韓国最高裁 徴用めぐる三菱重工業の再抗告 判断を見送り

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太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、韓国の最高裁判所は、三菱重工業が韓国国内にもつ資産の売却命令に対する会社側の再抗告について、再抗告の受理から4か月にあたる8月19日にこれを退けて売却命令を初めて確定させることになるのではないかという見方が出ていた。

しかし、最高裁はひとまず判断を見送った。審理は継続される。三菱重工業の訴訟を担当する大法院判事が9月4日に任期満了で退任予定とされており、「遅くとも8月中に決定が出る見通し」とされる。

資産を売却する「現金化」の前に韓国政府が打開策を打ち出せるのかが引き続き焦点となるが、時間は余りない。

付記

特許権売却事件の主審であるキム・ジェヒョン大法官(最高裁判事)が結論を出せないまま9月2日に任期を終えて退任式を行った。後任の裁判部がいつ構成されるかも分からない状況。

大法院側はこれに先立って「大法院がこの事件をいつまでに決めると方針を固めたり、大法官の間で合意されたものはない」とし「キム・ジェヒョン大法官退任前までに決定するよう方針を固めたわけではない」と説明していた。

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韓国大法院(最高裁判所)は2018年11月29日、三菱重工業に対し、第2次世界大戦中に同社の軍需工場で労働を強制された韓国人の元徴用工らに対する賠償支払いを命じる判決を下した。大法院は、損害賠償訴訟2件について、三菱重工業の上告を棄却し、2件の訴訟の原告に対し、1人あたり最大で1億5000万ウォン(約1500万円)の支払いを命じた。

韓国の大田地裁は2019年3月25日、三菱重工業の韓国内資産の差し押さえを決定した。

原告側が裁判所に強制執行を申請していたのは三菱重工業の商標権2件と 、三菱重工業が韓国国内に保有中の770件余りの特許権のうち発電技術特許などの特許権6件で、現金換算で8億400万ウォン(約7200万円) に相当する。三菱重工業は同資産の使用、売買や譲渡ができなくなる。

三菱重工業が資産売却に関する関連書類の受け取りを拒否しているため、大田地裁は9月7日に三菱重工側から意見を聞くための「審問」に関してウェブサイトに「公示送達」を掲載した。「公示送達」は12月30日に効力が発生するとしており、地裁は、双方の公示送達の効力が生まれる12月30日以降、現金化に向けた次の判断を下すとみられた。

三菱重工業は、「公示送達」成立を受け、差し止めを求める即時抗告を行なった。

2020/11/3 韓国地裁、朝鮮女子挺身隊訴訟で 三菱重工資産の売却へ手続き

2021年8月には水原地裁安養支部が、韓国企業との取引で発生した三菱重工の物品代金債権に対する差し押さえと取り立て命令を決定した。しかし、韓国企業が「当社の取引企業は三菱重工業ではなく三菱重工業エンジンシステム」と説明、命令が取り消された。

2021/8/20 三菱重工の韓国内現金資産、初の差し押さえ

三菱重工業の差押えの差し止めを求める即時抗告は棄却され、資産売却の可能性が強まった。

三菱重工業は2022年4月15日に特許権の売却命令に対して、4月26日に商標権に関わる資産売却命令を不服とし、大法院(最高裁)に再抗告した。

2022年4月29日に、元女子勤労挺身隊員らへの賠償を命じた判決をめぐり、韓国の大田地裁が同社の差し押さえ資産のうち、さらに特許権2件の売却命令を出した。裁判所が差し押さえた同社の特許権6件と商標権2件のすべてに、売却命令が出たことになる。

上告審手続きに関する特例法によると、大法院は再抗告を受け付けてから4か月以内であれば理由を示さずに「審理不続行」との判断で棄却できる。
4か月の期限にあたるのが8月19日で、大法院の判断が注目されていた。

韓国外務省は7月26日、元徴用工問題の解決に向けた外交的な努力を説明する意見書を韓国大法院(最高裁)に提出した。

公益に関連する事項について、国と地方自治体は意見書を提出できると定めた最高裁の民事訴訟規則に則るもの。

「韓日の共通利益に合致する合理的な解決策」を探るため、外交協議を続けているとの立場を強調する内容で、解決策を協議するため同省が7月に設けた官民協議会について「原告側や各界各層の意見を集めるなど、多角的な外交努力を傾けている」と説明した。

尹錫悦政権は、資産の現金化によって日韓関係が一段と悪化する事態を懸念している。現金化の判断を先延ばしできれば、その間に原告を交えた国内の意見集約や日本との外交協議を前進させられると考えている。

文在寅前政権は司法判決を尊重する立場をとり、現金化を回避するための具体的な行動は取らなかった。


韓国の尹錫悦大統領は8月17日、日韓の懸案になっている戦時中の元徴用工の訴訟をめぐる問題について、「日本が憂慮する主権問題に抵触することなく、債権者(の原告)が補償を受けられるような案を、十分に考えている。合理的に導き出す」と述べた。

日本企業の資産を売却する「現金化」の手続きが近く終わる可能性もあり、日韓関係がさらに悪化するとの懸念が出ている。  

尹氏は会見で、徴用工問題などについて「両国が未来志向的な協力関係を強めた時、譲歩と理解を通じて円満に解決できる」と述べた。厳しさを増す安全保障環境や経済協力の必要性にも触れ、日韓が「未来のために緊密に協力しなければならない」と語った。そのうえで、徴用工問題などの解決に向けて「合理的な案を導き出すことができる」と説明した。

「判決の(強制)執行の過程で、日本政府が憂慮する主権問題と衝突することなく、原告が補償を受けられるようにする解決案を検討している」と述べ、敗訴した日本企業の資産の現金化に伴う実害が出ない措置を準備していることを示唆した。

これを受け、韓国最高裁は8月19日にひとまず判断を見送った。審理は継続されるため、資産を売却する「現金化」の前に韓国政府が打開策を打ち出せるのかが引き続き焦点となる。

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