米民主党のインフレ対策法案:Inflation Reduction Act of 2022

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米民主党は、Inflation Reduction Act of 2022を議会に提出すると発表した。

米民主党の Joe Manchin 上院議員がChuck Schumer上院院内総務と合意した歳出法案で、バイデン大統領が公約に掲げていた大企業と富裕層への増税案が復活した。

バイデン大統領は2021年秋、1.75兆ドルの大型歳出・歳入法案の可決をめざしたが、Manchin議員らが反対したため成立しなかった。

バイデン大統領は2021年10月28日、Build Back Better Act を発表した。与党民主党内で意見が対立し、進展していない 「10年で3.5兆ドルの予算案」を修正し、早期の法案成立を目指すもの。

大統領案はBuild Back Better Act の名前で、当初の「10年で3.5兆ドル」を半減し、気候変動対策や子育て支援等に1兆7500億ドルを投じるものである。

2021/11/1 バイデン大統領、10年間3.5兆ドルの予算案を修正

今回、上院で法案通過の鍵を握るManchin議員が方針転換した。バイデン氏は大幅に規模を縮小した今回の法案について、法案は気候変動対策や法人増税など同氏が実現をめざしてきた政策を含んでいるとし、速やかな可決を議会に呼びかけた。

付記

米上院は8月6日土曜の夜から15時間以上の討議を行い、8月7日日曜にこの新たな歳出・歳入法案を可決した。

予算関連法案はフィリバスター回避のための60票を必要としないとする上院のreconciliation processを使い、単純多数決での決定としたが、党派に沿い、50:50となった。
規定により、上院議長を兼ねる副大統領が賛成票を入れ、可決した。

  共和党 民主党 民主系 合計 副大統領
無所属
賛成   48 2  50 1
反対 50   50
合計 50 48 2 100 1


下院は8月12日、賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成   220 220
反対 207   207
棄権 4   4  
合計 211 220 431 4


バイデン大統領が近く署名して成立する見込み。

付記

バイデン米大統領は8月16日に署名し、成立した。大統領は「気候変動に関するこれまでで最大の前進だ」と強調した。


概要は下記の通り。年収40万ドル以下の家族には追加課税なし、中小企業には新税なし。

付記 2023年1月から自社株買いをした米企業への課税が始まる。

企業が実施する自社株買いのうち、同一年度に新規発行した分を差し引いたネットの株式購入額の1%相当する額を課税する。
自社株買い実施額が年100万ドル未満の場合や、組織再編の一環の場合は課税対象外とする。

財源

金額

 法人税 minimum tax 15% 3,130億ドル
 処方箋薬の価格改革 交渉による引き下げ*1 2,880億ドル
 国税庁による徴税改革*2 1,240億ドル
 Carried Interest Loophole*3 140億ドル
 合計 7,390億ドル
投資
 Energy Security & Climate Change *4 3,690億ドル
 医療保険制度改革延長 *5 640億ドル
 合計 4,330億ドル
差引 赤字削減 3,060億ドル


*1  Medicareが医薬品価格を交渉して引き下げ、支出上限を2000ドルにする。

*2  税の抜け穴を封じ、税法を厳密に適用

*3  Carrieed Interest Loophole:

Private Equityの収益構造はマネジメントフィー(資産の2%)及び将来の利益に対し20%の成功報酬からなっている。
この成功報酬のことをCarried interest呼び、正確には出資額に対する利益配分を指す。

アメリカの最高所得税率は37%だが、このCarried Interest の税制は長期キャピタルゲインの優遇税率20%が適用され、これは不平等でおかしいと指摘されている。

*4  エネルギーコスト引き下げ、クリーンな生産、2030年までにカーボン排出の40%削減
   太陽光投資減税(30%)を10年延長

*5  医療保険料の引き下げ

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