次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けた取組、先端半導体の国産化へ新会社

| コメント(0)

経産省は11月11日、2020年代後半の次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けた取組について公表した。

次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けて

次世代半導体は、量子・AIなど大きなイノベーションをもたらす中核技術で、海外の研究機関や産業界とも連携しながら、国内のアカデミアと産業界が一体となって取り組むことで、我が国全体の半導体関連産業の競争力強化を目指す。

トヨタなど国内8社は同日、先端半導体の国産化に向けた新会社を共同で設立したことを発表した。

付記

新会社Rapidusと米国のIBMは12月13日、日本が半導体の研究開発・製造におけるグローバルリーダーを目指す取り組みの一環として、ロジック・スケーリング技術の発展に向けた共同開発パートナーシップを締結したことを発表した。

同社は下記の通り、開発テーマ として「米国IBM社他と連携して2nm世代のロジック半導体の技術開発を行い、国内短TAT(Turn Around Time:製品を完全に仕上げるまでに要する時間パイロットラインの構築と、テストチップによる実証を行っていく 」としている。

本パートナーシップの一環として、RapidusとIBMは、IBMの画期的な2ナノメートル(nm)ノード技術の開発を推進し、Rapidusの日本国内の製造拠点に導入する。

IBMは2021年に世界初の2nmノードのチップ開発技術を発表した。このチップは、現在最も先進的な7nmチップに比べて45%の性能向上、または75%のエネルギー効率向上の達成が見込まれる。


次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けた取組(概要)

1. 我が国半導体産業復活の基本戦略

IoT用半導体生産基盤の緊急強化(Step:1

日米連携による次世代半導体技術基盤(Step:2)

グローバル連携による将来技術基盤(Step:3)
グローバルな連携強化による光電融合技術など将来技術の実現

2. Beyond 2nmの次世代半導体の確保

世界中で次世代半導体の開発が加速

最先端半導体はFin型からGAA型に構造が大きく変わり、量産に向けて高度な生産技術が必要となる転換期
10年前にFin型の量産に至らなかった日本が改めて次世代半導体に参入するラストチャンス

その実現には、TSMC誘致、拠点拡大によるキャッチアップを進めるとともに、10年の遅れを取り戻す、これまでとは異次元の取組が必要。

3. 日米連携による半導体産業政策

本年5月に開催した第1回日米商務・産業パートナーシップ閣僚級会合において、半導体協力基本原則を合意した。

以下の基本原則に沿って、二国間の半導体サプライチェーンの協力を行う。

 ・オープンな市場、透明性、自由貿易を基本
 ・日米及び同盟国・地域でサプライチェーン強靭性を強化するという目的を共有
 ・双方に認め合い、補完し合う。

特に半導体製造能力の強化、労働力開発促進、透明性向上、半導体不足に対する緊急時対応の協調及び研究開発協力の強化について協力

半導体協力基本原則に基づいた日米間での共同研究の実施を見据え、次世代半導体研究における国内外の英知を結集するための新しい研究開発組織を立ち上げることを7月に決定した。

次世代半導体研究のための新しい研究開発組織について、名称を「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC:Leading-edge Semiconductor Technology Center)」とし、年内の立ち上げを目指す。

参加機関:物質・材料研究機構、理化学研究所、産業技術総合研究所、東北大学、筑波大学、東京大学、東京工業大学、
     大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構、
Rapidus

4. 次世代半導体プロジェクトの体制


LSTCは上記のとおり。

Rapidusは11月11日設立を発表した。

下記8社が出資する。

トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア(半導体大手)、三菱UFJ銀行
出資額は三菱UFJ銀行が3億円、他の7社は各10億円。

付記

社名:Rapidus株式会社(英文名:Rapidus Corporation)

設立日:2022年8月10日

資本金等:73億4,600万円(2022年11月時点。資本準備金の額を含む)

Homepage:https://www.rapidus.inc/


自動運転やAI、スマートシティーなど大量のデータを瞬時に処理する分野に欠かせない先端半導体の技術開発を行い、5年後の2027年をめどに回路幅が2ナノメートル以下の先端半導体の量産化を目指す。

政府も研究開発拠点の整備費用などに700億円を補助する。(下記)

社長に就任した小池淳義氏(ウエスタンデジタルジャパン元社長)は、「日本には半導体をしっかり作る技術があると確信している。強みを生かすのが我々に課せられた最後のチャンスだ」と述べた。

小池社長は「パイロットラインで2兆円、量産ラインで3兆円かかるとみる」としており、今後の資金調達が問題となる。


今回、次世代半導体の将来の製造基盤の確立に向けた研究開発プロジェクト(ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業)の採択先をRapidus㈱とすることに決定した。

開発テーマ:日米連携に基づく2nm世代半導体の集積化技術と短TAT製造技術の研究開発

• 米国IBM社他と連携して2nm世代のロジック半導体の技術開発を行い、国内短パイロットラインの構築と、テストチップによる実証を行っていく。

•2022年度は、2nm世代の要素技術を獲得、EUV露光機の導入着手、短TAT生産システムに必要な装置、搬送システム、生産管理システムの仕様を策定し、パイロットラインの初期設計を実施する(開発費:700億円)。

• 研究期間終了後は、その成果をもとに先端ロジックファウンドリとして事業化を目指す。

5. 次世代半導体研究開発プロジェクトのスケジュール

次世代半導体事業については、日米首脳間合意に基づいて設置された日米ジョイントタスクフォースにおいて、経産省と商務省の間で進捗を継続的に管理をしていく。

今後立ち上がる米国
NSTCと日本版NSTCLSTC)との連携により、日米のベスト&ブライテストの結集を図る。

ーーー

半導体の開発や生産に関しては、米国は本年8月、520億ドル以上を投じることなどを盛り込んだ法律を成立させたほか、EUも本年2月、官民合わせて430億ユーロ余りを投じる方針を示している。

2022/7/29 米議会、「CHIPS法」を可決

日本でも、先端半導体工場の新増設を支援する改正法が2021年12月20日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。

高速・大容量通信規格「5G」のシステム構築に不可欠な「特定半導体」を製造する事業者が対象で、継続的な生産、需給逼迫時の増産対応などを条件とし、工場の新増設にかかる設備費用の最大半額を補助する。(その後、最低10年間は生産を続けることを求めることとした。)

経済産業省は2022年6月17日、TSMCが熊本県で建設中の半導体の工場に最大4760億円の助成をすると決めた。TSMCとJASMが申請していた計画を同日付で認可した。
半導体産業の強化に向けた6170億円の基金から補助する第1号の案件になる。

2021/10/18 半導体大手、台湾のTSMCが日本で工場建設  (TSMCの米国事業も記載)

経済産業相は7月26日の閣議後会見で、キオクシアと 、同社と米Western Degitalの合弁会社から共同で申請されていた生産設備整備の計画を 、「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」(5G促進法)に基づく「特定半導体生産施設整備等計画」に認定したと明らかにした。
  • 経産省として同計画が5G促進法の認定基準を満たし、日本における先端メモリー半導体の安定的な生産に資するものと判断
  • 足元の半導体サプライチェーンの強靱化や半導体産業の発展への貢献に加え、半導体に関する日米連携の強化にも資する
  • 助成額の上限は約929億円

2022/7/28 経産省、キオクシアの半導体工場計画を認定

経産省は9月30日、Mycron Technologyのマイクロンメモリ ジャパンを認定した。助成額上限は464.7億円。
DRAMの新工場を総投資額最大8000億円で東広島市の既存工場近くで建設、2024年までに稼働する。

この3件で助成額は6,154億円となり、ほぼ上限に達した。


付記

Rapidusは12月6日、ベルギーに本拠を置く研究機関「imec(アイメック)」と技術協力を進める覚書を交わした。

imecは非営利の国際的な研究機関で、世界で5000人超の人員を抱え、電機や医療などの先端技術に関する研究開発を主導してきた。

imecは半導体の微細な回路形成に使う先端技術の確立などで中心的な役割を担ってきた。

半導体に微細な回路を形成するためのEUV(極端紫外線)露光技術もimecとオランダの装置大手、ASMLが中心となり確立した。台湾積体電路製造(TSMC)などの半導体メーカーをはじめ、半導体関連の装置、素材メーカーが社員を派遣している。

Rapidusはimecに技術者を派遣し、先端分野の知見を獲得する。imecも日本での研究開発チームの設立を検討するほか、国が年内の設立を予定する半導体の研究開発拠点での協力も視野に入れる。

コメントする

月別 アーカイブ