イタリアで9月25日、上下院総選挙が行われ、即日開票された。
出口調査や途中集計によると、中道右派連合が上下院で過半数の議席を獲得し勝利が確実となった。
連合の野党右派「イタリアの同胞」が第1党になる見通しで、同会派には他に、同じく極右である同盟(Lega)に、中道右派のフォルツァ・イタリア(FI)と中道右派の少数政党による会派「われらに中道を」(Noi Moderati)が参加している。
イタリアの同胞のジョルジャ・メローニ党首(女性 45歳)が同国初の女性首相に就任する公算が大きくなった。メローニ氏は26日未明、勝利宣言した。
同氏は学生時代にはネオ・ファシスト政党であるイタリア社会運動(MSI)の青年組織に所属しており、近年はやや距離を置いているが、もともとは熱心なムッソリーニ支持者である。
選挙戦では、ロシアのウクライナ侵攻などを受けた物価高への対応が最大の争点となった。大幅な減税をはじめ「バラマキ」ともいえる公約を掲げるジョルジャ・メローニ党首率いる「イタリアの同胞」を中心とした中道右派連合が上下両院で過半数を獲得すると 予想された。
8月の消費者物価指数は前年同月比で+8.4%で、前月の+7.9%からインフレがさらに加速、特にエネルギーや加工食品の上昇幅が大きく、国民の不満は高まっている。
メローニ党首は、最低賃金導入や福祉手当の引き上げを提唱している。但し、財源の裏付けが乏しく、実現性を疑問視する声も強い。
それでもメローニ氏が支持を集めるのは、左右両勢力が参加したドラギ政権に加わらず、ほぼ唯一の野党として批判を続けてきたためである。
付記 獲得議席数は下記の通り。 下院は630から400に、上院は315から200に定数が削減された。
得票率 |
議席数 | ||||
2018 | 2022 | 上院 | 下院 | ||
(右派連合) | イタリアの同胞 | 4.4% | 26.08% | 66 | 118 |
同盟 | 17.4% | 8.82% | 29 | 65 | |
フォルツァ・イタリア | 14% | 8.11% | 18 | 45 | |
われらに中道を | |||||
合計 | (115) | (235) | |||
(左派連合) | 民主党 | 18.8% | 19.1% | 38 | 69 |
グリーン/左派連合 | |||||
Piu Europa | |||||
合計 | (42) | (84) | |||
Five Star | 32.7% | 15.3% | 28 | 51 | |
Action - Italia Viva | 9 | 21 | |||
others | 6 | 9 | |||
合計 | 200 | 400 |
(経緯)
欧州中央銀行(ECB)の第3代総裁を務め、'Super' Mario と呼ばれたMario Draghi は2021年2月13日、イタリア首相に就任した。
連立与党の中核だった「五つ星運動」と中道左派「民主党」に加え、1月に連立離脱した「イタリア・ヴィーヴァ」や、これまで野党であった中道右派の「同盟」や「フォルツァ・イタリア」なども含めた大連立内閣が発足した。 考え方が異なる多くの党の連立である。
今回、物価高騰による家計負担の軽減措置を巡って政権が崩壊の危機に瀕していた。
イタリアの議会上院は7月20日、ドラギ首相が率いる内閣の「信任投票」を実施した。首相は上院での演説で、政府を維持する唯一の方法は「信頼に基づいた合意を再構築することだ」と強調し、各政党に協力を求めた。
今回も95対38の賛成多数で可決したものの、与党の左派「五つ星運動」と中道右派「フォルツア・イタリア」、極右「同盟」は投票前に離席し、事実上の「不信任」を示した。
合従連衡の経緯 与党〇、野党X |
第一次 コンテ内閣 |
第二次 コンテ内閣 |
2021/1 |
ドラギ内閣 |
||||
当初 | 今回 実質不信任 |
||||||
五つ星運動 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | X | ||
同盟 | 〇 |
離脱X |
X | 〇 | |||
民主党 | 民主党 | X | 分離 | 〇 | 〇 | 〇 | |
イタリア・ヴィーヴァ | ー | 〇 |
離脱 X |
〇 | |||
フォルツァ・イタリア | X | X | X | 〇 | X | ||
混合会派 | X | 〇 | 〇 | 〇 | |||
自由と平等 | X | 〇 | 〇 | 〇 | |||
イタリアの同胞(極右) | X | X | X | X | X |
2022/7/23 イタリア・ドラギ首相辞任、議会解散 9月25日に選挙
イタリアのドラギ首相は7月21日、マッタレッラ大統領に再び辞表を提出し、受理された。
大統領は上下院の解散を表明、政府は9月25日に前倒し総選挙を実施することを決めた。
2020年9月の国民投票で下院は630から400に、上院は315から200に定数が削減された。今回から適用される。
他に、上院に大統領の指名による終身議員がいる。終身議員は政党に所属しない。
- 大統領経験者(上限無し) 現在1人
- 社会、科学、芸術および文学の領域で最高の功績を上げた者から大統領が指名した者(上限5人)
両院は同等の権限を持ち、任期5年。いずれも議席の約3分の1を小選挙区制で、残りを比例代表制で選出する。
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9月11日に投票が行われたスウェーデンの総選挙(一院制、定数349)では、スウェーデン民主党、穏健党、キリスト教民主党、自由党から成る右派連合が過半数の176議席を獲得し た。
173議席にとどまった中道左派陣営のアンデション首相(社会民主労働党)が辞意を表明し、野党・穏健党(Moderate Party )のクリステルソン党首が9月19日に国会議長から組閣要請を受けた。
選挙前から 右派陣営ではクリステルソン氏をまず首相候補とする合意はあったが、右派連合の一員で、選挙の結果、議席数だけなら社会民主労働党に次ぐ議会第2党に躍進した極右のスウェーデン民主党について、閣内に入るかどうかをめぐって陣営内で意見が分かれており、組閣までに時間がかかる可能性がある。
2018 | 2022 | ||||
---|---|---|---|---|---|
中道 左派 連合 |
Social Democratic Party | 100 | 175 | 107 | 173 |
Centre Party | 31 | 24 | |||
Left Party | 28 | 24 | |||
Green Party | 16 | 18 | |||
右派 連合 |
Moderate Party | 70 | 174 | 68 | 176 |
Sweden Democrats (極右) | 62 | 73 | |||
Christian Democrats | 22 | 19 | |||
Liberals | 20 | 16 | |||
合 計 |
349 | 349 |
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