韓国サムスン電子は10月27日、創業家3代目で2012年から副会長を務めている李在鎔氏(54)を執行会長に任命したと発表した。
サムスン電子は声明で「取締役会は、現下の国際事業の不確実な環境、説明責任の強化と事業安定の必要性を踏まえ人事案を承認した」と説明した。
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2020年10月25日に2代目の李健熙会長(78歳)が死去した。
2014年に急性心筋梗塞で倒れ、長く入院、実質的に長男の李在鎔副会長に権限移譲していた。
2021/5/4 故李健熙サムスングループ会長の遺産相続
10月25日に故李健熙会長の2周忌を迎え、一族が集まり追悼式を行った。
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新会長は、1991年のサムスン入社から31年、2012年の副会長昇進からは10年目にしての就任であるが、サムスンバイオロジクス会計操作疑惑で裁判中の立場であるため「不適切だ」との批判の声もあがっている。
新会長はこの日、就任式と就任演説を行なわず、ソウル中央地裁で開かれた裁判に出廷した。毎週1-2回開かれるサムスン経営権の違法継承疑惑の裁判である。
同氏は2つの裁判にながらく関わってきた。1つは終了したが、もう一つは継続中で、少なくとも3-4年間続くとみられている。
1つは、韓国の元大統領、朴槿恵被告側への贈賄罪などに問われた国政介入事件である。
一審で懲役5年の実刑判決を受けたサムスングループ経営トップのサムスン電子副会長、李在鎔被告らの控訴審判決公判が2018年2月5日開かれた。
ソウル高裁は地裁判決を破棄し、李被告に新たに懲役2年6カ月、執行猶予4年を言い渡した。李被告は約1年ぶりに釈放された。
2017年8月の一審では5つの起訴事実すべてが有罪とされたが、高裁は焦点となっていた贈賄の一部と海外への不正な送金などを無罪とした。
2018/2/5 サムスントップ釈放
李在鎔副会長が朴槿恵・前大統領らへの贈賄罪に問われた差し戻し審で、ソウル高裁は2021年1月18日、贈賄罪などを有罪とし、李被告に懲役2年6月(求刑は9年)の実刑判決を言い渡した。
執行猶予は付かず、再び収監された。
サムスン側は1月25日、高裁判決を受け入れ、上告を断念したと明らかにした。検察側も上告せず、26日午前0時に判決は確定した。
収監中の李被告の残り刑期は約1年6カ月で、満期の場合は2022年7月に出所することになる。
2021/1/19 サムスントップ、贈賄罪差し戻し審で懲役2年6月、再び収監
韓国の法務部は2021年8月13日、贈賄や横領などの罪で収監されている韓国サムスン電子の李在鎔副会長を仮釈放した。
法務部は声明で「社会の受け止めや、本人の受刑時の生活態度など、さまざまな要因を総合的に評価した」と述べた。
仮釈放された受刑者は保護観察下となり、就業制限や海外渡航制限が課される。これらの制限なく経営復帰するためには法務省の承認が必要となる。
世界的に半導体が不足する中、台湾積体電路製造(TSMC)や米インテルといった競合は巨額の投資を行っているが、サムスンで主要な戦略的決断が下されていないとの懸念が高まる中、政界や社会、そして広範な経済界からも李氏の仮釈放を求める声が高まっていた。
2021/8/14 サムスン副会長、仮釈放
韓国政府は2022年8月12日、朴槿恵元大統領らへの贈賄罪などで有罪判決を受けたサムスングループ経営トップの李在鎔サムスン電子副会長らを8月15日の光復節(日本による植民地支配からの解放記念日)に特別赦免(恩赦)し、減刑や復権の対象にすると発表した。
前年8月に仮釈放され、刑期は2022年7月に満了したが、特定経済犯罪加重処罰法上、5年間は就業が制限されていた。恩赦を受けて自由な経済活動ができるようになった。
2022/8/13 韓国、サムスンやロッテのトップらを恩赦
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検察は2020年6月4日、李在鎔副会長らについて、資本市場法違反(不正取引及び相場操作行為)や偽証などの容疑で逮捕状を請求した。
今回は2015年のサムスン物産と第一毛織の合併過程における背任、サムスンバイオロジクスの粉飾会計などサムスン経営権継承を巡る一連の疑惑である。検察は本件を3年以上先延ばしにしていた。
争点は次の3つ。
1. サムスン物産・第一毛織の合併の違法性
2. 第一毛織子会社のSamsung BioLogicsの4兆5000億ウォン粉飾会計疑惑
3. 李副会長が関与したのか?
不正が疑われる行為の企画・実行者を突き止める一方、李氏を頂点とするグループ首脳部がどこまで報告を受け、指示を出していたかを探る考えである。
韓国の検察捜査審議委員会は6月26日、検察に対し、本件捜査を中断し不起訴にするよう勧告した。
しかし、ソウル中央地検は2020年9月1日、李在鎔サムスン電子副会長を株価操作などの罪で在宅起訴した。
2020/6/2 韓国検察、サムスン電子副会長を再度聴取、経営権継承巡る疑惑
この裁判は一審だけで1年6カ月間続いており、李新会長は毎週1-2回裁判に出席している。
最高裁まで争われた場合、少なくとも3-4年間続くとみられている。
司法リスクは李会長の経営活動を妨めざるを得ない。これまで李会長は海外出張も夏季休暇などで裁判所が休廷する期間に合わせて日程を調整してきた。
本年5月にバイデン米大統領が京畿道平沢市のサムスン電子半導体工場を訪れ、尹錫悦大統領と初めての首脳会談を行った際にも、裁判の日とダブルため、李会長の同席が危ぶまれた。裁判所は前日午後遅くになって、裁判への欠席を許可した。
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