石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」は10月5日にウィーンで久しぶりに対面形式により閣僚級会合を開き、11月の日量200万バレル減産で合意した。
声明では「世界経済と石油市場の見通しを取り巻く不透明さを勘案した」と述べ、景気の減速で原油がだぶつく前に需給を引き締める考えを示した。
OPECプラスは新型コロナウイルス禍の2020年5月、世界需要の1割に当たる日量970万バレルの協調減産に踏み切った。その後、減産量を減らしてきて、9月には10万バレルの増産としたが、景気減速などで需要が減るとの見方が強まり、前回の9月会合で10月に日量10万バレル減産することを決めた。
今回は当初、100万バレルの減産と噂されたが、一気に200万バレルとした。200万バレル減産は世界需要の2%に当たり、2020年の970万バレル減産以来の規模になる。
ホワイトハウスは5日の声明で大幅減産について「バイデン大統領は目先のことしか見えていない決定に失望している」と述べ、「この決定はエネルギー価格上昇ですでに混乱している低所得・中所得国に最も大きな負の影響をもたらす」とも指摘した。米議会と連携し、OPECの価格支配を弱めるための措置を検討するとした。
ガソリン価格を抑制するため、バイデン大統領の指示のもと、11月に新たに1000万バレルの石油備蓄の放出を実施すると発表した。
WTI原油価格の推移は下図の通りで、2022年3月7日に時間外で一時130.50$/bbl、終値では3月8日に123.70$/bbl と、2008年以来の高値を付けたが、現在は80$前後である。 OPECが大幅減産するとの情報から10月5日の終値は87.76ドル、一時は88.42ドルと期近物として約3週間ぶりの高値を付けた。
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OPECプラスは2020年4月12日、4月9日に続いてふたたび緊急テレビ会議を開き、アジアの原油市場が開く直前に日量970万バレルの減産で最終合意した。
2020/4/13 OPECプラス協調減産、日量970万バレルで最終合意
その後、下記の経緯をたどった。
(万バレル)
OPEC+ サウジ追加 合計 2020/5~6 970 970 2020/7 960 960 2020/8~12 770 770 2021/1 720 720 2 712.5 100 812.5 3 705 100 805 4 690 100 790 5 -35 655 -25 75 -60 730 6 -35 620 -35 40 -70 660 7 -44.1 575.9 -40 0 -84.1 575.9
「OPECプラス」は2021年7月18日の閣僚協議で、協調減産を8月から毎月日量40万バレルずつ縮小すると決めた。
2021/7/20 OPECプラス、8月から2022年末まで減産縮小で合意
OPECプラスは2022年6月2日、オンライン会合を開き、今後の原油の生産量を協議した。7月の減産縮小(=生産増)を本来の43.2万バレルから64.8万バレルに増やし、8月で減産を終了した。
2022/6/3 OPECプラス、7月の減産縮小幅を拡大、8月に減産終了
中東歴訪中のバイデン米大統領は7月15日、サウジアラビア西部ジッダで同国のサルマン国王やその息子で実質的な最高実力者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子らと会談した。双方はロシアのウクライナ侵攻を一因とするエネルギー価格高騰への対応などを協議。バイデン氏は石油増産に向けたサウジへの働きかけに手応えをみせた。
バイデン大統領の要請にもかかわらず、OPECプラスは8月3日、9月の増産を日量10万バレルのみにとどめた。
そして、OPECプラスは10月は再度日量10万バレルの減産に転じた。
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