https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/collaborations/2022_10_25_01.html
COVID-19の初期に流行した欧州株(D614G株)に感染歴があり、新型コロナウイルスmRNAワクチンを2回接種した人の血液から、抗体の情報を持つ免疫細胞を一細胞ずつ分離し、それぞれ抗体遺伝子を取得した。
それらの候補についてSARS-CoV-2スパイク抗原に対する結合力を基準に選択し、10種のヒトモノクローナル抗体を作製 、そのうち3つの抗体が、D614G、デルタ株、そしてオミクロンBA.1株に対して中和活性を有することがわかり、MO1、MO2、MO3と命名した。
それらについてD614G、デルタ株、オミクロンBA.1株、BA.2株、BA.5株のスパイクタンパク質への結合能を調べた。
欧州株
(D614G株)デルタ株 オミクロン
BA.1株オミクロン
BA.2株オミクロン
BA.5株抗体MO1 〇 〇 〇 〇 〇 抗体MO2 〇 〇 〇 〇 X 抗体MO3 〇 X 〇 〇 X
次に、各抗体の中和活性を定量的に評価した。
欧州株
(D614G株)デルタ株 オミクロン
BA.1株オミクロン
BA.1.1株オミクロン
BA.2株オミクロン
BA.5株抗体MO1 23.62 15.84 4.00 10.64 20.31 15.67 抗体MO2 65.81 88.24 17.71 36.05 151.2 陰性 抗体MO3 231.57 陰性 594.63 未実施 701.95 陰性
MO1、MO2、MO3はオミクロンBA.2.75株にも中和活性を示した。
BA.2.75株の細胞への感染力は流行中のBA.5株よりも高くこれまでの変異株の中で最高であり、ワクチンの効果については最も弱い可能性がある。
https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2022_08_30_02.html
MO1、MO2についてバイオレイヤー干渉法によってBA.2株に由来するスパイク抗原の受容体結合ドメインとの分子間相互作用の強さを評価した結果、MO1はBA.2株に由来するスパイク抗原の受容体結合ドメインに高い親和性で結合し、またBA.5株に由来するスパイク抗原に対しても高い親和性を維持していることが示された。
MO1がスパイクタンパク質に結合する様式をクライオ電子顕微鏡によって解析した。MO1はオミクロンでも変異が起こっていない部位を中心に結合しており、MO1が幅広い変異株に対しても中和活性を持つ仕組みが明らかにな った。
結論として、MO1は過去に日本で流行したD614G、デルタ株、オミクロンBA.1株、BA.1.1株、現在問題になっているBA.5株およびBA.2.75株のすべてに対して高い中和活性を示し、幅広いSARS-CoV-2変異株に対して有効なユニバーサル中和抗体として、抗体医薬への応用が期待できる。
現在、MO1がウイルスの中和を引き起こす詳細なメカニズムの解析を行うと同時に、実際の生体内でもSARS-CoV-2のウイルス感染を阻止できるかについて動物実験により有効性の解析を実施しており、オミクロンBA.5株やBA.2.75株、そして今後発生が予想される新規SARS-CoV-2変異株に対しても有効な抗体医薬としての臨床応用を目指している。
この研究成果は「bioRxiv」にオンライン掲載された (査読前)
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