アジア、オーストラリア時間の9月26日の外国為替市場で、英ポンドが一時、1.035ドルまで下落し、過去最安値を更新した。
これまでの最安値は1985年2月26日(プラザ合意の半年前)の1.042ドルであった。
トラス新政権が減税を柱とする経済対策を打ち出し、財政やインフレの悪化につながる懸念を生んだ。
クワーテング財務相は9月23日、50年ぶりの規模となる減税案を発表した。この中には法人税増税の撤回や銀行員の賞与制限撤廃が含まれ、野党・労働党から富裕層優遇との批判を浴びている。
与党・保守党の内部でも、元財務相の長老クラーク議員がCラジオとのインタビューで、減税はポンド崩壊を招きかねないと警告、中南米諸国が試みて失敗してきた政策だと指摘していた。
付記 トラス政権の経済対策 5年間で1610億ポンド(約25兆5000億円)
1) エネルギー対策 10月から半年で600億ポンド(約9.3兆円)
家計向け:光熱費価格に上限、加えて、所帯ごとに半年で400ポンド割引
企業向け:電気・ガス卸売価格に上限、光熱費は想定水準の半分に
2) 大規模減税 5年間で450億ポンド(約7兆円) *党首選での公約は総額300億ポンド
2023/4予定の法人税率引き上げ(19%→25%)を取り止め (G20で最低税率)
2022/4の国民保険料1.25%引上げの撤回
2023/4からの所得税基本税率1%引き下げ(20%→19%)、最高税率の引き下げ(45%→40%)
住宅購入者の印紙税引き下げ
海外からの買い物客の消費税を免除するデジタルシステムの早期導入
3)バンカーの賞与制限は撤廃
付記
クワーテング財務相は10月3日、高所得者向けの所得税の減税を撤回すると表明した。撤回するのは、年収15万ポンドを超える部分にかかる所得税率を45%から40%に引き下げる計画。
減税策全体の規模は年450億ポンドだが、撤回する高所得者向け減税の財政負担は数十億ポンドほどにすぎず、トラス政権の経済対策に対する市場の懸念が払拭されるかどうかは不透明。
英債務管理庁は、2023会計年度(2022年4月-23年3月)の国債発行額が1939億ポンドに増額されると発表した。4月時点では1315億ポンドを計画していた。
英中央銀行は9月22日、政策金利を0.5%引上げ、年2.25%にするとともに、量的緩和策として過去に買い入れた国債の売却も決定した。
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