三井物産と三菱商事は、2022年6月末で、権益を持つサハリン2の資産価値を合計2,177億円減額したと発表した。2022年3月末でも合計938億円の減額をしており、累計で両社で3,115億円の減額となる。
両社とも、2021年12月末時点での評価に対し、2022年6月末時点での評価は1/3となっている。
出資比率 | 2021/12価値 | 2022/3 |
2022/6 |
合計評価損 | |||
評価額 | 評価損 | 評価額 | 評価損 | ||||
三井物産 | 12.5%出資 | 2,709億円 | 2,268億円 | -441億円 | 902億円 | -1,366億円 | -1,807億円 |
三菱商事 | 10.0%出資 | 1,930億円 | 1,433億円 | -497億円 | 622億円 | -811億円 | -1,308億円 |
合計 | 4,639億円 | 3,701億円 | -938億円 | 1,524億円 | -2,177億円 | -3,115億円 |
なお、両社ともIFRSでの「その他の包括利益 」のうちFVTOCI(その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産)での減額で、当期損益には反映されない。
三井物産は、「大統領令が出たことで将来得られる見込みの配当について不確実性が高まった。資産評価を保守的に見積もった」としている。
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日本はサハリン2から年間約600万トンのLNGを輸入している。日本のLNG輸入量の約10%を占める。
サハリン2プロジェクト
事業主体 | ・Shell 55%→27.5%-1株 ・Gazprom 0%→50%+1株 ・三井物産 25%→12.5% ・三菱商事 20%→10% |
投 資 額 | 200億ドル |
開発鉱区 | ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ |
推定可採 埋蔵量 |
①原油 10億バレル ②天然ガス 4,080億立方メートル |
<石油>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬後、新設港湾よりタンカーで日本等へ輸出
<ガス>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬、液化後、LNGをタンカーで輸出
2007/1/9 サハリン2計画 再スタートとその背景
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Shellは2022年2月28日、主要な液化天然ガスプラントを含むロシアの全事業から撤退すると発表した。
サハリン沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」からも手を引き、「ノルドストリーム2」への関与も終了する。
ロシアからの撤退により減損が発生する見込みで、ロシアの事業に関連する非流動性の保有資産は2021年末で約30億ドルという。
Shellは3月8日、ロシア事業を全面的に終了すると発表した。
2022/3/1 Shell、サハリン2から撤退
岸田首相は3月31日の衆院本会議で、「サハリン2」から撤退しないと明言した。日本のエネルギー安全保障上、「きわめて重要なプロジェクト」だと語った。
プーチン大統領は6月30日、「サハリン2」の運営会社「サハリンエナジー社」の外国企業が保有する資産を、今後新設するロシア企業に無償で引き渡すように命ずる大統領令に署名した。
サハリンエナジー社の株式は、現在、ロシアの国営天然ガス企業ガスプロムが50%、英石油大手シェルが27.5%、日本の三井物産が12.5%、三菱商事が10%を保有している。
ガスプロムの出資は今後も維持されるが、その他の外国株主は、新会社の株式取得に同意するか否かを1か月以内に決定することが求められる。同意しない場合には資産を失い、保有する株式はロシア企業に売却される。同意する場合には、ロシア政府に申請を行って、認められれば出資を維持できるとしている。 (現時点でどんな条件なのかわかっていない。)
大統領令では、今回の決定は、ウクライナ侵攻に伴い対ロ制裁を発動した日本などを念頭にした「米国や追随する国の非友好的行動」に対応した措置、と説明されている。
日米の外務、経済閣僚が経済分野の議論を行う経済版「2プラス2」の初会合が7月29日、ワシントンで開かれ、萩生田経済産業大臣は、日本の大手商社が権益を持つロシア極東の天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」について、権益の維持を目指す方針をアメリカ側に伝えたことを明らかにした。
萩生田大臣は、日本の大手商社が権益を持つ「サハリン2」について議論があったことを明らかにし、「撤退を求める声もあるが、撤退すれば第三国に権利を譲ることになって、ロシアはばく大な利益を得ることになる」と述べ、そのうえで、「アメリカ側に現状維持したいと説明し、理解してもらったと思っている」と述べた。
ロシア政府は8月2日付政令で、運営会社を設立することを決定した。事業を引き継ぐ新会社の本社はサハリン州のユジノサハリンスクに設置する。現在の運営主体であるサハリンエナジーの代表が、新会社の経営を引き継ぐ。
ガスプロムが約50%の出資を従来の運営会社と同様に維持する。残りの出資は当面の間、新会社が保有する。
既存株主は設立から1カ月以内に、従来の出資比率に応じた株式取得に同意するかどうかを通知する必要がある。出資に合意した場合は、ロシア政府が株式を外国企業に譲渡するかどうかを判断する。拒否した場合はロシア企業に売却される。
今後はロシア側からどのような条件が示されるかが焦点となる。
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