イタリアの右派「イタリアの同胞」を率いるジョルジャ・メローニ(Giorgia Meloni)党首(45)は10月21日、Sergio Mattarella大統領からの首相候補指名を受諾した。
10月22日に大統領府で宣誓し、イタリア初の女性首相とな った。
9月の総選挙で右派連合が過半数を奪取し、「イタリアの同胞」のMeloni 党首が首相に就任する方向であったが、組閣人事を巡ってベルルスコーニBerlusconi 元首相らとの連立内の駆け引きが激化し、野党の一部を含めた連立の再編成の兆しも出ていた。
連立の一員で少数政党の「われらに中道を 」の党首などが仲介し、交渉の結果、ようやく妥協点に達し、組閣にこぎつけた。
「イタリアの同胞」はファシスト党の流れをくみ、極右政党といわれており、イタリアとして第2次大戦後、最も右寄りの政権となる。それでも支持を集めるのは、左右両勢力が参加したドラギ政権に加わらず、ほぼ唯一の野党として批判を続けてきたため。
右派「同盟」とSilvio Berlusconi 元首相率いる「フォルツァ・イタリア」(Forza Italia「イタリア頑張れ」)との連合によって、第2次世界大戦以降で最も右派的な連立政権が誕生する。
「フォルツァ・イタリア」のSilvio Berlusconi元首相はロシアのプーチン大統領との近さが指摘され ており、ロシアのウクライナ侵攻の責任はウクライナのZelenskyy大統領にあると明言している。
また、閣僚人事を巡るメローニ党首との確執も取り沙汰されており、メローニ党首について、「威圧的... 横暴... 傲慢... 攻撃的」と批判した。「同盟」のMatteo Salvini書記長(元内相)は、ウクライナ侵攻をめぐるEUのロシアへの制裁を批判している。
連立政権として、ロシアのウクライナ侵攻をめぐるEUの結束にどう対応していくのかが今後の焦点となるが、メローニ氏は、ロシアによるウクライナ侵攻などに関しEUやNATOと緊密に連携する姿勢を強調した。
メローニ党首は選挙後の10月4日にウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談し、ロシアの軍事侵攻を受けているウクライナ国民の自由のために全面的な支援を惜しまないとしたうえで「ロシアがウクライナの4つの州を併合したとする宣言は、法的にも政治的にも価値はない」と述べた。
メローニ氏は同日、閣僚名簿を提出した。
「フォルツァ・イタリア」のSilvio Berlusconi元首相(86歳)自身は入閣しない。
Berlusconiは実業家で〈マス・メディアの帝王〉とも称される。
第一次政権(1994年-1995年)、政権奪還後の第二次政権(2001年-2006年)、そして二大政党制を迎えての第三次政権(2008年-2011年)と三度の政権での首相経験年は9年を超える。
買春疑惑、議員買収疑惑の検察による追求や離婚した妻からの高額支払い請求訴訟などが重なり、さらに最高裁が脱税疑惑で禁固1年と公職追放2年の判決を確定させる事態となった。
2013年11月上院はベルルスコーニの議員資格剥奪を賛成多数で可決,ついに20年近く維持してきた議席を失った。
しかし莫大な資産は変わらず,〈自由の国民〉を解散して結党した〈フォルツァ・イタリア〉の党首の地位に依然として留まり、政界引退を否定している。
「同盟」のMatteo Salvini書記長と、「フォルツァ・イタリア」のAntonio Tajani 元欧州議会議長の2人を副首相に充てる。
Salvini氏はインフラ担当大臣、Tajani氏は外相を兼務する。
経済相には「同盟」のGiancarlo Giorgetti を起用した。
法相人事を巡りBerlusconi氏と意見が衝突し 、連立協議は物別れに終わる可能性もあった。しかし反対を押し切る形で「イタリアの同胞」の下院議員で元検事のCarlo Nordio を起用した。一方、ベルルスコーニ氏の主張を受け入れ「フォルツァ・イタリア」からの5人の入閣を決めた。
最終的に閣僚ポストは、「イタリアの同胞」が9、同盟が5、フォルツァ・イタリアが5となる。
ドラギ現首相は、物価高に対する国民の不満を受けて、連立与党内での支持を失い、退陣表明に追い込まれた。経済の安定が最重要課題となる。
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イタリアで9月25日、上下院総選挙が行われ、即日開票された。中道右派連合が上下院で過半数の議席を獲得した。
獲得議席数は下記の通り(既報を修正)。今回から下院は630から400に、上院は315から200に定数が削減された。
得票率 |
議席数 | ||||
2018 | 2022 | 上院 | 下院 | ||
(右派連合) | イタリアの同胞 | 4.4% | 26.08% | 65 | 119 |
同盟 | 17.4% | 8.82% | 30 | 66 | |
フォルツァ・イタリア | 14% | 8.11% | 18 | 45 | |
われらに中道を | 2 | 7 | |||
合計 | (115) | (237) | |||
(左派連合) | 民主党 | 18.8% | 19.1% | 40 | 69 |
グリーン/左派連合 | 4 | 12 | |||
others | 4 | ||||
合計 | (44) | (85) | |||
Five Star | 32.7% | 15.3% | 28 | 52 | |
Action - Italia Viva | 9 | 21 | |||
others | 4 | 5 | |||
合計 | 200 | 400 |
2022/9/27 イタリアにポピュリズム政権
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