中国の 独禁法などを管轄する国家市場監督管理総局(State Administration for Market Regulation :SAMR)は7月10日、過去のM&A(合併・買収)などの際に当局への申請がなかったことが独占禁止法違反にあたるとして、ネット大手の騰訊控股(Tencent)やAlibaba集団などに罰金を科すことを決めたと発表した。
合計28の案件が罰金の対象になり、金額は大半が1件当たり50万元(約1000万円)。
騰訊控股(Tencent)は12の買収案件について総額600万元の支払いを命じられ、Alibabaの子会社は動画配信サービス「Youku(優酷)」の株式取得など5件について報告しなかったとして250万元の支払いを求められた。
オンライン診療を手掛ける平安健康医療科技(Ping An Good Doctor)が日本のソフトバンクと合弁企業ヘルスケアテクノロジーズ を東京に設立した件も対象になった。
ヘルスケアテクノロジーズ
設立:2018年10月15日
事業内容:オンラインヘルスケア事業同社のHELPO(ヘルポ)は体調が悪くなり始めたときや、ちょっとした身体の不安を医師・看護師・薬剤師の医療専門チームに気軽に相談できるヘルスケアアプリ
平安健康医療科技にはソフトバンク・ビジョン・ファンドが400億円超を出資していた。
このほか、動画配信のBilibiliが3件、ブログサイトWeiboが1件など。
中国当局は2020年末ごろからネット大手の摘発を強めており、これまでもTencentやAlibabaに様々な名目で罰金を科してきた。
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中国では8月1日に改正独禁法が施行される。2008年8月の施行以来で初の改正となり、ネット大手への統制がさらに強まる見通し。M&Aの届け出義務違反に対する罰金は大幅に引き上げられる。
中国の第13期全国人民代表大会(全人代)常務委員会第35回会議は2022年6月24日、独占禁止法の改正に関する決定を可決した。8月1日から施行される。
国家市場監督管理総局局長の説明では、改正の理由として、2008年の独禁法施行以降の運用の中で、一部の独占禁止行為に対する処罰が不十分なこと、法執行体制に改善の余地があることなどの課題が明らかになったことを指摘している。特に、一部の大規模プラットフォーム事業者がデータや技術、資本などの優位性を乱用して独占的行為を行い、公平な競争の障害となっており、プラットフォーム経済分野における独禁法関連制度の具体的な適用規則の明確化が急務とした。
改正独禁法の第22条において、市場支配的地位を有する事業者による、データやアルゴリズム、技術やプラットフォーム規則などを利用した市場支配的地位の乱用を禁止する旨が規定されるなど、プラットフォーム事業者を対象とする内容が追加された。
また、事業者集中審査について、国務院が定める申告基準に達しない場合でも、国務院独占禁止法執行機関が、当該事業者集中が競争制限・排除効果を持つかその可能性があることを証明する証拠を有する場合、同機関は事業者に申告を要求することができると規定した(26条)。
分類されたレベル別の事業者集中審査制度を整備し、経済や国民生活に関係する重要分野における審査を強化することも盛り込まれた(37条)。
垂直的独占協定に関して、関連市場における市場占有率が国務院独占禁止法執行機関の定める基準を下回ることを証明でき、かつ、国務院独占禁止法執行機関の定めるその他の条件に合致する場合は禁止しないとする「セーフハーバールール」を定めた(18条)。
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