2022年「イグ・ノーベル賞」、日本人16年連続受賞

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2022年「イグ・ノーベル賞」の授賞式が9月15日、オンラインで開かれた。

円柱形の取っ手やつまみなどを片手で回す際に何本の指を使うのかについて調べた千葉工業大の松崎元教授らが「工学賞」を受賞した。

研究は松崎氏が千葉工業大の大学院生だった1998~99年に発表した。受賞したのは他に、当時千葉工業大で松崎氏の指導に当たっていた大内一雄、上原勝、上野義雪、井村五郎の各氏。


身の回りには、つまみやグリップ、ノブやダイヤルなど様々な機器があるが、使用者は何本の指でどの位
置に触れて回すかなどわざわざ考えず、いつも無意識に操作をしている。



この「無意識の行為」をグラフや
数式で表せないかと考えた。

実験では、45本の直径が異なる円柱を32名の被験者に回してもらい、操作開始時の指の使用本数と接触位置を統計的に明らかにした。

直径 10mm 〜11mm のつまみは、2 本使用される場合と 3 本使用される場合が半数ずつであるが、これより小さくなる程、2本で摘む割合が高くなる。同様に、45mm 〜50mm のものは 4本使用と 5 本使用が 半数ずつで、それ以上のものは徐々に 5 本使用の割合が 高くなり、90mm 以上では、ほぼ全員が 5 本の指全てを使用するようになる。

この結果は、つまみの大きさや形状をデザインする際に役に立つと考えられる。

図は賞の対象となった論文 円柱形つまみの回転操作における指の使用状況についてから

松崎教授のコメント:

今では軽く操作できるレバーハンドルの方が一般的ですが、タッチパネルや非接触の動作に関する研究も増えています。20 年以上前のある種時代遅れの研究かもしれませんが、コロナ禍で人とモノの関係をあらためて考えるきっかけにもなると評価されたのかもしれません。
受賞について、研究者としては「人々を笑わせ考えさせた研究」ということで複雑な気持ちでしたが、着眼点を評価された「デザイナー」としては大変嬉しく思います。これを機に無意識の行為を研究する若い研究者やデザイナーにもっと注目が集まることを期待しています。

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他の受賞の内容は下記の通り。
https://improbable.com/ig/winners/#ig2022

応用心臓学 ロマンチックな2人が初めて会い、互いに惹かれた場合、二人の心拍数はシンクロナイズする。
文学賞 何が法律文書を不要なほど理解困難にするかを分析、答えは概念が難しいためではなく、単に書き方が下手なだけ

「法律文書の文章には長文依存性、つまり下手な書き方が認められ、ワーキングメモリーの制限を引き起こしている」と述べ、法律文書をわかりやすく編集することは社会全体にとって有益であると示唆した。

生物学賞 便秘がサソリの交配の見通しに影響を与えるかどうか、またどのように影響するかを研究

サソリはトカゲに似ており、捕食者から逃れる必要がある場合、「尻尾」を落とす。 ただし、トカゲとは異なり、尻尾は元に戻らず、尻尾を失うと、体重の 25%、消化管と肛門の一部が失われ、便秘になる。
幸いなことに、チームは、移動能力にすぐに影響がないことを発見した。サソリが便秘で死ぬまでに、配偶者を見つけることができるまでまだ数か月ある。
長期的に見るとオスは少しずつ最大走行速度が下がり、運動能力が低下することが判明。これにより、尻尾を失ったオスは配偶相手を見つける可能性が下がる。ただし、サソリは全身を使って求愛行動を取るため、生殖能力自体には影響がないとのこと。

医学賞 自家造血幹細胞移植を受ける患者は、事前に薬物投与による化学療法を受けるが、化学療法の副作用として口腔粘膜炎が報告されている。対策として氷をなめることがよく効くとされている。

研究チームは患者にアイスクリームを食べさせたところ、口腔粘膜炎の発症率が低下した。

絵画史賞 古代マヤの陶器にはさまざまな絵が描かれているが、その中には古代マヤが儀式においてアルコール浣腸を行っていたことを示したものがある。
直腸から直接アルコールを吸収すると、口から摂取するよりもずっと速く酔いが回るため、儀式に必要な酩酊状態を誘発するためだった可能性がある。
物理学賞 アヒルの子が編隊を組んで泳ぐ方法
子ガモは親ガモの後ろを、列を成して泳ぐが、親ガモが泳ぐことによって生じる波に子ガモが乗って進むことで、子ガモは少ないエネルギーで泳ぐことができていると指摘。
平和賞 ゴシップの話し手と聞き手の身体的相互依存性を元に「人がどういう時に本当の情報あるいはウソの情報を話すのか」を数学的モデル化。
このモデルを応用することで、ウワサ話が好きな人は最適なタイミングで、本当とウソを使い分けることができる可能性を示唆。
経済学賞 最も才能のある人ではなく、最も幸運な人が成功することが多い理由を数学的に説明

「そこそこの才能を持った非常に幸運な人」は「非常に才能を持った不運な人」よりも常に成功することが示された。研究チームは、最も才能のある人の成功を支援し、新しいアイデアを生み出すための効率的な再分配戦略も有効であると示した。

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研究チームは2010年のイグノーベル経営学賞を受賞している。

従業員の昇進を成果主義ではなくランダムに行う方が、より効率的な組織にできることをコンピューターモデルで証明。

これまでの仕事がうまくいったからといって、昇進後はどうなるかわからない。だから、ランダムに昇進させる方が組織全体の効率が上がる確率が高くなる。

安全工学 車とヘラジカの衝突事故を防ぐため、ヘラジカの模型を作成し、実験。

ヘラジカにぶつかりそうになった時は「ハンドルを切ってヘラジカの軽い方、つまり後部に車を誘導すればよい」


日本人の受賞
(敬称略)   過去の記事

    名前 受賞
1 1992 神田不二宏ほか
(資生堂研究センター)
薬学賞
足の匂いの原因となる混合物の解明
2 1994 気象庁 物理学賞
地震が尾を振るナマズによって引き起こされるかどうかを7年間研究した功績
3 1995 渡辺茂(慶應義塾大学)
坂本淳子
脇田真清(京都大学)
心理学賞
ハトの絵画弁別(ハトを訓練してピカソとモネの絵を区別できるようにした)功績
4 1996 岡村長之助
(岡村化石研究所)
生物学的多様性賞
岩手県の岩石から古生代石炭紀(約3億年前)の石灰岩中に超ミニ恐竜化石を発見した功績
(小さな石を顕微鏡で見て超ミニ恐竜化石だと主張して発表)
5 1997 舞田あき(バンダイ)
横井昭宏(ウィズ)
経済学賞
バーチャルペット(
たまごっち)の開発によりバーチャルペットへの労働時間を費やさせた功績
6 1997 柳生隆視 他
(関西医科大学)
生物学賞
様々な味のガムをかんでいる人の脳波を研究
7 1999 牧野武
(セーフティ探偵社)
化学賞
妻や夫の下着に適用して精液の跡を発見できる浮気検出スプレーの開発
.
8 2002 佐藤慶太(タカラ社社長)
鈴木松美(日本音響研究所)
小暮規夫(獣医学博士)
平和賞
コンピュータ・ベースでの犬と人間の言葉を自動翻訳するデバイス「
バウリンガル」開発
9 2003 広瀬幸雄 教授
(金沢大学)
化学賞
銅像に鳥が寄りつかないことをヒントに、カラスを撃退できる合金開発
10 2004 井上大佑 平和賞
カラオケ
を発明し、人々に互いに寛容になる新しい手段を提供
11 2005 中松義郎
(ドクター中松) 
栄養学賞
36年間にわたり自分が食べたすべての食事を撮影し、食べ物が頭の働きや体調に与える影響を分析
12 2007 山本麻由 化学賞
牛糞からバニラの芳香成分 vanillin の抽出
13 2008 中垣俊之ほか 認知科学賞
真正粘菌変形体という巨大なアメーバ様生物が迷路の最短経路を探し当てる
14 2009 田口文章ほか 生物学賞
パンダのフンから抽出したバクテリアを使って台所の生ゴミを分解し、9割減量
15 2010 中垣俊之ほか 交通計画賞
粘菌が交通網を整備
16 2011 今井眞ほか 化学賞
わさびの臭いが火災報知器の役割を成す理想的な空気中のわさび濃度
17 2012 栗原一貴、塚田浩二 音響賞
迷惑を顧みず話し続ける人の話を妨害する装置「スピーチジャマー」を開発
18 2013 新見正則ほか 医学賞
心臓移植したマウスにオペラを聴かせると生存期間が延びた
19 今井真介ほか 化学賞
タマネギの催涙成分をつくる酵素
20 2014 馬渕清資ほか 物理学賞
「バナナの皮を踏むとなぜ滑りやすいのか」を実験で解明
21 2015 木俣肇 医学賞
情熱的なキスの生物医学的な利益あるいは影響を研究するための実験
22 2016 東山篤規、足立浩平 知覚賞
股のぞき効果
23 2017 吉澤和徳、上村佳孝 生物学賞
ブラジルの洞窟で見つかった新種の虫の雌が「ペニス」のような器官を持ち、それを使って雄と交尾することを解明
24 2018 堀内朗 医学教育賞

座位で行う大腸内視鏡検査
25 2019 渡部茂 化学賞
5歳児の唾液の量
26 2020 西村剛 音響学賞
ヘリウムを吸ったワニの鳴き声
27 2021 村上久 動力学賞
「歩きスマホ」が、歩行者集団に与える影響
28 2022 松崎元ほか 工学賞
円柱形つまみの回転操作における指の使用状況について

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