順天堂医院で重症心不全に対する iPS細胞由来心筋細胞シートを用いた医師主導治験を実施

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順天堂医院心臓血管外科では2022年8月、大阪大学が主導する「虚血性心疾患を原因とする重症心不全に対するiPS細胞シート治療の治験」の多施設共同治験として虚血性心筋症の患者への移植手術を実施した。

これは、心臓の血管が詰まり、心筋が壊死して血液を送る力が衰える病気で、重くなると死に至る。

術後の経過も良好で、まもなく予定の入院期間が終了し退院の予定。

本治療法は、深刻な臓器移植ドナー不足である我が国の重症心不全医療において、新たな治療オプションとなることが期待される。

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大阪大学は2020年1月27日、重症心筋症の治療に向け、iPS細胞から作製した心筋細胞シートの医師主導治験の実施を発表した。心臓への移植は世界初。
重症心不全の治療は現在、心臓移植や補助人工心臓の装着が主流で、新たな治療法の確立が求められている。

大阪大学大学院医学系研究科の澤 芳樹教授(心臓血管外科)らの研究グループは、日本医療研究開発機構の支援のもと、iPS細胞から作製した心筋細胞による心筋再生治療の開発を進めてきた。
これまで、虚血性心筋症で心臓の機能が低下したブタにiPS細胞から作った心筋細胞をシート状に加工して移植する研究を実施し、心臓の機能を改善させることに成功している。

さらにiPS細胞からヒトに移植可能な安全性の高い心筋細胞を大量に作製し、シート化することに成功した。細胞をシート状にして幹部に貼り付ける技術は、東京女子医科大学の岡野光夫教授によって開発された。

2020/1/30 iPS細胞から作製した心筋細胞シートの移植

これによる手術は大阪大学ではこれまで3例が実施され、安全性や治療効果を確認している。他の機関でも実施できる治療法であることを検証するため、順天堂大でも実施した。澤芳樹教授は順天堂大学客員教授。

今回、拒絶反応が起きにくい免疫タイプの健常者の血液から京都大が作ったiPS細胞を使い、大阪大と、連携するベンチャーが共同で吹田市内の施設で心筋細胞を作製。直径数センチ、厚さ約0.1ミリの円形シートに加工して冷蔵容器に収め、約500km離れた東京都文京区の順天堂大付属病院に新幹線で輸送し、患者の心臓に貼り付けて移植した。

心筋シートは、専用の設備がないと作れないが、冷蔵容器に入れれば48~72時間の輸送に耐えるため、国内や海外の遠隔地でも手術が行える可能性がある。

計画を指揮する澤芳樹・大阪大教授は「今後さらに多くの機関で治験を重ね、大阪万博が開かれる2025年の実用化を目指したい」と話した。

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