東芝が国内投資ファンドの日本産業パートナーズに優先権を与えたことが10月11日に報じられた。今後、買収価格などの詳細な条件の協議を始める。
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東芝は2022年4月21日の取締役会で、パートナー候補となりうる潜在的な投資家やスポンサーから、企業価値向上に向けた戦略的選択肢(非公開化を含む)に関する提案を募集することを決議した。
東芝は7月19日の取締役会で、上記の10件のなかから第2次入札プロセスに招聘する複数の本パートナー候補を選定した。非公開化に関する提案と、上場維持を前提とした戦略的資本業務提携に関する提案が含まれている。
報道では、下記の各社が選ばれたとされる。
1.産業革新投資機構(JIC) / 日本産業パートナーズ(JIP)
2. 米大手投資ファンド Bain Capital
東芝の筆頭株主で旧村上ファンド出身者がシンガポールで設立した Effissimo Capital Managementは、Bain Capitalが東芝株を公開買い付けした場合、保有株をすべて応募する方針であることが、Effissimoが3月31日に関東財務局へ提出した変更報告書で明らかになった。
2022/4/5 Bain Capital が東芝の買収を検討
3. 欧州拠点のCVC Capital Partners
4. カナダのBrookfield 唯一、東芝の上場維持を前提とした提案をしている。
2022/7/22 東芝再編、4陣営に絞り込み?
9月下旬に官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)が共同で2次入札に進んだ日本産業パートナーズ(JIP)との連携を解消する方針であることがわかった。
関係者によると、共同提案を予定していたが、東芝への出資戦略をめぐり意見に隔たりが生じた。
日本産業パートナーズ(JIP)は国内企業の出資を募り2次入札に臨む方針で、オリックスなどの10社超に対し、東芝への出資に参加するよう打診し、日本企業を交えた連合体での落札を目指している。
これに対し、産業革新投資機構(JIC)は、事業会社の参加に消極的で、国内外のファンドとの連携を模索しており、同じく2次入札に進んでいる米Bain Capital と連合を組む方向で調整しているという。
東芝は改正外為法で国が特に重要な「コア業種」として位置付ける原子力事業を抱えており、買収には国の重点審査が不可欠 である。
このため、Bain CapitalやCVC Capital Partnersの単独での買収は難しい。日本企業による買収に融資または優先株による出資で参加するのではないか。
カナダのBrookfield は唯一、東芝の上場維持を前提とした提案をしている とされる。 しかし、物言う株主等は高値での売却を狙っている。TOBで彼らの持株を買う場合は全株を買わざるを得ず(昭電による日立化成買収と同じ)、上場維持を前提にするのは不可能と思われる。
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先行して交渉に入る日本産業パートナーズは、国内勢主体で買収するため、各社に参加を呼び掛けている。
改正外為法のハードルを乗り越えるため、日本勢を中心にした陣営づくりを考えている。
中部電力が「原子力や火力事業で関係が深いため」、デューデリジェンス(資産査定)に参加して おり、1000億円弱を出資する方針を固めた。
東芝は、原子力分野で固有の原子炉技術を持ち、プラントの建設やメンテナンスのほか、東京電力福島第1原発の廃炉作業などを担う。中部電力の浜岡原発にも東芝の原子炉が納入されており、両社のつながりは深い 。
オリックスも1000億円規模の出資を検討していることを明らかにしている。
日本生命保険は非公開化も選択肢に再編を検討する東芝への出資について打診があったことを明らかにした。
JR東海、東レなども出資を打診された模様で、出資額はそれぞれ数十億から1千億円規模になる可能性がある。
各社が東芝への出資を検討しているのは、「東芝の製品には固有の技術が使われており、他社では替えがきかない」ため で、東芝が絡むインフラ事業の先行きに危機感を抱いている。
問題は取得価額で、10月11日の東芝株価終値は5016円で時価総額は2兆2千億円弱になる。
東芝に非公開化を提案しているファンドのうち、少なくとも1社が最大1株7000円で買収を検討していると報じられており、その場合の総額は3兆円になる。(約40%のプレミアム)
2021年4月7日に英投資ファンドのCVC Capital Partnersが買収を提案した。
前日6日終値に約30%のプレミアムを加え、1株5000円での買い取りで、時価総額は1兆7437億円に対し、TOBが成立した場合の買収額は2兆3,000億円弱となる。
しかし、提案書になんら具体的な詳細情報が記載されておらず、東芝は4月20日、買収交渉の中断を発表した。
2021/4/14 英投資ファンド、東芝に買収提案
現在の時価5000円はCVCが2021年4月に約30%のプレミアムを上乗せして提案した金額と同じで、買収を前提とした価格である。
その後、本年6月には6000円 間近まで上がったが、物言う株主は売却せず、それ以上を狙っているのは間違いない。
しかし、これに更に40%ものプレミアムを上乗せするのは、高過ぎると思われる。買収後に採算がとれるであろうか?
出資金をいくら集められるか、残り金額を金融機関から借り入れできるかどうか、が問題となる。
(報道では、日本産業パートナーズは2兆円半ばでの買収、うち1兆円規模での出資を検討しているのではないかとしている。)
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