英国最高裁、スコットランド独立を問う住民投票 実施認めず

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英最高裁は11月23日、スコットランドの議会は独立を問う住民投票を実施するための立法権はないとし、英政府の同意を得ずに住民投票は実施できないとの判断を下した。

スコットランド自治政府の Sturgeon 首相は、英国からの独立の是非を問う2度目の住民投票を2023年10月に実施する計画を表明していた が、英国政府が反対したため、最高裁判所に判断が委ねられていた。

リード最高裁長官は判決文を読み上げ、住民投票を行う権限は英議会に属し、「スコットランド自治議会は(これに関する)立法の権限を有しない」と述べた。全会一致の判断だったという。

1998年スコットランド法30条では、住民投票の実施権限を英国議会からスコットランド議会に移譲するとなっている。しかし、特定の事項については移譲されない。

今回の"Should Scotland be an independent country?" と問う住民投票については、スコットランドと英国の統合を含む憲法の問題であり、移譲されない問題(reserved matters)に属し、英国議会の権限であるとした。

単に意見を聞くだけだとするスコットランド側の主張も、正当に実施された住民投票の結果は政治的に大きな意味を持つとして否定した。

判決文 https://www.supremecourt.uk/cases/docs/uksc-2022-0098-judgment.pdf

最高裁判所の判断を受けて、 Sturgeon 首相は「スコットランドの人々が意思を表明できる民主的な別の手段を見つけなければならない」などと述べ、引き続き独立の道を模索する考えを示し 、「英議会下院の次の総選挙が事実上の住民投票になる」と述べた。

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スコットランド王国は1707年合同法により、イングランド王国に統合され、Kingdom of Great Britainとなった。

ブレア内閣はスコットランド住民の独立志向を抑えるため、1999年にスコットランド議会を設置して、中央政権の権限を大幅にスコットランド自治政府に移譲した。

スコットランドの独立志向は一時的に抑えられたかに見えたが、2011年5月のスコットランド議会選挙でスコットランド独立を公約に掲げるスコットランド国民党が議会の過半数を占める大勝利を収め、党首が自治政府の首相に就任した。

2012年10月にイギリスのキャメロン首相と自治政府首相の会談で住民投票の実施が決まった。

スコットランドの独立を問う最初の住民投票は2014年9月18日に実施された。住民投票では55%が独立に反対し、否決された。


2016年のBrexit 国民投票ではスコットランドは62%が離脱に反対した。


スコットランドの自治政府のNicola Sturgeon 首相は2019年4月24日、2021年までに独立の是非を問う2回目の住民投票を行う準備を開始する意向を示した。

もし、スコットランドが独立し、EUに帰属すると問題は大きい。

国境管理(モノ、ヒト)、通貨、北海原油の帰属、 安全保障(原子力潜水艦基地はスコットランドにある)、・・・・

2019/4/25 スコットランド首相、独立問う住民投票再実施 目指す

ジョンソン首相は2019年12月のSturgeon 首相との電話会談で、「2014年の独立住民投票の結果は決定的であり,第二回独立住民投票を認めるつもりはない」と発言した。


2021年5月6日に投票が行われたスコットランド議会選挙は、与党スコットランド民族党が64議席を獲得し第1党となった。
独立のための住民投票を公約に掲げる同党は単独過半数を目指していたが、過半数(65)には1議席届かなかった。

しかし、独立を支持する緑の党は8議席を獲得し、独立を支持する勢力で72議席となり過半数を確保した。

2021/5/10 スコットランド議会選挙、独立派が過半数確保 


スコットランド自治政府の
Nicola Sturgeon 第一首相は2022年6月28日、スコットランド独立の是非を問う2度目の住民投票を2023年10月19日に行う意向を示した。

住民投票で問う内容について、2014年の前回投票と同じ、「スコットランドは独立国となるべきか?」にすると述べた。

また、すでに (当時の)ボリス・ジョンソン首相に書簡を書き、投票実施の正式な承認を求めたが、政府の承認が得られなくても投票計画を進めていくと述べた。その上で、住民投票は「議論の余地なく合法的」かつ合憲である必要があると強調した。

これに対し、英国政府は、提案を検討するとしながらも、今は住民投票を再び行う「タイミングではない」という立場に変わりはないと強調した。また、英国政府が憲法を解釈する権利をもっていることは「明確」だとし た。

この問題は英最高裁の判断に委ねられ、今回の判断となった。

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