日本銀行は12月20日の金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の運用の一部見直しを決定した。
国債買い入れ額を大幅に増額しつつ、0%程度に誘導している長期金利の許容変動幅を従来の上下0.25%程度から同0.5%程度に拡大する。金利のより自由な変動を許容することで市場機能の改善を促し、金融緩和の持続性を高める狙い。
長期金利は足元で変動幅の上限近くで推移しており、事実上の利上げとなる。
マイナス金利政策や上場投資信託の買い入れ方針、政策金利のフォワードガイダンス(先行き指針)は据え置いた。
日銀の黒田総裁は、「市場機能改善に向けたもので、利上げではない」と強調。今回の政策修正について「出口戦略の一歩ではない。さらなる変動幅拡大は必要ない」と述べた。
10月のコアCPIは 1982年2月以来、40年8か月ぶりの水準となる前年比3.6%上昇となった。日銀が目標とする2%を大きく上回る 。しかし日銀では、コストプッシュによる物価上昇は持続性が乏しいとして、目標実現には相応の賃上げが不可欠と位置付けている。
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日銀は、2016年9月「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き・量的・質的金融緩和」の導入を決定した。
短期金利、および10年物国債金利の操作目標の2つの金利水準を提示する。
- 短期金利は日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス金利を適用(従来通りマイナス0.1%)
- 長期金利は10年物国債金利が0%程度で推移するように長期国債の買い入れ
詳細は 2016/9/27 バーナンキ氏、日銀の新政策は「ヘリコプターマネー政策に似ている」
日銀は長期金利については、0%からプラスマイナス0.1%程度の範囲で動くようにしていた。
「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」
その後、日銀は上記の原則を変更しないままで、許容変動幅の変更により長期金利の実質変更を認めてきた。「長期金利を0%にする」という方針を動かすと、出口戦略への着手だと受け取られ、政治的摩擦が生じるので、それを避けようとして許容変動幅の上限を広げていると見られた。
日銀は2018年7月の金融政策決定会合で、強力な金融緩和策の持続性を強化する措置を決定した。長期金利を「ゼロ%程度」に誘導する目標自体は維持しつつ、変動幅の拡大を容認、黒田東彦総裁は、従来の「プラスマイナス0.1%」の倍程度を念頭としていることを明らかにした。
日本銀行は2021年3月の金融政策決定会合で、ゼロ%程度に誘導する長期金利(10年物国債金利)の変動許容幅をプラスマイナス0.25%ポイント程度と決定した。
黒田総裁によると、2018年7月にそれまで上下0.1%だった変動幅を倍程度に広げるとしていたのを、数値で示してはっきりさせたのだという。プラスマイナス0.25%は0.1%の倍程度であり、方針を変えたわけではないとの説明である。
各国が大幅利上げを行うなか、日本でも金利上昇の圧力が高まり、長期金利は0.25%を超えて上昇するようになった。日銀は利回りを0.25%に指定して国債を無制限に買い入れる指値オペを連日実施し、金利を抑え込んできた。
その結果、円安が進み、輸入品価格が急上昇、物価を押し上げた。
今回の金融政策決定会合で、従来0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大する。12月20日から適用する。長期金利は足元で変動幅の上限近くで推移しており、事実上の利上げとなる。
発表を受け、12月20日の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが急上昇(価格は急落)し、一時0.460%と2015年7月以来の高水準を付けた。20日午前は0.25%で取引を終えていた。
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