インドネシア高速鉄道の状況

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中国国家鉄路集団有限公司が中心となり、中国電建市政建設集団が建設を担当するインドネシアのジャカルタとバンドン間の高速鉄道がようやく本年中に開業にむかう。

3月31日に、全線最長の箱桁架設工事がようやく完了した。そして本線バラスト軌道の敷設工事が、6月1日に正式にスタートした。これは同高速鉄道建設が線路の外での施工段階から、線路の上での施工段階へと全面的に移行したことを意味する。

ジャカルターバンドン高速鉄道はインドネシアの首都ジャカルタと第4の都市バンドン間の150 kmを結び、線路の総延長は142キロメートル、本線の軌道の総延長は279.4キロメートル。そのうちバラスト軌道区間は112.8キロメートル、スラブ軌道区間は166.6キロメートルで、いずれも中国製の鋼鉄製50メートルレールが採用される。

中国産レールはジャカルタ-バンドン高速鉄道軌道敷設基地まで運ばれた後、中国製の設備と先進的なパルスフラッシュ式溶接技術を使用して溶接作業が行なわれ、500メートルのロングレールに溶接されると、ロングレール輸送列車を利用して施工現場まで運ばれる。

人民網紙によると、 同高速鉄道は「一帯一路」(the Belt and Road)イニシアティブと中国・インドネシア両国の実務協力におけるシンボル的プロジェクトであり、中国の高速鉄道事業が初めて全システム、全パーツ、全産業チェーンにわたって海外で展開されるケースにもなる。完成すれば、ジャカルタ ーバンドン間の移動時間が現在の約3時間から40分に短縮される。

インドネシア政府が今年2022年内の「ソフト開業」を掲げている。 但し、無理であるとの見方も強い。

将来的にインドネシア第二の都市である東ジャワ州スラバヤへの延伸が計画されている。

これについては、 日本および中国が高速鉄道システムの売り込みを行い、入札を競った。

ロジェクトの操業開始時期は、JICAが2023年とみていたのに対し、中国側は大統領選が行われる2019年には操業を開始できるとした。
建設コストについても、JICAは61億ドルを要するとみていたところを、中国は55億ドルで完成できるとした。

インドネシア政府は2015年9月3日、高速鉄道計画の撤回を発表し、入札を白紙化したが、直後の9月29日、財政負担を伴わない中国案の採用を決定した。

中国は改訂版入札書をインドネシア側に再提出した。そこで、プロジェクトはbusiness-to-businessベースに切り替えることを明確にするとともに、インドネシア政府からは一切の政府支出を求めないし、政府保証も不要とした。

中国の国営企業(中国鉄道建設公社)は、インドネシアの国営企業3社(建設会社のWijaya Karyaがリーディングカンパニー)との間で、高速鉄道プロジェクトの実施に関する契約を締結し、両者の出資による特別目的会社(SPC)を設置することに合意した。

総コストは、55億ドルと見積もり、建設期間は、2016年から2019年までとし、その後50年間は政府から得るコンセッションの下、高速鉄道サービスを提供し、その事業収入をもって初期投資コストを回収する。
更に、本プロジェクトの建設に係る必要資金は、中国開発銀行を通じて提供するとし、融資比率は、総コストの75%、grace periodは10年間、融資期間は50年とした。

2015年9月の落札時点では、2015年に着工し2019年に開業する予定とされていたが、起工式は2016年1月21日にずれ込んだ。

提出された書類の大半が中国語で審査が進んでいないこと、中国側はインドネシア政府に当初の条件とは異なり、債務保証を求めてきているとも報じられた。
その後も、土地価格の高騰や民間工業団地の移転補償問題、不法占拠に対する立ち退き交渉の難航などで土地収用は85%にとどまり、中国側の融資の条件である高速鉄道用地の全区間確保が出来ていないため本格着工が行われず、地元業者による自己資金による整地工事のみが行われている状態とされていた。

その後のコロナ禍での工事遅延もあった。

総工事費は契約締結当時は55億ドルとされていたが、その翌年には、早くも61億ドルに膨れ上がり、最近の国会での国営建設会社の証言によれば、75~80億ドルに達するであろうとされている。
中国側のFSが低過ぎたことに起因するが中国側は主に土地収用の遅れ等によるものとしている。

予算のオーバーに対し、政府は2021年に国家予算357億円をインドネシア側出資企業に投入して支援することを決めた。(これは61億ドルの予算に対するもので、工事費は更に増え、政府支出も増えると見られる。)

下図のように、インドネシア国営企業コンソーシアムが主体の中国とのJVが運営主体のため、コスト増はJVが負担せざるを得ない。出資者の国営企業は既に多額の対外債務を抱えており、このような支払を行えるような財務状況にはなく、最終的に国が支援するしかないこととなる、


完成後も、ジャカルタ、バンドンの二都市間には、既に既存路線が走っていることから十分な収入は見込めず、建設費増により赤字が予想される、

中国側の融資は45.5億ドルで、grace periodは10年間、融資期間は50年であり、2026年からは毎年債務支払義務が発生する。(アジア開銀なら1%未満)
この負担は大きく、
数年もしないうち経営破綻に陥ってしまう可能性が高いのではと見られている。

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ジャカルタ-バンドン間の高速鉄道計画とは別に、ジャカルタ-スラバヤ間のジャワ島横断鉄道(在来鉄道)の高速化計画がインドネシアと日本の協力で進められている。

2017年3月、インドネシア政府は、ジャカルタとスラバヤを結ぶ鉄道の活性化のパートナーとして日本を選択した。このプロジェクトは、インドネシアの2つの主要都市間の列車を、時速 140〜160km、軌間 1,435mmにアップグレードすることを目的としている。
現在は12時間かかるジャカルタ―スラバヤ間を約半分の5時間半にすることが検討されている。

建設により、踏切が高架線に置き換わる。現在、ジャカルタとスラバヤの間には約988の踏切があり、列車の安全性、強度、速度を妨げている。プロジェクトのフェーズ1では、ジャカルタからスマランまでの新しい路線を構築し、フェーズ2では、スマランからスラバヤまでの既存の路線をアップグレードする。

これについて、インドネシア政府が中国に対して資金面などでの参加を2022年1月12日に打診していたことが明らかにされた。

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