EUのガス在庫の枯渇懸念が強まっている。Gazpromは7月25日、Nordstreamについて、新たに送ガス用タービン1台の修理を始めると発表。27日から供給量を6月中旬までの約2割に減らす。
欧州連合(EU)は7月26日、ブリュッセルでエネルギー相理事会を開き、 ロシアが欧州へのガス供給を一段と減らし、欧州のガス在庫が枯渇する懸念が強まっているのを受け、8月から2023年3月までの天然ガスの消費を過去5年の平均に比べて15%減らすことで合意した。 ただ一部の加盟国に配慮して例外規定を設けるなど実効性には課題もある。
EUは2021年にロシアから需要全体の4割にあたる1550億立方メートルの天然ガスを輸入 した。15%の削減が実現すれば450億立方メートルの節約になるが、例外規定を設けたことで効果は薄れる可能性が高い。
島しょ国など他の加盟国とガス網で結ばれていない国は除外する。
発電をガスに大きく依存している国は目標を免除される可能性がある規定も設けた。
鉄鋼や化学など重要な産業で使うガスは目標の対象外とできるルールも設けた。
具体的には加盟国が自主的な目標として実現に努める自発的削減である。但し、ロシアがガス輸出を止めるなどの緊急事態になれば、欧州委が'Union alert'を出し、削減を義務付ける可能性もあるとしている。
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ロシア国営 Gazprom は6月14日、天然ガスパイプラインNordstream 1 の供給量を40%減らすと発表した。従来の日量最大1億6700万立方メートルから1億立方メートルになる。
Gazpromは翌15日、さらに33%削減すると発表した。合計60%のカットとなる。モスクワ時間の16日午前1時半をもって供給量は最大6700万立方メートルになる。
Gazpromは7月11日から2週間ほどの「定期検査」を実施し、その間はガス供給が完全に止まった。
点検の期限である7月21日に天然ガスの供給を再開したが、21日の供給量は点検前と同じ、通常時よりおよそ60%削減された状況である。
Gazpromは7月25日、Nordstreamについて、新たに送ガス用タービン1台の修理を始めると発表。27日から供給量を6月中旬までの約2割に減らす。
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EU各国のロシア天然ガス依存度は下図の通り。
欧州は例年、ガスの不需要期の夏場に在庫を蓄え、暖房需要が増える冬になると消費量の半分を在庫でまかなう。
7月24日時点では、ガスの貯蔵能力は67%と平年並みの水準に回復している。液化天然ガス(LNG)の4~6月の輸入量を約3300万トンと前年同期比5割増やしたのに加え、ロシアからの調達を継続した効果も大きかった。
ただ、LNG輸入量はすでに受け入れ能力の上限に近い水準まで増やしており、これ以上の拡大は難しい。ドイツなどが進めるLNG受け入れ基地の新設や拡充も、今冬には間に合わないものが多い。
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