 2022/3 今回
Sberbank PJSC  1 対象外 SWIFT除外
VTB Bank PJSC
貿易決済を担う国営銀行
2 SWIFT除外
Gazprombank
(Gazpromが投資)
3 対象外 対象外
Bank Otkritie   SWIFT除外
Novikombank  
Sovcombank PJSC  
Bank Rossiya  
VEB.RF
国営開発対外経済銀行 
 
Promsvyazbank PJSC
(軍とのつながり)
 
他 2行 対象外 SWIFT除外

2022/3/4 EU、ロシア7銀行をSWIFTから排除


またロシア国営放送3社のEUでの営業を停止する。「ケーブルテレビ、衛星、インターネット、スマートフォンなどあらゆる形のコンテンツ配信を禁止する」とした。


制裁案は全加盟国の承認を得る必要がある。
原油禁輸では難色を示してきたドイツが最近、容認に転じた。欧州メディアによると、ロシア産原油にエネルギー供給を大きく依存する東欧のハンガリーやスロバキアについては、制裁の導入時期を2023年末までに遅らせる特別措置が検討されているという。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、ロシアの2020年の輸出総額3382億ドルのうち、原油(724億ドル)と石油製品(806億ドル)が4割以上を占め、約1割の天然ガス(320億ドル)を合わせると5割を超える。

石油、ガス産業による収入は、露政府歳入の4割に達する。

輸出先は次の通り。

ドイツに対しては、EU内外から圧力が強まっていた。

2月下旬のウクライナ侵攻以降、欧州がロシアにエネルギー代金として350億ユーロ(約4兆7000億円)を支払ったと指摘されており、ウクライナのゼレンスキー大統領も英BBCのインタビューに、ロシア産原油の購入を続けるドイツなどが「他人の流血で金もうけをしている」と批判した。

EUは今後、ロシア産天然ガスの禁輸についても検討する可能性があるが、実現までのハードルは原油禁輸以上に高い。

BASFは天然ガスがカットされた場合の工場操業への影響について警告を発した。現在の天然ガスの需要の半分を満たさない場合、同社最大のLudwigshafe コンビナートの操業を止める必要があるとしている。

Frankfurter Allgemeine 紙とのインタビューでBASF CEO のMartin Brudermuller は、ロシアからのエネルギー途絶はドイツ経済を過去75年以上のうちで最悪の不況に陥らすと警告した。

4~5年経てばロシアのガスから独立することも可能かも分からないが、それまでについてはLNG輸入での代替は不十分である。ロシアの天然ガスはドイツの消費の55%を占めており、これが一夜にして切られると、被害は取り返しのつかないものとなる。ドイツ経済は第二次大戦以来最悪の危機に陥り、特に中小企業の多くにとって終わりを意味する。

BASFの場合、ガスの供給が最大需要量の50%以下になった場合、Ludwigshafen コンビナートで生産を大幅に落とすか、完全にシャットダウンせねばならない。

ドイツ人は事態の重要性を認識していない。天然ガスを切られると職を失うことを意味する。

アンモニアを例にとると、BASFは既にアンモニアや肥料の生産を落とさざるを得なくなっているが、肥料の生産国のロシアに頼れないため、2023年には肥料不足から食糧が不足し、価格が急騰、アフリカなどの貧困国では主食の購入が難しくなるだろうとしている。

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