英中央銀行、長期国債の一時的購入を発表、国債売却は延期

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英国新内閣のクワルテング財務相が9月23日に減税を含む経済対策「成長計画」を発表したが、これが財政やインフレの悪化につながる懸念を生んだ。

英国のこの経済対策は国際通貨基金(IMF)のほか、米国の財務省や連邦準備理事会(FRB)からも酷評されている。フランス、ドイツ、スペインの財務相も批判した。

IMFは9月27日、大規模で的を絞っておらず、国内の不平等拡大を招くほか、金融政策の効果を損なう恐れがあると警告し、大規模な減税や歳出拡大の代わりに、より的を絞った世帯・企業向け支援を行うよう当局に促した。

付記

クワーテング財務相は10月3日、高所得者向けの所得税の減税を撤回すると表明した。撤回するのは、年収15万ポンドを超える部分にかかる所得税率を45%から40%に引き下げる計画。

減税策全体の規模は年450億ポンドだが、撤回する高所得者向け減税の財政負担は数十億ポンドほどにすぎず、トラス政権の経済対策に対する市場の懸念が払拭されるかどうかは不透明。


9月26日の外国為替市場で、英ポンドが一時、1.035ドルまで下落し、過去最安値を更新した。これまでの最安値は1985年2月26日(プラザ合意の半年前)の1.042ドルであった。

2022/9/27 英ポンド暴落

インフレや財政悪化への不安から、英ポンドの下落に合わせ、英国債価格も急落(=国債利回りは急騰)した。30年物国債は3%台後半から一時5%強まで跳ね上がた。

これにより、低金利を前提にリスクが潜む運用に傾斜した年金が、国債価格の急落で資金難に陥る恐れが出た。

翌27日も長期国債を中心に利回りは上昇を続けた。

イングランド銀行(中央銀行)は9月28日、英国の長期国債を一時的に購入することを発表した。 この状況が継続すれば英国の金融の安定性にとって大きなリスクになるとして、今回の購入策に踏み切った。


購入は9月28日から10月14日までと限定しており、介入の規模は定めず、市況が通常の状態を取り戻すまで無制限に行う 。

市場が安定化すれば、購入した国債を売り戻す方針で、損失が生じた場合は財務省が補償することに同意している。


イングランド銀行は9月22日、政策金利を0.5%引上げ、年2.25%にするとともに、量的緩和策として過去に買い入れた国債の売却も決定した。

国債の積み上げは2021年末に終え、2022年3月から満期を迎えた分の再投資をやめて残高を落とし始めている。

イングランド銀行は9月21日時点で約8380億ポンド(約135兆円)の英国債を保有している。
償還と市場売却を合わせて、向こう1年間で残高を800億ポンド減らして7580億ポンドとする計画で、売却のための初回の入札は10月3日に実施する。
国債の市場売却に踏み切るのは、今回の引き締め局面では主要中銀で初めてとなる。

今回、この800億ポンドの保有国債の削減については変更しないものの、現在の市場環境に鑑み、10月3日から開始予定だった売却の開始を10月31日まで延期する 。

9月28日朝時点では30年英国債の利回りは一時、20年ぶりの高水準となる5%超を記録したが、発表を受けて約3.9%にまで低下した。

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