英国のJeremy Hunt蔵相は11月17日、Autumn Statement 2022 speech を行ない、財政再建策の概要を発表した。
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Liz Truss保守党新党首は9月6日新首相に任命され、新政権のKwasi Kwarteng 財務相は9月23日、1972年以来の大規模減税を柱とする「成長プラン」を発表した。
5年間で1610億ポンド(約25兆5000億円)の経済対策で概要は次のとおり。
1) エネルギー対策 10月から半年で600億ポンド(約9.3兆円)
家計向け:光熱費価格に上限、加えて、所帯ごとに半年で400ポンド割引
企業向け:電気・ガス卸売価格に上限、光熱費は想定水準の半分に2) 大規模減税 5年間で450億ポンド(約7兆円) *党首選での公約は総額300億ポンド
2023/4予定の法人税率引き上げ(19%→25%)を取り止め (G20で最低税率)〈10/14 撤回〉
2022/4の国民保険料1.25%引上げの撤回
2023/4からの所得税基本税率1%引き下げ(20%→19%)
最高税率の引き下げ(45%→40%)〈10/3 撤回〉住宅購入者の印紙税引き下げ
海外からの買い物客の消費税を免除するデジタルシステムの早期導入
3)バンカーの賞与制限は撤廃
この経済対策は財源が明確でないことから、財政やインフレの悪化につながる懸念を生み、9月26日の外国為替市場で、英ポンドが一時、1.035ドルまで下落し、過去最安値を更新した。
Kwarteng 財務相は10月3日、高所得者向けの所得税の減税を撤回すると表明した。撤回するのは、年収15万ポンドを超える部分にかかる所得税率を45%から40%に引き下げる計画。
Truss首相は10月14日、Kwasi Kwarteng 財務相を解任し、後任にJeremy Hunt元外相が就任すると発表した。9月の政権発足直後に打ち出した経済対策を巡って混乱が広がった責任を明確化した。同時に前政権が計画した「法人税率引き上げ(19%→25%)」の取り止めを撤回した。
2022/10/17 英トラス首相、財務相を解任 法人税減税を撤回
Truss首相は10月20日、辞任を表明した。与党保守党党首の選挙の結果、英国の次期首相にSunak元財務相(42歳)が決まった。蔵相にJeremy Huntが就任した。
2022/10/25 英国の次期首相にSunak元財務相
新政権は財政への市場の信頼回復とインフレ抑制を目的に、Truss前政権の減税路線を転換し、300億ポンドの歳出削減と250億ポンドの増税を実施する。
1. 歳出削減
業務の効率化などを通じ、300億ポンドの歳出削減
- 予定された公共事業は2025年までは継続、その後は予定より遅らせる。
- Englandでは国民保険サービス予算は次の2年は年33億£ 増、教育費は23億£ 増
- Scotland, Wales、Northern Irelandでも予算増
- 防衛費はNATO目標の2%維持
- 海外支援は5年間は0.5%とする。(目標は0.7%)
2. エネルギー支援
- 家庭向けエネルギー価格上限 4月以降も1年延長 但し、上限は年 £2,500から £3,000 に。
- 一定の資産以下の家庭に来年、£900 の支援
- 年金家族に£300, 身体障碍者に £150 の支援
- 石油・ガス企業への棚ぼた課税を25%から35%に引上げ、2028/3まで延長
- 発電企業に1月から新たに45%課税
3. 税制 5年間で450億ポンド(約7兆円)から250億ポンドの増税 へ
・法人税率引き上げ 19%→25% 利益5万ポンド以下の小企業は従来通り19%
9/23には19%に留めると発表されたが、10/14に撤回。
・所得税最高税率(45%)の対象を年収15万ポンド以上から12万5140ポンド以上に引き下げ
税率 所得
現状 改正 所得控除 0% 最初の12,570ポンド 2028年まで凍結 基本税率 20% 12,571~50,270ポンド 同上 高税率 40% 50,271~150,000ポンド 50,271~125,140ポンド 追加税率 45% 150,000ポンド以上 125,140ポンド以上 9/23には最高税率を40%にする案が出され、10/3に撤回された。
・Windfall tax エネルギー価格高騰による棚ぼた課税
現状、石油・ガス企業に追加で25%が課税されているが、今回 35%課税に変更、2028/3まで延長
新たに発電企業に1月から45%課税
・株式配当への課税対象を段階的に引き上げ
・電気自動車に2025/4から新たにRoad Tax を課税
4. その他
・Minimum wage 引上げ 4月から£9.50 → £10.42
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