ロシア国営ガス会社Gazpromは10月1日、イタリア向けの天然ガスの供給を停止した。
ロシアの天然ガスは、ウクライナからスロバキアを経由してオーストリアに入り、オーストリアとイタリアとスロベニアの国境のTarvisio でイタリアに入るが、Tarvisioでの天然ガス受入が止まった。
Gazpromは制裁への報復として欧州各国へのガス供給を制限している。
ロシアとドイツをバルト海経由で結ぶ天然ガスパイプラインはNordstream 2 がEUの未承認で稼働しておらず、Nordstream 1は点検を理由に停止しているが、9月末にNordstream 1で2か所、Nordstream 2で1か所のガス漏れが見つかったと発表した。(その後、Nordstream 2 でもう一カ所見つかった。)
Nordstream 1 及び 2 は、それぞれ2本のパイプラインがあるが、Gazpromによると、このうち3本が損傷、10月3日にいずれもガス漏れは止まったが、破損が原因とみられる圧力の急低下が起こっている。
Norstream 2 の1本だけが損傷なく、輸送可能である。但し、Norstream 2はロシアのウクライナ侵攻の兆候を受けドイツが承認手続きを凍結している。
2022/9/29 Nordstream Pipelineで漏れ
今回も制裁への報復かと見られたが、オーストリアへのガス供給は止まっていない。
実際は手続き上の問題であった。
Gazpromはイタリアへの供給停止について、ロシアからイタリアにガスを運ぶパイプラインが通過するオーストリアで規制変更を巡る問題が解消していないためだと説明した。
詳細は明らかにされていないが、事情は下記の通りと見られる。
オーストリア当局は、オーストリア経由のガス輸送について、10月1日から ルールを変更した。
新ルールは数カ月前から全ての市場関係者に通知されており、当事者全員が必要な手続きをとる必要があるが、 イタリア側がとっていなかった模様。
このため、オーストリア経由のイタリア向け輸送についてGazpromが輸送申請をしたが、オーストリア側に拒否され、停止した。
Gazpromはイタリア側と協議して解決策を見つけ、10月5日に輸送を再開した。イタリアのENIも供給再開を確認した。
需給逼迫への懸念から上昇していた欧州の天然ガス先物相場は急落した。
なお、EU加盟国は10月5日、ロシアに追加制裁を科すことで合意した。
ロシアとの貿易規制の対象品を鉄鋼やハイテク製品などで拡大するほか、ロシア産原油の取引価格に上限を設ける。上限を上回る価格で販売されたロシア産石油を第三国に海上輸送することを禁じる。
さらに、ロシア国防省当局者やウクライナで強行した住民投票に関与した人物など制裁対象を拡大する。
これを受け、ロシアのノバク副首相は10月5日、「このような手段を導入して価格制限の恩恵を受ける消費者に供給を行うことは望ましくない。市場ベースの価格メカニズムを提供する国にのみ供給を継続する」と発言したと報じ られた。
欧州各国はこの冬の天然ガス対策はなんとか取れそうだが、ロシアからの供給が断たれた場合、他のソースについては限度があり、次の冬については対策が取れないとされる。ロシア側はいろいろな形で揺さぶりをかけてくると思われる。
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イタリアはかつてガス輸入の約4割をロシアに依存していたが、今冬は供給が減っても北アフリカから調達できるという。
アルジェリアは天然ガスと石油を多く産し、天然ガスは地中海の海底パイプライン4本でイタリア、スペインに送られており、欧州の経済を支えている。
2022/8/23 アルジェリアの天然ガスをドイツに送る新パイプライン計画
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