ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫上席研究員の試算によると、2023年度の公的年金の額面上の支給額が3年ぶりの引き上げられる。各紙が報じた。
但し、本年の物価は年間で2.5%上昇するのに対し、少子高齢化に応じて年金額を抑制する仕組みが適用され、68歳以上の場合、支給額は1.8%の増加にとどまり、差し引き0.7%分が目減りすることになる。
これに対し、米国で約7千万人に支給される年金給付(Social Security Benefit)は、物価上昇に伴う生計費調整(COLA:Cost-of-Living-Adjustment)の規定により、前年第3四半期の勤労者消費者物価指数の平均がそのまま採用され、2023年は8.7%の大幅増額となる。
2022/10/18 米国の2023年の年金給付、生計費調整で8.7%の大幅アップ
日本の場合は、既裁定者(68歳到達年度以後の受給権者)の場合、基本は物価変動率をとるが、賃金変動率が物価変動率より低い場合は賃金変動率を採用する。更にマクロ経済スライドを適用し、公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を改定率から控除する。
詳細は 2022/1/22 2022年度の公的年金支給額、前年度から0.4%引き下げ
具体的計算は下記の通りだが、来年度の計算に当たり、ニッセイ基礎研究所では次の予測を使った。
直近1年の物価変動率 +2.5%
過去3年の名目手取り賃金変動率 +2.8%
マクロ経済スライド -0.4%
既裁定者(68歳到達年度以後の受給権者)
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 予想 |
原則 | |
直近1年の物価変動率(基本) | +0.5% | +0.0% | -0.2% | +2.5% |
基本は物価変動率 |
過去3年の名目手取り賃金変動率 | +0.3% | -0.1% | -0.4% | +2.8% | |
(採用) | +0.3% | -0.1% | -0.4% | +2.5% | |
マクロ経済スライド 公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を改定率から控除 |
-0.1% | -0.1% |
当期 -0.2% |
当期 -0.4% 繰越 -0.3% 計 -0.7% |
上記の(採用)がマイナスの場合は、調整せず、その分を翌年に繰り越す。 |
最終改定率 | +0.2% | -0.1% | -0.4% | +1.8% | |
マクロ経済スライド繰り越し | -0.1% | -0.3% | ー |
65歳に到達し、新たに年金を裁定(決定)するときには、直近の賃金の動向を反映させるため、賃金の変動による改定(+マクロ経済スライド)を行う。
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 予想 |
原則 | |
過去3年の名目手取り賃金変動率 | +0.3% | -0.1% | -0.4% | +2.8% | |
マクロ経済スライド 公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を改定率から控除 |
-0.1% | -0.1% |
当期 -0.2% |
当期 -0.4% 繰越 -0.3% 計 -0.7% |
上記の(採用)がマイナスの場合は、調整せず、その分を翌年に繰り越す。 |
最終改定率 | +0.2% | -0.1% | -0.4% | +2.1% | |
マクロ経済スライド繰り越し | -0.1% | -0.3% | ー |
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