エクソンモービルは8月30日、同社がオペレーターを務めるロシア極東サハリン州での天然ガス・原油採掘事業「サハリン1」について、撤退が認められなければロシア政府を訴えると通告した。複数のメディアが報じた。
付記ロシア政府は10月3日、サハリン1の新会社を設立するよう命じる政令を発表、事業を移す新会社が14日に法人登記され、正式に設立された。エクソンは30%の権益を保有していたが、権益を引き継ぐにはロシア政府に改めて申請する必要があった。
エクソンモービルは10月17日、「サハリン1」の権益をロシア政府が「一方的に消滅させた」とし、ロシアから完全に撤退したと発表した。エクソンが保有する権益は40億ドル以上の価値があると評価されていたが、その補償を受け取ったのかは不明。エクソンの広報担当者は、ロシアの措置に対し国際的な仲裁手続きを通じて異議を唱えるかについてコメントを控えた。
ExxonMobil は3月1日、Sakhalin-1事業から撤退すると発表した。現状に鑑み、ロシアでの新規開発は行わないとしている。
サハリン1プロジェクト
事業主体 ・エクソンネフテガス社
(米、エクソン・モービル子会社、オペレーター、30%)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO)
(日、石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資30%)
・ONGCヴィデッシュ社(インド、20%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社(ロシア、11.5%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 8.5%)投 資 額 約120億ドル以上 開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ 推定可採
埋 蔵 量①石油 約23億バレル
②天然ガス 約4,850億立方メートル
原油:パイプラインで大陸のDe-Kastri に輸送し、輸出
ガス:当初、日本までのパイプラインで輸送する計画:漁業補償問題、東京電力の反対で取り止め
サハリン2 に売り、LNGにする交渉をしたが、価格で折り合わず、取り止め
現状は、ほとんどは原油回収率向上のため油層に圧入、一部は近くの既存パイプライン(SKV:サハリン~ハバロフスク~ウラジオ天然ガスパイプライン)でハバロスク州などで国内販売
エクソンモービルはサハリン1について、保有する30%の権益を他者に引き渡す手続きを進めていたが、ロシアのプーチン大統領が8月5日、サハリン1に関して「非友好国」の企業が株式売却などを行うことを2022年12月31日まで禁止する大統領令に署名したことで、今後の権益引き渡し手続きに支障をきたすことが懸念されていた。
プーチン大統領は8月5日、非友好国の投資家によるロシアの資源・エネルギー企業や金融機関の株式取引などを2022年末まで禁止する大統領令に署名、即日発効した。禁止の対象となる取引は以下のとおり。
a. ロシア政府の定める戦略的企業(資源・エネルギー、航空宇宙、物流といった分野の企業)の株式
b. 前述のa.に定めた企業が出資する事業会社の株式
c. 石油・ガスプロジェクト「サハリン1」と、北極圏のネネツ自治管区に位置するハリャガ油田採掘プロジェクトの参加者に属する株式、権利、義務
ハリャガ油田 出資者:Lukoil 20%、TotalFinaElf 40%、Norsk Hydro 30%、Nenets Oil 10%。
d. 資源・エネルギーの採掘に必要となる設備の製造やその保守・修理などを行う企業の株式。対象となる企業リストは連邦政府が作成し、大統領が承認する
e. 連邦政府が作成し、中央銀行の合意を得て大統領が承認するリストに掲載する金融機関の株式
f. 石油、ガス、石炭の大規模鉱床(それぞれ2,000万トン以上、200億立方メートル以上、3,500万トン以上の埋蔵量)の開発に携わる企業と、ウランや白金族金属やダイヤモンド、特定のレアメタルなどの鉱床の開発に携わる企業の株式
この大統領令に違反して行われる取引は無効となる。
なお、この大統領令は「サハリン2」の投資家には適用されない。「サハリン2」について、プーチン大統領は6月30日付で運営主体の再編を命じる大統領令に署名し、連邦政府は8月2日、それに基づいて「サハリン2」の新たな運営会社の設立を定めた政令に署名している。
適用期間は2022年12月31日までとされているが、必要に応じて延長すると大統領令に規定されている。
エクソンモービルは、同社がオペレーターを務める「サハリン1」について、保有する30%の権益を「他者」に引き渡す手続きを進めているが、米国は「非友好国」に指定されており、エクソンモービルの今後の権益引き渡し手続きに支障をきたすこととなる。
エクソンモービルは、株式売却などを禁止するロシアの措置は同社の権利を阻害しており、事業の運営を安全に終了する妨げになっていると述べた。
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